続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『大潮』

2015-06-09 06:51:43 | 美術ノート
 額の中には「雲の散在する青空、そして格子状に例の鈴が見え隠れしている」
 それを囲む暗黒、岩石がごろごろ額の周辺を占拠している。


 中央に大きく描かれた額縁、象徴である。周囲の暗黒に比して光に満ちている。しかし、見え隠れする鈴は、言葉(噂・口実・伝説)を暗示し、光りあるうちに歩むことを阻止する障害にも見える。

 周囲の暗黒に、草木はなく岩石のみという光景は、いわば荒地に等しい。この暗い(黒い)岩石は光りある光景(額縁)を押さえつけている。

『大潮』とは、新月や満月の後に起きる現象である。
 あなたがたの新月と定めの祭りとは、わが魂の憎むもの、それはわたしの重荷となり、わたしは、それを負うのに疲れた(イザヤ書)

 この関係性を称して『大潮』と題する意図は何か。

 夜あるけば、つまずく。その人のうちに、光がないからである。新月の闇夜そして大潮。

『大潮』という作品は、闇と光が拮抗している。

 悪を行っている者はみな光を憎む。(略)しかし、真理を行っている者は光に来る。その人のおこないの、神にあってなされたということが、明らかにされるためである。(ヨハネによる福音書)

 義と不義となんの係わりがあるか。光とやみとなんの交わりがあるか。(コリント人への第二の手紙)


 闇に散在する岩石は光の時空を、あたかも攻撃している。光の時空を持つ額縁の中は、言葉の網で雲が多い。

 光に曇りが生じ、闇に暗躍する岩石。この対立を(新月の後の)『大潮』と称し、是非ではなく、あるがままの状況を提示している。

(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『城』1896。

2015-06-09 06:19:18 | カフカ覚書
「だけどもね、よく聞いてちょうだい」と、フリーダは言った。「いまでは、クラムでさえも、もうあなたの目標じゃない。わたしがいちばん気がかりなのは、そのことよ。あなたがいつもわたしをとび越して直接クラムのところへ押しかけようとなさったことは、よいことではなかったわ。いまそのクラムから遠ざかろうとしていらっしゃるらしいことは、それよりはるかにいけないことだわ。これは、さすがのお内儀さんも予想しなかったことよ。


☆「でも、よく見てちょうだい」と、フリーダ(平和)は言った。「いまではクラム(氏族)でさえもあなたの目標ではありません。おそらくわたしを不安にしている多くは、そのことです。あなたが常にわたし(平和)をとび越して、クラム(氏族)から遠ざかろうとしていることはさらに不快なことです。先祖の汚点は言葉以前(の問題)ではありません。