いよいよ、真打のマルタンヤンマのヤゴが定位(羽化直前になると羽化棒の下で動かなくなる)し始めた。羽化も秒読み態勢に入ったようだ。
この前買ったDVD、アルドリッチ「飛べフェニックス」(1965年)を観る。この映画、タイトルは何度も耳にしてきたがちゃんと観たことがなかった。アルドリッチと結びついてなかったというのもあるし、そもそもアルドリッチに興味を持ち始めたのがここ数年のことなのでこれも致し方ない。テレビでは何度も放映しているので、ひょっとしたら以前観ているかもしれない。ただそれらは、142分という超尺なので相当カットされているはずだ。今回観て思ったのは、カットしたら良さも半減だろうということであった。
砂漠に不時着した飛行機の乗客乗組員が、どうにか飛行機を再生して飛ばすまでの、所謂サバイバル物語である。その後いろんなサバイバル映画が作られた(と言ったが具体的に全く思い出せない)きっかけとなった映画ではないかと思ったが、同時にその後に続く映画でこれを越えたものはないのではないかとも思った。お約束の、仲間内のいさかい葛藤などを盛り込み、この長尺映画をどう処理するのかと思う所だが、ここがアルドリッチの力量であるが、だれることなくぐいぐいと引っ張ってくれる。ただ、今のハリウッド馬鹿映画に慣れた目からすると、派手な仕掛けは一切ないし間違いなく退屈の一言で済まされそうだ。
生き残った人間のそれぞれの人生を、それとなく描くその描写力は流石であるし、最後の飛んで脱出するときの感動場面を、大仰な音楽もなく割にあっさり処理したその終わり方も、今の映画に慣れた目からするとあまりに呆気ないと思われるが、これがアルドリッチの世界である。ハーディー.クリューガー(懐かしい)も良いし、多分アルドリッチのお気に入り役者、アーネスト.ボーグナインも良い味出しているし、それそれぞれの役者も適材適所。娯楽映画としても一級であると思うが、最近その娯楽性という事に関しては今一分からなくなってきてるので、この点についてはちょっと自信ない。