昨日、レイモンド.カーヴァーの「ささやかだけれど、
役に立つもの」を引き合いに出したのだが、何故そう
なったのか。
それは、タイトルが印象的だったから。
他の作品でも、「夜になると鮭は」「僕が電話をかけ
ている場所」など、ちょっとうん?となるようなタイ
トルの小説が多いのだ。
内容は、完全に忘却のかなた(古い表現だ、我ながら)
なのだが、タイトルだけは強く残っているのだ。
今から20年近く前、周りにカーヴァー好きの小説家
志望の男がいた。
当時、こちらは名前さえ知らず、カーヴァーカーヴァー
ってうるさいなと思いつつ、やや気にはなっていた。
そこまで言うなら、ちょっと読んでみようかな、とい
う気になり、借りたのか買ったのかは忘れたが、まず
「僕が電話をかけている場所」から読んでみた。
そしてその後、いくつかを。
当時は、村上春樹が一気に人気化した頃で、確か彼が
強く推してたのがカーヴァーだったような気がする。
実際、翻訳も手がけていたし、村上春樹の大ブームと
歩調を合わせるかのように、レイモンド.カーヴァーの
プチブームがあったのではないか。
で、読んでみての感想なのだが、その辺は本当はっき
りしてない。
そこそこ面白いと思ったことは間違いないのだが、
それっきりなので、それ以上ではなかったのだろう。
そして、その流れで、村上春樹の「ダンス.ダンス.ダ
ンス」なんてものまでも読んでしまった。
これも、その小説家志望が好きな作家だったのだ。
というか、彼も村上春樹経由レイモンド.カーヴァー
だったのだと思う、今から見ると。
結局、個人的には、唯一の村上春樹の小説体験となっ
た。
村上春樹に関しては、ある世代以上の人間には受ける
だろうなという印象を持った。
つまり、ビートルズ世代に。
適度な懐かしさとともに、青春時代の大事なものを取
り戻す勇気を与えてくれる(書いてて恥ずかしくなる)
小説、とかなんとか言えるかもしれない。
どちらにしろ、自分のテイストではありませんでした。