嘗て、短期間にこれほど日本映画を観たことはなかった。今回は「紀子の食卓」「十三人の刺客」「ノルウェイの森」の三本。それぞれ園子温、三池崇史、トラン.アン.ユンという監督の話題作といってもよい作品だ。園子温は最新作の「冷たい熱帯魚」でも話題を提供し、その前の作品である「愛のむきだし」はかなり評価されていた。
これで思い出すのは、普段殆ど映画を観ないT君の話。突然「満島ひかる」って知ってますか?と聞くので、良く知ってるよと答えた。こちらの意外な返答に、何故?という顔をしていたので、その理由を説明した。今のように知名度が上がる前から知ってるのだが、それはNHKの朝ドラに出てたときに注目していたからだ。「榮倉奈々」主演の下町が舞台の話で、タイトルは忘れたが、主人公のダンスの仲間として出演していて、飽くまでも外見雰囲気なのだが、それが印象的で覚えていたのだった。その時、名前もインプットしていた。そのいきさつをT君に説明すると、T君はしきりに感心していた。で、何故T君が「愛のむきだし」なんていう映画を観たのかと聞くと、その「満島ひかる」に興味があったからだという返事であった。まあ、そんなところであろうとは思っていた。
T君は、盛んに「愛のむきだし」は面白いですねえ、と言う。こちらも面白いと思ってるという前提で言ってるのだが、実は私は、世の中の評判とは違い全く面白いとは思ってなかったのだ。そもそもこの監督の作品、どれも面白いと思ったことがない。で、そのことをT君に言うと、当然のことながら残念そうな顔をしていた。ということで今回の「紀子の食卓」も結論はそういうことだった。長い前振りではあったが、最後はあっさり。
この三本の中で思ったより良かったのは「十三人の刺客」。娯楽作品として十分に楽しめる。しょぼさを感じさせないだけでも日本映画としては特筆もの。ただ、稲垣吾郎の殿様は迫力(狂気)不足。
そして何とも言いようがないのが「ノルウェイの森」。映画としては、全く評価できない。何故今更こんな映画を。70年代の学生って(設定は69年)、こんなにさらっとしてたか?もっとむさ苦しいのが多かったぞ、と思うのは当時を知ってる人間の感想だが、この何となく格好つけた世界は村上春樹の世界と共通するものだろうか。原作は読んでないので比較できないが(村上作品で読んだのはダンス.ダンス.ダンスのみ)、この嘘っぽさは違和感としてずっと感じた。別に嘘っぽいのが全て悪いわけでは勿論ないが、寓意性を感じさせる映画でもないので(そう意図してるところもあると言えばありそうだが)、この手の映画ではそれはマイナスであると思う。かと言って「ヴァンダの部屋」のようになるとその切実感が重過ぎるし、要するにこの題材が好きではないということだ。後、「菊池凜子」はどう見ても20歳には見えない。それと「水原希子」のような学生が当時いたら、それこそ美少女で大評判。間違っても早稲田(設定はそれっぽい)にはいないだろう。同じような学生が主役の映画であれば、断然「カミユなんて知らない」の方を支持する。