経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

政府がデフォルト? / アメリカ (上)

2023-05-16 07:51:00 | アメリカ
◇ 6月には政府活動が停止する危険性 = 企業でも個人でも、手元におカネがなくなる。すぐには調達できる見込みもないと、どうなるか。従業員の給料が支払えなくなったり、買ったものの代金が払えない。借金の返済も出来なくなる。こんな状態をデフォルト(債務不履行)と言う。いまアメリカ政府が、このデフォルト状態に陥ろうとしている。いったい、どうしてなのだろうか。

アメリカでは放漫財政を抑止するため、政府に許される債務の上限額を議会が決めることになっている。現行の上限額は31兆4000億ドル(約4200兆円)だが、バイデン政府はことし1月19日にそれを使い切った。その後は各種基金への拠出金などを停止するなどして、なんとかやり繰りしている。だが財務省によると、6月1日以降はタネが尽きてデフォルトに陥るという。

デフォルトに陥ると、公務員の給料が払えなくなり、政府機関の活動が停止してしまう。さらに国債の償還や利払いも出来なくなるから、アメリカ国債は格下げされる。その影響はきわめて大きく、G7会議で来日中のイエレン財務長官も「デフォルトになれば、世界的な景気後退の引き金になる」と警告した。

この問題は民主党政権下で、共和党が下院を制すると発生しやすい。もともと共和党は、財政の肥大化に反対の保守的議員が多いからである。オバマ政権下の11年にも、この問題が重大化した。ただ当時はデフォルトになった直後に、与野党間で妥協が成立している。このため今回も、大事には至らないという見方も強い。しかし11年の場合と比べ、ことしは2つの点で大きな違いがあることも確かなようだ。

                          (続きは明日)

        ≪15日の日経平均 = 上げ +238.04円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

解けない 連立方程式 : FRB (下)

2023-05-10 06:56:40 | アメリカ
◇ あちら立てれば、こちらが立たず = インフレを抑えるためには、金融引き締めが必要。その副作用で景気には下押し圧力が加わるが、それは仕方がない。FRBは昨年3月からこうした考え方を貫き、金利を引き上げてきた。だが引き締めが手ぬるければインフレは抑制されないし、厳しすぎれば景気が大きく悪化してしまう。そのバランスを計るだけでも、実際の政策運営はきわめて難しい。

そこへ、こんどは金融不安が加わった。金利の上昇で企業が経営難に陥ると、地銀は資金の回収が困難になる。また保有している債券が値下がりして、大きな評価損も発生する。そんな経営内容が伝わると、預金の取り付け騒ぎが発生するわけだ。さらに健全な地銀も不良債権の拡大を警戒して、貸し出し態度を厳しくする。これが景気にとっては、大きなマイナス要因となることは言うまでもない。

この金融不安について、パウエル議長は会見で「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」と弁明した。FRBが金融不安を重視していることを再確認したわけで、市場はショックを受けたようだ。だがパウエル議長は、なぜこんな発言をわざわざしたのだろう。うがった見方によると「銀行に対する規制を緩和し危機の素地を作ったのは、トランプ前政権だよ」と、共和党に言いたかったのだという。

インフレvs景気後退の方程式に、インフレvs金融不安の方程式が加わった。さらに金融不安vs景気後退の方程式も解かねばならない。こんな連立方程式を解くことはムリなのだろう。したがってFRBは重要な経済指標が現われるたびに、慎重に政策を変更して行くしか方法がない。市場がFRBの政策を予想することも、きわめて困難になった。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +292.94円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

解けない 連立方程式 : FRB (上)

2023-05-09 07:50:07 | アメリカ
◇ 預金の取り付けもSNSで一瞬に = 女子高校生2人が電車内で、信用金庫に就職が決まったもう1人の同級生に「信金は危ないよ」と冗談を言った。あとで判明したことだが、その意味は「強盗が入ることもあるから」ということだった。ところが言われた女子高生は、家に帰って「信金は危ないのか」と家人に質問。家人は知人に聞いたことから、噂が拡散。この信用金庫には預金を下ろす人が殺到してしまった。いわゆる‟取り付け騒ぎ”、1973年に静岡県で本当に起こった事件である。

いまアメリカでは、いくつかの地方銀行がこの‟取り付け騒ぎ”に揺らいでいる。最初に経営破たんしたのは、カリフォルニア州を地盤とするシリコン・バレー銀行。それから2か月の間に、中堅の2行が預金の流出で行き詰まった。いずれも大銀行による買収などで、預金者は完全に保護された。しかしパックウエスト銀行など数行が、まだ預金の流出に苦しんでいる。

