どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム326 『にちりんが走る』

2022-06-12 00:03:36 | ポエム

九州特別急行『日輪』画像 に対する画像結果.サイズ: 158 x 105。ソース: orangesaikonomuryo.blogspot.com 特別急行「にちりん」

 

ただいま大分から戻りました

報告した自分の声に気づいて目が覚めた

ええーッ? 俺は何処へ行ってたんだ

いったい誰に報告しているんだ・・・・

リタイアして30年も経つのに

 

ぼくの記憶はしばらく霧の中をさまよった

乳白色に霞んだ森の奥が明るみ初め

そこに暈を伴なった日輪が現れた

暈は虹色に変化し眩しさに目を細める

そうかJR九州の特急列車からの連想か

 

あの頃は妻とよく旅行したな

博多で一泊して大分へ向かった

憧れの別府温泉が目的だが他にもう一つ

藤原新也の本に出ていた鉄輪温泉街の

錆びた風景を目にしたかったのだ

 

それなのに特別急行「にちりん」ときたら

予想もしない旅人まで同乗させたもんだ

奮発した先頭車両の深々した座席の前部には

仮眠する山下達郎を守るミュージシャンたちが

神経をピリピリ尖らせていたのだ

 

隣の席の若い夫婦がいち早く気づいて

ひそひそ名前を言うので回りがざわつき始めた

ぼくらも立ち上がって覗こうとしたので

メンバーの一人が静かにしてほしいと言いに来た

すみません 公演前なのでお願いします、と

 

クリスマスとは正反対の季節に出合った

とんだハプニングが頭に残っていたのか

大分から今戻ったと言いながら目覚めるとは

とっぴな夢を見たもんだ

日輪を覆う眩暈の妖しさにしばし放心した

 

うん 長い人生を歩んでくると

誰にでもこういう思い出がひとつや二つ

頭の襞に潜ませているんだろうな

日に日に後退するリアルに反して

ひと工夫のある夢ほど楽しいものはない

 

 

 

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コンサート前の・・・ (koji)
2022-06-12 03:58:28
山下達郎というのが、超リアルでいいですね。
夢の中ではどんな突飛な話しも、もっともらしく辻褄が合っているところがすごいところだし、面白いところだと思っています。
近ごろ夢を見ていません。もったいないことです。
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夢を見ましょう (tadaox)
2022-06-12 14:11:13
(koji)さん、こんにちは。
よっぽど強く印象に残っていたんでしょうね。
何十年も経って、夢に出てくるんですから・・・・。
たしかに年と共に夢は見なくなるようですが、たまに見る夢は大事にしましょう。
いろいろ種類があるようですが、そのチャンスが少なくなるのは勿体ないことです。
返信する
JR九州 (ウォーク更家)
2022-06-15 21:34:05
大分から今戻ったと言いながら目覚めるとは、面白い夢でしたね。

JR九州の特急「にちりん」ですか、いい響きですね~、ロマンがあります。

博多で1泊して「にちりん」で大分ですか、私も博多で1泊して、のんびりと別府の鉄輪温泉へ行ってみたくなりました。
返信する
鉄輪温泉街 (tadaox)
2022-06-16 01:17:15
(ウォーク更家)様、こんばんは。
更家さんの行動力なら、すぐにでも実行できるでしょう。
別府では血の池地獄とかお決まりのコースをめぐりましたが、やはり念願の鉄輪温泉街を歩いたのが印象に残っています。
詩に書いたとおり、錆びた街の風景が心に沁みました。
大分全般に言えることですが、各所から上がる湯けむりの哀愁が、観光客の引きずってきた人生の澱と呼応して感慨深かったです。
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