経済なんでも研究会

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世界24位に後退 : 日本の‟豊かさ”

2024-03-23 07:42:53 | なし
◇ 香港・シンガポール・韓国に及ばず = UNDP(国連開発計画機関)が、各国の‟豊かさ”を測る24年度版「人間開発指数」の世界ランキングを発表した。それによると、日本は2年前よりも2つ順位を下げて24位となった。1位はスイス、次いでノルウェー、アイスランド、香港、デンマークが続いている。アジアでは香港のほかシンガポールが9位、韓国が19位となっており、日本はアジアで4番目にランク付けされた。

この「人間開発指数」は物価や賃金、年金や税金、教育格差や所得格差など多数の項目について指数化。193か国・地域をランク付けする。また、この報告書でUNDPは「先進国の指数はコロナ前の水準を取り戻したが、最貧国の半数はまだコロナ前の水準に及ばない。世界的に経済活動が一極集中し、不平等に拍車がかかっている」と警告した。

‟豊かさ”というのは人間の感覚だから、指数化して比べることは困難だと言ってしまえばそれまでだ。しかし1人当たりGDPなどをみても、日本の存在感が低下していることは否定できない。やはり、この30年間、低成長を続けたことが大きかった。大リーグの開幕戦が日本でなく、韓国で行われたことの意味を少しは考えてみる必要があるのではないか。

いま日本はマイナス金利からの脱却を機に、新しい国造りを始めようとしている。だが政府も日銀も、過去30年の総括をしていない。どうして低成長が続いたのか。どうして賃金が上がらなかったのか。どうして円がこんなに下落したのか。どの政策が間違っていたのか。こういう検証をきちんとしないと、また間違いを繰り返すことになりかねない。国連が発表したランキングを、あまり軽視しない方がいい。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +72.77円≫

        【今週の日経平均予想 =1勝3敗】     

原油が80ドル台に上昇 (下)

2024-03-22 07:22:33 | 原油
◇ 90ドル台が続けば影響が大きい = 北半球はこれから行楽シーズン入り、ガソリンの消費が増える。このため専門家の間では「原油の国際価格は90ドル台に乗せるかもしれない」という見方が強い。仮に90ドル台になると、直近の安値60ドル台に比べて5割高。その日本経済に与える影響は、決して無視できない。電気やガス代、それにガソリン価格が急騰。物価の上昇は加速する。

日銀はマイナス金利政策を解除、17年ぶりの利上げに踏み切った。それでも当面は緩和政策を維持すると表明したため、円安・ドル高が進行。株価も上昇基調を続けている。だが物価が高騰すれば、そんなことを言ってはいられない。日銀は意図に反して、金利を引き上げざるをえなくなる。外国為替市場では円高・ドル安、債券市場では金利が上昇する。株価にとってはマイナス材料だ。

財務省がきのう発表した2月の貿易統計をみると、輸入額が輸出額を上回ったため、貿易収支は3800億円の赤字だった。これは貿易が、景気に対してはマイナス要因になっていることを示している。輸入額が多かった理由の一つは、相変わらず燃料の輸入額が大きいこと。鉱物性燃料の輸入額は2兆2000億円に達している。輸入総額の約4分の1だ。

この輸入代金は最終的に、値上げを受け入れるという形で個人や企業が負担する。それだけ購買力が産油国に移転してしまうわけだ。景気にとっては、大きなマイナス要因になる。なかで原油・粗油の輸入額は約9000億円。もし価格が5割近くも上昇すれば、金額はさらに増大する。このように原油の国際価格が高値で推移すれば、日本経済はまた重たい荷物を背負うことになる。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +812.06円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

原油が80ドル台に上昇 (上)

2024-03-21 07:26:58 | 原油
◇ OPECプラスの自己減産延長で = 原油の国際価格が上昇してきた。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、3月に入ってから1バレル=80ドル台を維持している。昨年秋からはずっと60-70ドル台で推移していたが、ここへきて値を上げた。直接のきっかけは、OPEC(石油輸出国機構)プラスと呼ばれる産油国連合が自主減産を6月末まで延長したこと。この措置で、世界の原油見通しが供給過剰から不足へと変わったためである。

サウジアラビアを盟主とするOPECとロシアなどの産油国は、原油価格の値下がりを防ぐため協調減産を続けてきた。現在は3月末までを期限に、合計で日量450万バレルを減産中。この減産計画を6月末まで延長することになった。IEA(国際エネルギー機関)の試算によると、これによって世界の原油見通しは日量162万バレルの余剰から48万バレルの不足へと変化する。