静岡県の信用金庫とアメリカの地方銀行。この2つの‟取り付け騒ぎ”には、1つの共通点と2つの相違点がある。共通点はインフレと不況の前夜。1973年は石油ショックの真っ最中、その後の景気は下降した。相違点の1つは、今回アメリカの場合はパソコンやスマホで情報が拡散し、預金が引き出されたこと。だから取り付け騒ぎ”とは言っても、店頭に行列は出来なかった。その代り預金は、音もなく一瞬のうちに消えて行った。

相違点の2つ目。静岡の信金は経営的に何の問題もなかったが、アメリカの地銀は不良資産を抱えていること。貸し出し先の企業が経営不振に陥っていたり、信用度の低い債券を保有していたりする。このためFRBが金利を上げると、資金の回収が困難になったり、含み損が増大しやすい。したがって金融引き締めを進めるFRBとしては、こうした銀行経営に及ぼす影響にも配慮せざるをえなくなった。また1つ、新たな方程式を抱え込むことになったわけである。

                       (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 下げ -208.07円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

FRBも 二刀流! (下)

2023-03-29 08:04:14 | アメリカ
◇ 景気後退の可能性が強まる = 政策金利が5%にまで上昇したことで、景気に対する抑制効果はかなり大きくなったと考えられる。さらに金融不安が解消されず、金融機関の貸し出し態度も厳しくなるに違いない。その結果、アメリカ経済が景気後退に陥る可能性は、いちだんと大きくなった。たとえばバンク・オブ・アメリカが機関投資家を対象に実施した調査では「スタグフレーションに突入する」とみる回答が88%にものぼった。

金融不安も、なかなか解消しない。FRBによると、金融機関全体の債券含み損は6200億ドル(約80兆円)に達した。また中小銀行からの預金流出額は15日までの1週間で1200億ドル(約15兆円)に及んでいる。この流出額はリーマン・ショック時の2倍というから大変だ。これらの中小銀行はFRBから多額の融資を受けて預金の支払いに応じているが、引き出された預金の多くは大銀行や金などの安全資産に移し替えられている。つまり消費や設備投資には、ほとんど回っていない。

ヨーロッパに飛び火した金融不安も、まだくすぶっている。クレディ・スイス銀行の問題はUBS銀行による買収で決着したが、総額160億スイス・フラン(約2兆3000億円)の劣後債は紙くずになってしまった。このためヨーロッパ中の銀行が発行した劣後債が売られ、平均利回りは10%近くに上昇。さらに銀行株は一斉に大幅下落した。この先6月には多くの劣後債が償還期限を迎えるため、‟6月危機”も心配さrれている。

景気後退と金融不安の同時進行。資金は一斉に安全資産へ避難し始めた。信用度の高い債券や金、株式でも景気敏感銘柄は敬遠されハイテク株が買われる。また安全資産の1つが日本の国債。国債の価格が上昇、金利は下落した。円の需要が増えて、円相場は上昇気味となっている。世界経済はしばらくの間、混迷の海を泳がなければならない。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +41.38円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

FRBも 二刀流! (上)

2023-03-28 07:48:39 | アメリカ
◇ 利上げの一方で量的緩和 = FRBは先週22日、政策金利の0.25%引き上げを決定。これで政策金利は5.0%、15年半ぶりの高さに上昇した。金融不安よりもインフレ抑制を優先する姿勢を鮮明にしたことになる。声明文では前回の「継続的な引き上げが適切」という一文が削除されたことから株価は上昇したが、あとの記者会見でパウエル議長が「年内の利下げはない」と言明したため、結局は530ドルの大幅な値下がりに終わった。

ところが23-24日、株価は反発した。FRBが23年末の見通しで「政策金利は5.1%程度」という数値を維持したことが改めて評価された。これなら年内の利上げはあと1回、引き締めの終了は近いと想定できるからだ。さらに市場は、FRBが金融機関に対して実施する貸し出しについても注目した。この貸し出しワクは従来からのものと、設立されたばかりの緊急融資ワクの2つがある。

緊急融資ワクは金融不安に対処するため、シリコン・バレー銀行が破たんした直後に新設。経営が苦しくなった金融機関に破格の条件で融資する制度。FRBによると、融資残高は22日時点で536億ドル(約7兆円)にのぼった。また従来からの貸し出しワクでは、1102億ドル(約14兆3000億円)が融資されている。

もちろん、これらの融資は金融機関の倒産を防ぐためのものであって、景気対策とは関係がない。しかしFRBから資金が市中の金融機関に流れるという点では、量的金融緩和と全く変わらない。FRBは昨年6月から市場で国債などを売却する量的引き締めを実施してきたが、その半分に近い資金を放出した形。いわばFRBは、利上げと量的緩和の二刀流を使い始めたことになる。ここから、どんな影響が生じるのだろうか。

                      (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 上げ +91.62円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>