紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

友人が書いた本「チェリーがいた夏」

2017-03-11 17:36:25 | 13・本・映画・演劇・音楽など
道をあるいていると、向こうから、大きな犬に引っ張られながら、ほっそりした体型の女性がやってくる。
だけど、犬が目に入ったとたん、あまりに存在感が大きいので、私の目はそのワンコだけに吸い寄せられてしまう。
そして、すれ違うときに、、
「三輪さん。」と名前を呼ばれて、ようやく気づくのだ。
「あ~、山崎さん。」
ワンコのかげにかくれて、後ろから引っ張られてきたのは、あなたなのね。
それを見るたびに、ワンコの散歩もすごい体力がいりそう、と思っていた。

2000年、娘さんのS子さんがどうしても飼いたいといって、飼うことになったがチェリー。
S子さんは10年間も犬を飼いたいと言い続け、とうとう中学生のときに飼うことしたのだそうだ。

この本は、チェリーが山崎家で飼われ始めてから、最期を迎えるまでの記録である。
それは、山崎家の歩みと同時に、その後、北海道大学の獣医学部に進むことになったS子さんの生長の物語でもある。




物語は、著者マサさんの、投稿原稿をはさみこみながら、続いていく。
マサさんの投稿は、読売新聞の「ぷらざ」や、朝日新聞の「声」欄、毎日新聞「おんなの気持ち」によく掲載される。
その文章は肩肘はっていなくて、ほんとうにすっと心に入ってくる。
あの短い文字数の中で、さらっとその時の状況や自分の気持ちを書くのは、とても難しいのに、よく書けているといつも思う。

けなげで、愛らしいチェリーは、失明したり、つぎつぎに病魔におそわれる。
チェリーはそれを淡々と受け止め、獣医になって、もどってきたた娘さんやマサさんから看病をされ、みんなに愛され、大事に思われて逝った。
ほんとうに幸せだったね、と天国にいるチェリーにいいたい。