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ロイヤルオペラで見た演出がすごかった。まず晩餐の場面で、テーブルの上に金髪・全裸の女が横たわっているではないでーすか。股間には葡萄がひと房乗っていて、それをジョヴァンニがつまんだりしている。すなわち下品な酒池肉林の演出なのである…。
あのねー、ジョヴァンニは色情狂ではなーい!婚約者のいるおとなしそうな女に触手をそそられる。純情そうな村娘に手を出したくなる。一見落ちそうにない女を口説くのが、モノにするのが好きなの。だから落ちたら用はない(ゴメンネ)。追いかけてきたエルヴィーラは真っ平ごめんだが、彼女が修道院に入るなんて言い出すものだから、それはまたちょっといいな、とか思ってしまうわけ。裸の女をテーブルに乗せる趣味など、断じてあるわけないでしょう。
英国人の観客のリアクションにも驚いた。オペラ歌手は歌がうまければ拍手喝采、ヘタなら容赦なくブーイングを浴びせるものだと思ってた。すかーす、父親が殺された娘を思う恋人オッターヴィオが心の苦悩と悲痛を歌うとき、おそらくは同情からだろう、観客は励ましの(?)大拍手。声は通らないし、ブーイングを構えていた俺はぶっ飛んだ。
w(゜゜)wソウクルカヨ
だが驚くのはまだ早かった。ジョヴァンニが石像の亡霊に引きずりこまれ地獄に落ちた最後の場面だ(ちなみに地獄の穴は舞台の奥だったので、視界の悪い3階席からは見えなかったのだが)。なんと・なんと・なんと!アンナ、エルヴィーラ、村の娘など、一同全員がにっこり笑い、お茶を飲んで終わるのだ~!
紅茶の国エゲレス… _|\O_
女たちは、ジョヴァンニに惚れていたんだぞ。やつが放蕩者だろうが、自分に婚約者がいようが、隣の女と争奪戦になろうとも、合意の上で、自分がジョヴァンニの女になりたいと思っていたのだ。一緒に地獄について行きたい、とまで思うかどうかはわからぬが、ジョヴァンニが死んで、そろって笑顔でお茶を飲む心境であるわけなかろうが。
演出も、拍手をする観客も違う世界のものだった。モーツァルトが情熱的なスペインの風土に育まれた伊達男ドン・ジュアンの伝説に目をつけ、因習や社会風紀と、人間の自然の欲望や現実との間に揺れ動く微妙な価値判断を(エルヴィーラは「わたしはこんな男を愛してしまったの」と、自ら心の葛藤を歌う)、華麗な旋律とユーモラスな台詞で編み上げたこの作品を、偏狭な「道徳」で切り捨ててしまう英国的演出に、激しい違和感だけが残るのであった。
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