ジャノメギク
〈ウェブ画像〉より
赤線廃止に興味を持って
ぼくはその街に足を運んだ
手入れの行き届かない舗装道路の裂け目を
濃緑の雑草がさらに押し広げていた
昼間だというのに
格子戸の奥には闇が澱んでいた
人の姿が途絶えて二年と聞いたが
框に立てかけられた蛇の目傘が人待ちしていた
女たちの華やかな時間がよみがえる
チクタクと時を刻みはじめた妖しい記憶
置屋と客の了解に差し掛ける唐傘の油紙が
紅灯に染まっててらてらと疼きだす
貧農の村から売られてきた娘たちも
過酷な労働を逃れてきた女たちも
この街の息を止めたことで救われたのだろうか
故郷の川岸を前に呆然と立ち竦んだりしなかったか
雨風にさらされた戸袋に
同じ色のヤモリがへばりついていた
起き伏しの宿には芸者上がりのやり手ババアがいたが
黒く木目の浮いた杉板は廃業の形見のようだ
人の世の営みはどこか危うい
女たちの喜怒哀楽もなぜか不確か
あいまい宿にうごめく欲望の寝姿は
人さまざまに跪く善悪の彼岸
赤線が消えて青と白の火灯る
古風なジャノメギクは枯れても
なお生き永らえる店頭の一輪挿し
歓楽街の街角でぶつかる女たちの流し目が二つ
〈2018/04/13より再掲〉
古風なジャノメギクは枯れても
なお生き永らえる店頭の一輪挿し
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そんなころ、名古屋に出張で中村地区に一度だけ
戯れたことがありました!今は想い出です!
思い出の中村地区、いいですね。
一度だけの破目外し、胸の中にそっと灯しておきましょうよ。
ありがとうございました。