最近の話題と言えば、トンボか無料映画についてがもっぱらだが、しつこく今日も無料映画。兎に角観るペースがぐっと上がったので、その何本かをまとめて。またまた日本映画だ。この理由については以前にも触れたが、借りてまでして観ないが無料ならば、ということである。
良かった順に並べると、「ドッペルゲンガー」>「のんちゃんのり弁」>「キャタピラー」>「しんぼる」である。「のんちゃんのり弁」からは観ても損はないという評価で、実際、この左の二本は借りたいと思っていたもので、黒沢清「ドッペルゲンガー」についてはレンタル屋になかったから観たくても観られなかった映画である。
「しんんぼる」は松本人志の相当評判の悪かった作品(今更とも思うが)。最近最新作が公開されたが、それもいまいち評判は良くない。まず、いい加減「天才」という冠ははずしたほうがいいと思う。笑いのセンスがあることは事実だが、決して天才というほどのものではない。その場の空気をつかみ即興で反応するのが面白いだけで(周りの反応もその要素)、作りこんだものは全く面白くないのだ(ある人には面白いのか?)。それを特に感じたのは今流れているCM(殺虫剤だと思ったが)。そして今回改めて「しんぼる」を観て確信した。構成は、シンボルだらけの密室に閉じ込められた男の世界と、メキシコのプロレスラーの家族の二つの話が同時に進行するという形式をとっている。メキシコのほうは、ノーカントリーのような出だしで、普通に映画している。この対比を新しい映画と本人は捉えているのかどうか。その密室の方で繰り広げられるのが脱出一人コントなのだが、これがどうにも面白くないのだ。ジャック.タチのようなとぼけた味があるわけでもなく、キートンのようなアクションがあるわけでもなく、演技はわざとらしく(本人)考えられたギャグも予想通りの範囲で、逆によくも無駄に撮ったものだと感心する。オチには、神になった男の話、のようなちょっと尤もらしいものを用意しているが、何ともセンスのなさが痛々しくさえあった。
「キャタピラー」。話題作だと思うが、この手の映画はテーマがはっきりしているのでそれに沿って観るのが一応正しい姿勢と言える、のか?反戦は根底にあるのだろう。そして一番描きたいのは人間の尊厳ということになるのか。その点では、どちらも中途半端。芋虫の生命力を力ずくで表現すればもっと面白くなったのではと思ったが、全体では散漫な印象しか受けなかった。
「のんちゃんのり弁」。バツイチ、子持ち30女の奮闘記。ホームドラマ的世界で安心して観ていられる。適度に嘘っぽく適度に本当っぽくいいバランスである。テンポも良く、同じような題材の「ノン子36歳 家事手伝い」(こちらの方がむしろ嘘っぽい)より、変に格好つけず(演出面で)軽快な分はるかに面白い。「小西真奈美」対「坂井真紀」は「小西真奈美」の勝ち。
そして「ドッペルゲンガー」。後半30分は殆どホラー。終わり方はちょっと不満だった。自分の分身「ドッペルゲンガー」( 自身の抑圧された部分を顕在化した人格)に苦しむ男の物語で、演出は洗練されている。いい映画だと思うが、あまり評判にはならなかった。ホラー映画としては分かりやすさが不足しているし、その洗練された演出が逆に受けない原因になっているのだと思う。ところでこの映画に出ているユースケサンタマリアは、役者としても良いと思うし、演出も松本人志よりはるかにセンスあると思うのだが、その割にあまり認められてないのは何故なのか。