経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-12-30 08:26:01 | SF
第7章 終 局

≪65≫ かぐや姫 = その年の秋。夜半の満月を見上げた人は、びっくり仰天した。明るい月面から地上に一条の光が射し込み、その光に沿って和服姿の女性がゆっくりと登って行く。奇妙なことに女性は大きな黒い荷物を両手で抱えており、3-4分もすると見えなくなってしまった。

この天体ショーはSNSですぐに拡散。あくる日の新聞、テレビでも大きく報道された。見出しは「天に昇る美女」「かぐや姫の現代版」・・・。だが少なからぬ人がカメラやスマホで写真を撮ったのに、再生してみると女性の姿は消えて一条の光だけが映っていた。

ぼくが死んだあと、マーヤを地球で暮らさせるわけにはいかない。だから2人でダーストン国へ戻ることを、すぐに決断した。こうして、ぼくたちはいま、UFOのなかで宇宙船の出発準備をしている。

――マーヤ、ぼくはまた宇宙船のなかで4年以上も眠らなければならない。起きたとき、ダーストン国はどんなになっているのだろうか。
「私は起きていますから、安心して眠ってください。ダーストン国は何も変わっていないと思いますよ。でもブルトン院長もメンデール教授もショッピー館長も、知っている人たちは、もうみんな亡くなってしまいました」

――そう、ぼくたちは地球に40年もいたんだ。ダーストン星の時間で言えば80年になるはずだ。あの当時20歳以上の人は、もういない。でも彼らは100歳の命を全うしたと考えて、満足して死んだに違いない。寿命なんて、その人の考え方しだいで長くも短くもなるんだね。

宇宙船が発進し、ぼくが眠りについたころ、地上ではJRリニアの関係者と警察が、山梨県のロボット生産工場を捜索しようとしていた。近所の住民から「工場は操業を止め、誰もいなくなったようだ」という通報があったためである。

警察官らが工場に入ってみると、機械などは跡形もなくなり、広い床の真ん中に小さな机がポツンと置かれていた。机の上には緑色と黄色のパソコンが2台。

まず黄色いパソコンの蓋を開けると、画面にメッセージが。
≪ダーストニウムの製造方法が詳しく書いてあります。海底から原料を取り出すまで5年はかかるでしょう。でも、その後は“神の粉”を自給できるようになるでしょう。頑張ってください。二階堂摩耶≫

次に緑色のパソコンを開けると。
≪ぼくの“私の履歴書”です。ただし2300年1月1日までは絶対に開けません。開いたときに「経済のない世界」が実現しているか、興味津々です。二階堂純一≫   

                                    = 完 =

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