『ミシンの少女』
少女は懸命に何かをミシンで作っている。下着のような着衣は、縫っているドレスの試着を急ぐためである。
窓から差し込む光、清明な外の空気に比してこの部屋は燃え上がる熱い激情が漂う。少女の情熱は《これを縫い上げたらあの人に会い、シンデレラになる》という妄想の膨らみで赤く染まるほどである。壁にかかるフレームは彼のポートレートが入っているのかもしれない。試着はすぐに確認、大きな化粧台付きの鏡は背後にある。
熱い思い…夢を形にと急ぐ少女の胸のトキメキ。少女の成熟は時を待たない。
写真は『HOPPER』(世界の巨匠/岩波書店)より