経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

金利はどこまで上がるのか (下)

2017-07-12 08:37:24 | 金融
◇ 追い詰められる日本 = 景気の順調な回復を背景に、アメリカに次いでヨーロッパ諸国も金融政策の姿勢を引き締めの方向に転換しようとしている。そうしたなかで、日本だけはまだゼロ金利政策にしがみついている。先週も長期金利の上昇を抑えるため、日銀は市場からの国債買い入れ額を増やすと発表した。それだけ景気の回復が遅れているということにもなる。

アメリカやヨーロッパ諸国の金利は、どこまで上昇するのだろうか。その答えは、景気の回復が続く限りということになる。たとえばアメリカ経済も個人消費の伸び悩みで、回復が途切れる心配もないではない。そんなところへ金利の上昇が加わると、景気が変調する危険性も否定はできない。そうならずに景気の回復が継続すれば、政策金利は少しずつ引き上げられるだろう。

困るのは日本である。仮に欧米の景気が変調すれば、日本経済にはマイナス圧力が加わる。だが日銀はすでに目いっぱいの緩和政策を実行しているから、これ以上の不況対策は繰り出せない。また仮に欧米の金利がじわじわと上昇すれば、金利差の拡大で円相場は下落する。するとトランプ大統領だけでなく、各国から日銀のゼロ金利政策に批判が出ることになりかねない。

日銀は先週、長期金利の上昇を抑え込むため、市場からの国債買い入れを増額すると発表した。これによって欧米の国債価格が下落するなかで、日本の国債だけは強制的に高水準の価格を維持することになる。こうした状況が明確になるにつれて、外国人投資家はどう動くのだろうか。日銀はいくつもの難問に直面することになる。

      ≪11日の日経平均 = 上げ +114.50円≫

      ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ


金利はどこまで上がるのか (上)

2017-07-11 07:36:19 | 金融
◇ アメリカは9月に5回目の利上げへ = 世界各国の金利が急速に上がり始めた。アメリカの長期金利は先週、一時2.39%まで急騰。イギリスやドイツなどヨーロッパ諸国の金利も、軒並み上昇している。このため金利が上昇した各国の通貨が買われ、株式市場にも大きな影響を与えた。日本でも長期金利に上昇圧力が加わり、日銀は上昇を抑えるために国債の買い入れ増額を余儀なくされている。

金利上昇のきっかけは、ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁を皮切りに、各国の中央銀行総裁が相次いで「金融緩和政策の終了」に言及したこと。すでにアメリカは一昨年末から金融政策のかじ取りを引き締めに転じているが、これを追ってヨーロッパ諸国も近く「緩和政策の停止⇒引き締め政策へ」の可能性が、一気に高まった。

アメリカではこのところ、景気の先行きに対する警戒感が強まっていた。景気が下降すれば、FRBも政策金利の引き上げを強行することは難しくなる。しかし先週末に発表された6月の雇用統計では、雇用者の増加数が予想を上回る22万2000人に達した。このためFRBは、予定通り9月に5回目の利上げを実施する公算が高まっている。

仮に9月にアメリカが利上げすれば、ヨーロッパ諸国の緩和政策停止も早まるに違いない。世界の金利水準は、今後も上昇を続けるという見方が広まる結果となった。欧米諸国の金利上昇は、それだけ景気の回復が順調に進んでいることを物語っている。この点は歓迎すべき事実だが、金利の上昇が景気の回復にとって重石となることも確かである。

                               (続きは明日)

      ≪10日の日経平均 = 上げ +151.89円≫

      ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2017-07-10 07:30:10 | 株価
◇ 金利上昇に戸惑う株式市場 = ヨーロッパの中央銀行総裁が相次いで「緩和政策の終結」を打ち出したことから、先進諸国の長期金利が上昇し始めた。金利が上がれば、投機資金の一部は株式市場から債券市場に流れ出す。また景気の先行きに重石となるかもしれない。ニューヨーク株式市場は先週、こうした心配に悩まされ続けた。それでもダウ平均は週間65ドルの値上がり。

