キツネアザミ
(城跡ほっつき歩記)より
下にー 下にー
花ざかりの田舎道を大名行列がとおる
毛槍をもった奴(やっこ)さんを先頭に
春の日なかをぞろぞろと進んでいく
白昼夢のような「奴のねり」に
野ネズミもイタチも道端に出てきて
ポカーンと見送る
通り過ぎた行列の幻に思わず目をこする
蝶さんもブンブン蜂さんも あれ見たか
ミミズさんも蟷螂さんも確かめたよね
たしかにここは昔の脇街道だが
陣笠人足に護られた殿様の駕籠だったとは・・・・
まさか いたずら狐の仕業じゃあるまいね
右に左にと打ち振る毛槍が妖しくないか
陽光をあびたアザミのような紫いろが
どうにも胡散臭いじゃないか
ハコベさん仏の座さん
あれは君らの仲間じゃないかえ
狐の奴がいつの間にか
キツネアザミを摘んで毛槍にしたんじゃないか
ああ 楽しいな楽しいな
道中を急ぐ必要なんてないのだと
お殿様がつぶやいたのかな
民百姓にものんびり見物させてやりたいなんて
まさかそんなと疑いなさんな
狐が仕組んでくれた白昼夢じゃないか
キツネアザミの毛槍が空に舞うのを
祭り気分で楽しもうじゃないか
ご無沙汰しております。
いつも画像をご紹介いただきありがとうございます。
大名行列の「毛槍」に見立てていただくとは、身に余る光栄、誠に畏れ多いことにございます。
日頃は草丈の伸びるこの季節、野草の中でも殆ど目立たない存在にございますれば正に天にも昇る心持ち。
蕾をつけておりますが、これでも精一杯満開の姿にございまする。
くれぐれもこれから艶やかな花びらが開くなどとは思し召さぬよう謹んで言上申しあげます。
あ、行列に遅れまする故、これにて失礼をいたします。
本格歌舞伎の華美な舞台ではなく、田舎歌舞伎の口上を聞くような微笑ましさに、思わず手を拍ってしまいました。
これからまだ花の姿が立派になるのかと思いきや、これ以上は花開くことがないとのこと、失礼ながら分を弁えた所作とお見受けいたしました。
筋違いとは存じますが、なぜか白井権八・小紫の場面が目に浮かびます。
今回も画像拝借たいへんありがたく、心より感謝申し上げるしだいです。
毛槍を先頭に「下に―下に―」なんて芝居がかっていて、ちっとも実用的な必要など感じないしつらえになっているし・・・
キツネアザミなんてエー名前のこれまたお伽噺みたいな名前の花を大名行列にすかさず重ねる詩人の遊び心にに拍手です。
日本文化には様式美などといいながらふんだんに遊びっぽい要素が散りばめられていて、しかもそれを大真面目にやる・・・そんな洒落っ気が僕は結構好きです。
つまり各藩の疲弊を狙って、必要以上の人数を要求したと伝えられています。
(知恵熱おやじ)さんが仰有るとおり、芝居がかった行列は実用的な必要とは縁遠いもの、それを江戸庶民は遊び感覚で茶化したのかもしれません。
今に伝わる「大名行列」ごっこには、江戸以来の遊び心が受け継がれているのでしょうね。
キツネアザミのおかしな花に、つい引きずられてしまいました。
ともすれば見過ごしてしまいそうな
地味な花を上手くスポットライトを当てられ
キツネアザミという名前からして
日本昔話のようで面白いです
大名行列のお殿様は
どんな思いでキツネアザミをご覧になられたのでしょうか?
江戸には行きたくないな・・・って
そんな思いがじんわり伝わってくるようです
道中キツネアザミを見たとすれば、羨ましく思ったのではないでしょうか。
まあ、いろいろなことを想像できるのも、お伽噺のような大名行列が残っているからこそ。
各地に祭りとして伝わる大名行列は、どこかデフォルメされているようで、庶民の目の確かさが感じられるのですが・・・・。
いつもコメントありがとうございます。