背中は曲がり、足はO脚、頭髪は白く、筋肉、節々は悲鳴を上げている。
どこから見ても老婆となり果てた昨今、希望や未練の始末をどうすべきか思いあぐねている。
きっぱり世情の欲は捨て去り、面白楽しいことだけに身を委ね、人生の残り時間(余禄?)を享受すべきかもしれない。70才なんて、母はもうこの世の人ではなかった。幻の時間を生きている。
自分でも想定外の時間を生きている今、不思議な感情を抱いている。
《新しい生》
できれば古い観念を捨て去ることから始めたい。即ち自由になる、自由への願望である。
扉は開くか。叩けよ!という教えに従い、この先の時間を歩いていく。
秘策はあるか?
無謀と失笑があるばかりかもしれないけれど、それでもいいから《恥知らず》を謳歌したい。猛スピードの劣化列車の乗客ではあるけれど、希望や未練を隠し持ったまま行く、行くゾ。
『困難な横断』
異世界。たとえば、A(現世)からB(霊界)へ到着するまでには、あらゆる困難(生老病死)を越えなくてはならず、現世は荒れ狂う海へ乗り出した寄る辺ない船のようでもある。
その横断を見つめる眼差し、ポールは人間の態を失い移動の術もなく質的変換を余儀なくされている母の姿である。肉体機能の滅失、しかし、(精神/魂だけは必ずや残してきた最愛の家族を想っているに違いない)という、そうであって欲しいというマグリットの思いである。
左右の壁に立てかけられた平板な板は霊界を被う仕切りであり、そこに空けられた幾つもの窓は、霊となり果てたものの情念が開けさせた現世を覗く通風孔ではないか。それをも取り外して見た現世の光景は、胸を衝く慟哭の景に他ならない。
《不可逆の横断》である。
マグリットの亡母に対する哀惜の情、(きっと母は見ていてくれるに違いない)という強い想念のもと、向こう側(霊界)から描いた異世界を結ぶ物語の一ページであり、『涙そうそう』は人類共通の秘めた思いである。
(写真は『マグリット』西村書店より)
それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがつた、しづかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。
☆化(教え導くこと)を併せて現わしている説(はなし)の私記である。
化(教え導くこと)の講(はなし)を査(調べる)記である。
霊(死者の魂)の何(いずれ)の様(ようす)も飛(架空)であるが、逸(隠して)備(そなえている)。
ほんとうは返却しないといけないのですが、消防団の小さなバッジをもっていき、村を出ると、それを服につけます。村のなかでは、人に見つけられるのが心配なのです。
☆本当は間違っているのですが、激しく抵抗する氏族を来世の外に引き留めます。来世では人に見つけられるのを恐れているのです。