どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム101 『白蝶草に面影が・・・・』

2021-10-12 00:55:22 | ポエム

Gaura lindheimer 白蝶草

   (ウェブ植物図鑑)より

 

ああ 君はここにいたのか

ぼくとは小学五年生のとき別れたきりだが

きみの面影をずっと探していたんだ

五月の風が君のもとへ案内してくれたというわけさ

 

お父さんは中央省庁の偉い役人とかで

転校生の君はクライスラーで送られてきたね

後部ドアが開いて最初に赤い革靴が現れた

あの日以来ぼくの胸は高鳴ったままなんだ

 

バレー教室の発表会に招待してくれたよね

耳の奥にチャイコフスキーの音色が焼きついた

白いタイツがこんなにも白いのだとショックを受けた日

別世界が存在することを教えられた

 

白鳥の湖を演じきったあと拍手をもらっていたね

貝谷八百子さんからのメッセージも来ていたよね

たった三年間の同級生だったが

都会と田舎ではこんなに差があるのかと意識させられた

 

風のように舞い 風のように去ったきみ

上京したあと君を探したが無駄だった

お父さんは主要都市を巡っていたということで

きみもお嬢様を演じつづけるしかなかったのか

 

君はずっとここにいたんだね

人知れず緑の風と遊んでいたんだ

心を通わせる友だちも少ないなか

官舎との決別をつよく望んでいたんだ

 

赤い靴もクライスラーも本意ではなかったのか

オデットになった白タイツの君も夢だったのか

時は 成長のパラドックスをたくらんで

いまにも飛び立ちそうな白蝶草に変身させたんだね

 

(2018/03/02より再掲)

  

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2 コメント

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思い出 (ウォーク更家)
2021-10-12 20:33:18
この詩を読んで、熊本県と宮崎県の県境のド田舎で育った私は、都会から転校してきた眩しい女の子に、胸が高鳴った記憶が蘇ってきました。

田舎では想像がつかない別世界が都会にはあるのを初めて感じました。
返信する
都会からの転校生 (tadaox)
2021-10-13 00:30:23
(ウォーク更家)様、コメントありがとうございます。
同じような状況があったんですね・・・・。
昔ほど眩しくはなかったでしょうが、今でも転校生はいるはず。
今の子はどんな気持ちで迎えるのかな。
返信する

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