続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『美しい言葉』

2015-06-12 06:50:42 | 美術ノート
 バラを描いている。

 暗黙の内にバラ一輪に託した思いとは何であったのか。薔薇の特性を考えると「至上の美、香り、高貴そして棘」

『美しい言葉』と題している。この薔薇を描いた作品の中に美しい言葉が存在するというのだろうか。否、マグリットの表題は常に作品の周囲に隠蔽されている。

 作品は薔薇を描き、その上に立ち上るような薔薇の幻影ともいうべき霧消していく酷似の薔薇を重複させている。そして三日月(現実の三日月はわずかながら下に傾いている)


≪美しい言葉=薔薇≫
 薔薇は確かに清々しく香り、見る人を魅了する。つまりは、美しさの象徴である。美しさを認識させる媒体でもある。

 しかし、マグリットは考える、空や石の普遍・永続性に比しての薔薇の時間を。
 そして、
「そうだ、薔薇は永遠でないことの証明であると!」

 女が薔薇を一輪を胸に抱くとき、『永遠でないことの証明』の悲哀を暗示しているのではないか。


「はじめに言葉ありき」この美しく飾られた言葉さえも永遠ではなく、一つの幻想として霧消していく日もあるかもしれない。
 薔薇に沢山の種類があるように、言葉もそれぞれの国で自然に生まれている。


『美しい言葉』である薔薇は、永遠でないことの証明であると同時に、万人に抱かれる真理(花の美と人を刺す棘=善悪)を秘めている。

(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『冬のスケッチ』135。

2015-06-12 06:36:47 | 宮沢賢治
         ※
  棕梠の葉大きく痙攣し
  陽光横目にすぐるころ
  息子の大工は
  古スコットランドの
  貴族風して戻り来たれり


☆主な路(物事の筋道)の要は、題(テーマ)の啓(人の眼を開く・教え導く)を聯(並べてつなぐ)ことである。
 要の往(人が死ぬ)は黙っている。
 即ち、死の題(テーマ)の講(はなし)を記し続けている。
 譜(物事を系統的に書き記したもの)は、霊(死者の魂)の記である。

『城』1989。

2015-06-12 06:22:08 | カフカ覚書
「きみは、ハンスとぼくの話を正しく理解したよ。実際、そのとおりだった。だけど、いったい、きみ自身の過去の生活は、きみにとってもうきれいさっぱり消えてしまったのだろうか(むろん、あのお内儀のことはべつにしてだ。あれはそうあっさり消し去られるような女じゃない)。


☆きみは、ハンス(国)とわたしの話を正しく理解した、とKは言った、まさにその通りだったしかしながら、あなたの。全ての過去の生命は消えてしまったのだろうか。言葉は本来失われるようなものじゃない。