欧米の流れに押されて、東京市場でも長期金利が急上昇した。先週6日から7日にかけて、一時は10年もの国債の流通利回りが0.1%を超えている。慌てた日銀は市場からの国債買い入れ額を増やすなどして、懸命に金利の上昇を抑え込んでいる。先進国のなかで日本だけがゼロ金利にこだわっている姿が歴然となった。結果として円相場は1円以上の円安となったが、株価は反応せず。日経平均は週間104円の下落で、2万円を割り込んでいる。

金曜日に発表されたアメリカの6月の雇用統計では、雇用者数が22万2000人も増加した。この予想を上回る増加数で、景気の先行き不安はかなり薄まったようだ。しかし半面、FRBが9月に5回目の利上げを実施する可能性は高まったと言える。このため世界の株式市場では、今週も金利上昇が主なテーマとなるだろう。

今週は10日に、5月の国際収支と機械受注、6月の景気ウォッチャー調査。12日に、6月の企業物価と5月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、6月の生産者物価。14日に、6月の消費者物価、小売り売上高、工業生産、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、6月の消費者物価と生産者物価。13日に、6月の貿易統計を発表する。

      ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


サタデー自習室 -- 水の 経済学 ⑭

2017-07-08 08:04:23 | 
◇ 日本企業はまだ土俵の外 = 経済産業省が作成したデータを眺めていると、目を疑うような数字に出くわす。13年度の「海外市場における日本企業の実績」である。水ビジネスの海外市場規模は合計64兆1735億円、そのうち日本企業の実績は2463億円のみ。全体に占める比率は、なんと0.4%にとどまっている。

その内訳をみると、日本企業の占有率は上水関係で0.1%。産業用水で0.6%、下水はゼロ。そして海水の淡水化では、ようやく4.6%の比率となっている。その淡水化の分野でも、世界のビジネス規模が4614億円なのに対して、日本企業の実績は213億円しかない。このように実情は「びっくり、残念」と言うしかない。

日本の水道水は、外国人旅行者が驚くほど衛生的で美味しい。日本の企業は、海水や汚水を浄化する逆浸透膜で世界最高の製造技術を持っている。それなのに、なぜこんな残念な結果になっているのだろうか。答えをひとことで言えば、日本は「水ビジネスの広大な広がりに気付くのが遅れた」からである。

たとえば新興国が都市の上水道を整備する場合、設計から建設工事、さらに完成後の運営・管理から料金の徴収システムまで一括して発注することが多い。だから事業規模はきわめて大きくなる。だが日本には、一括受注する体制がなかった。こうした水ビジネスの大きさのなかでは、逆浸透膜の売り上げなどは微々たるもの。これから巻き返そうとしているが、まだ土俵にも上がれないのが実状である。

                                 (続きは来週サタデー)

      ≪7日の日経平均 = 下げ ー64.97円≫

      【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  


経営者は“慎重”がお好き : 日銀短観

2017-07-07 06:33:09 | 景気
◇ 先行きはすべて悪化の見通し = 少し視点をずらすと、経済統計からは意外な情報も読み取れる。日銀が3日発表した6月の企業短期経済観測調査。大企業・製造業の業況判断指数はプラス17で、3期連続して改善した。輸出や消費の改善が、景況感の好転につながったとみられている。ただ3か月後の業況は悪化を見込む経営者が多かった。大企業・製造業の見通しもプラス15に縮小する。

今回の調査では、非製造業や中小企業など、あらゆる部門で景況感が好転している。ところが3か月先の見通しになると、すべての部門が「悪化」と答えている。そこで3か月前の3月調査をみると、このときも3か月先の見通しはすべての分野が悪化を予想していた。しかし6月調査では、すべての分野で業況判断は好転している。

では6か月前の昨年12月調査では、どうだったろう。このときも全部門が先行きは悪化と予想していた。しかし3か月後の景況感は好転している。要するに過去9か月間にわたって、企業は「先行き悪化」と予想したが、実際は好転しているのだ。この驚くべき結果を、どう考えたらいいのだろうか。

確かに将来を正しく予想することは難しい。だから、いつも慎重に予想しておく方が安全だ。悪化を予想しておいて好転すれば、経営者に対する評価は上がるだろう。理由はいろいろ考えられるが、欧米の経営者にはみられない日本的な風潮であることも確か。こういう経営者の慎重主義が、経済全体にマイナスの影響を与えていることも否定はできない。

      ≪6日の日経平均 = 下げ -87.57円≫

      ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ


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