ただOPECプラスの結束力は、明らかに低下した。カタール、エクアドルに続いて、アンゴラも減産に反対して脱退したからである。このためOPECプラスは従来の協調減産ではなく、各国の自主減産という形で減産目標を達成することになった。さらに最近はアメリカとカナダが、日量100万バレルと50万バレルを増産している。紅海を通じる原油積み出しが制限されているにもかかわらず、原油の国際価格が大きく上昇しないのはそのためだ。

原油価格はアメリカや中国の景気動向、世界の気象状況などにも大きな影響を受ける。したがって将来の価格を予測することは、きわめて難しい。しかし専門家は現状から判断する限り、90ドル以上に跳ね上がる可能性は小さいとみている。ただ原油価格の高騰は、天然ガスや石炭の価格にも影響を及ぼす。輸入燃料に大きく依存する日本にとっては、1バレル=10ドルの値上がりでも影響はきわめて大きい。

                    (続きは明日)
       
         ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

呑み込みにくい 日銀の理屈

2024-03-19 07:35:24 | 日銀
◇ 「インフレなら利上げ」ではダメなのか? = 日銀はきょう19日に開く政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定する。同時にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を停止、またETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買い入れも終了する。これまで17年も続けてきた金融の超緩和政策を、引き締めの方向へ転換するわけだ。だが、これで日銀が何を目指しているのか。説明がどうもすっきりとは呑み込めない。

マイナス金利の解除を決定した理由として、日銀は今春闘での大幅な賃上げを挙げている。植田総裁も記者会見で、この点を強調する見込みだ。企業は賃上げの原資を確保するため、製品やサービス料金の値上げに踏み切る。すると物価が上がって、日銀が目標として掲げる2%の物価上昇が達成される。だから金融引き締めは、もう不要になったという理屈である。

だが物価は、いろいろな原因の組み合わせで変動する。たとえば戦争によるエネルギーや資源の高騰、あるいは異常気象による食料不足などなど。こうした要因が加われば、物価は2%を大きく超えて上昇するだろう。ところが日銀は「2%程度の物価上昇が長期にわたって続く」と考えているようだ。そんな可能性はゼロに近いだろう。

ウクライナ戦争の勃発によって、エネルギーや資源・食料の国際価格が急騰。日本も物価の高騰に見舞われた。だが日銀は実体経済の需要が不足している状態を重視し、緩和政策を継続した。つまり不況の場合は、インフレになっても対応しない前例を作ったわけである。通貨価値の維持、物価の安定を最大の使命とする中央銀行が、これでいいのか。もっと解りやすく「インフレだから利上げする」と言えないのだろうか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +263.16円≫

        

今週のポイント

2024-03-18 07:44:05 | 株価
◇ マイナス金利解除は織り込んだが・・・ = ダウ平均は先週わずか8ドルの値下がり。週の前半は先々週に下げた反動もあって反発。特に火曜日は注目のエヌビディアが7.2%も上昇、SP500が最高値を更新した。しかし後半はだらだらと下げている。2月の消費者物価が予想を上回って上昇、利下げが遠のいたという推測が強まって金利が上昇。株式市場は、これを嫌気した。ただ終り値は、3月23日に付けた最高値を400ドルしか下回っていない。

日経平均は先週981円の大幅な値下がり。週初から3万9000円を割り込んだ。日銀が19日の政策決定会合で、マイナス金利の解除にやっと踏み切ることがほぼ確定。円高が進んだために、売り注文が膨らんだ。これで2週連続の下げ。終り値は3月4日の最高値に比べると、1400円ほどの下落。ニューヨークよりも、リスク回避の動きが強まっている。

FRBは19-20日に政策決定会合を開く。しかし政策に変更はない見込み。したがって市場は、あまり気にしていない。一方、日銀はマイナス金利を解除する。市場はすでに織り込んでいるから、大きな影響はないだろう。ただし日銀の今後の利上げ見通しに関心が集まると、債券・為替・株式市場に影響が現われる可能性は否定できない。

今週は18日に、1月の機械受注。19日に、3月の訪日外国人客数。21日に、2月の貿易統計。22日に、2月の消費者物価。アメリカでは18日に、3月のNAHB住宅市場指数。19日に、2月の住宅着工戸数。21日に、2月の中古住宅販売。また中国が18日に、2月の小売り売上高、鉱工業生産、固定資産投資額を発表する。なお19日に植田総裁、20日にパウエル議長が会見する予定。

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫    

Zenback

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