『旅の想い出』
石化された室内に立つ男とライオン、壁に掛けてあるのは『オルメイヤーの阿房官』、テーブルのうえには果実と灯ったロウソク・・・。
わたしたちが感じている《文明》、火の発見、果実に託された《知恵・生命》の象徴、建物(世界)の末路(廃墟)。
本(学究・進歩)を手にしている紳士の充実した暮らしぶりを伝える着衣、百獣の王として旧態依然のライオン。それぞれ異なる方向を見つめる眼差し。
『旅の想い出』は第三者の眼差しから見た光景である。第三者の眼、それは宇宙における《神意》ではないか。
超未来における時空から見た(過去の想い出の集約の一片)である。
生命連鎖、火の発見、強者・弱者の並置、宗教という糧、衣(着衣)食(果実)住(室内)・・・人類が築き上げたと思っている《文明》も、遥かな時間から顧みたなら、このような『旅の想い出』に過ぎないのではないか。
マグリットの沈思黙考の幻想である。
(写真は『マグリット』東京美術より))
『なりたての未亡人』
なんてウィットに富んだ人なんだろう、デュシャンという作家は。
「なりたての未亡人」とはよく言ったもの…自分のことだなんて、ちょっと気がつかない。
黒革で覆われたフランス窓の向こうには《今、死んだ男がいて、今、新しく未亡人になった女がいる》即ち「ローズ・セラヴヴィ」の誕生である。
フランス窓の向こうに隠蔽されたデュシャンの秘密、ステキな変身。
『なりたての未亡人』という作品は、ローズ・セラヴィに変身したデュシャンの告知である。
(写真は『デュシャン』TASCHENより)
「ひゆう、なにをぐづぐづしてゐるの。さあ降らすんだよ、飛ばすんだよ。ひゆうひゆう、ひゆうひゆう、降らすんだよ、なにをぐづぐづしてゐるの。こんなに急がしいのにさ。ひゆう、ひゆう、向ふからわざと三人連れてきたぢゃないか。さあ、降らすんだよ。ひゆう。」あやしい声がきこえてきました。
☆幸(幸福)を考える講(はなし)である。秘(人に見せないように隠して)究める考えである。散(バラバラにして)聯(並べてつなぐ)考えは、照(あまねく光が当たる=平等)である。
それは、まったく絶望的でした。すこし熱にうなされて、うわ言を言っていました。ちょうどま上のベルトゥフの畑のところに馬車がとまった、お役人がひとり降りてきて、柵のあたりにわしの姿をさがしている、それから、頭をふって腹だたしげに馬車のなかへもどっていくー
☆荒涼たる物でした。復讐の熱に浮かされたと思いました。ベルトゥフについて考えてみると、終わり(死)がおりてくると、父(宿命)は小舟にゲットーをくまなく探しました。頭を横に振りながら(否定)、立腹し、再び熟慮しはじめたのです。