続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『困難な横断』

2017-05-01 07:00:48 | 美術ノート

 『困難な横断』

 困難な横断、横断しようとしている。《どこを、何に向かって?》
 装飾されたポールはわずかに傾いでおり、人の眼がついている。人の変容、擬人化されたポールは荒れ狂う海に沈没するかもしれない船舶を見ている。動くことも叶わず、ただ見ているだけである。
 嵐の海とこの部屋の距離間は測れないが、ポールが倒れていないことでこの部屋は無風であり、嵐とは異なる空間に位置している。つまり、隔絶された時空の併合である。

 現世と冥府、幾艘かの船はポール(死者/母)にとって、家族かもしれない。ここ(冥府)から杞憂する現世の様子ではないか。
 現世を生き抜くことの荒波、猛威の中の生・・・しかし、机上の(マネキンの)手は鳩(大家族を象徴する鳩)を抑えている。こちら(冥府)を「大家族にするな」という暗示である。

 部屋全体はわずかに傾いでいる、床面や壁はピンクの安らぎがあるが、平板な板に空けられた覗き窓のような切り抜きは一体何を意味するのだろう。現世を見るために空けた空洞の個所を幾つも持つ平板の哀愁。

 冥府から覗いた現世の景ではないか。恐怖・困難・危険に曝されている現世、わたしたちの生きている領域の景色である。ここ(冥府)への横断を危惧する霊の眼差し。
 殺伐とした部屋(冥府)の景、(ここへ急いで来ることはない)と言っているようでもある。
 しかし現世の景も苦しみに満ちている(ように見える)。

 マグリットの抱いた心象風景は、もの悲しく切ない。


(写真は『マグリット』西村書店より)


『水仙月の四日』25。

2017-05-01 06:33:29 | 宮沢賢治

 子供はびつくりして枝をひろつて、きよろきよろあちこちを見まはしてゐます。雪童子はわらつて革むちを一つひゆうと鳴らしました。
 すると、雲もなく研きあげられたやうな群青の空から、まつ白な雪が、さぎの毛のやうに、いちめんに落ちてきました。


☆死の教(神仏のおしえ)が詞(ことば)に現れる説(はなし)である。
 同(平等)の死を確かめる。
 逸(隠れた)冥(死者の世界)を運(めぐらせ)兼ねている。
 群(集団/みんな)の照(あまねく光が当たる=平等)は空(根拠がない)であると吐く。
 説(はなし)は望(願い)の絡(すじみち)である。


『城』2626。

2017-05-01 06:05:04 | カフカ覚書

毎朝父は、いちばん上等の服(やがてそれは、父のたった一着きりの服になってしまうのですが)を着て、わたしたちの挨拶の言葉に送られて家を出ていきます。


☆身分不明死体公示所で類のない提案をするのです。(それは唯一無二のものですが)わたしたちの祝福の言葉で(天)宮へ送っていくのです。