昨年12月末から今年1月はじめにかけてベルギーを訪問する機会があった。その時1ユーロ=170円だった。10月22日のNY外国為替市場でユーロ、英ポンドが売られた。1ユーロ=125円、英ポンド=158円、米ドル=98円でそれぞれ取引された。自国通貨の日本円が高く評価されている結果である。にもかかわらずテレビでも新聞でも悪いニュースとして紹介している。資源の100%近くを海外に依存している日本の通貨高はプラスである。
NY原油〈WTI〉先物相場は同じく10月22日、バレル5ドル以上値下がりしてバレル66.20ドルで取引された。3ヶ月前バレル147ドルの高値をつけ原油は早晩200ドルを突破するとマスコミはじめ大騒ぎしていた。原油なしには日本は生きられない。原油安につれて大豆、トウモロコシ、小麦も値下がりしている。様変わりとはこういう時に使う言葉だ。
銀行間の貸し借りの金利にLOBOR(ライボー)金利がある。翌日物のライボー金利が1.12%、3ヶ月物のライボー金利が3.54%まで急低下してきたと今朝のブルームバーグニュースが報じていた。3ヶ月物のライボー金利は10月10には4.82%まで上げていた。正に様変わりである。ライボー金利急低下は銀行間で安心感が生まれつつある証拠である。
金利はからだでいえば体温のようなものである。人間という動物ははかない生き物で通常36度台のひとが37度で微熱、1度上がり38度になると立派な病気である。ライボー金利は9月のはじめ頃までは翌日物でも2.80%前後の平熱だった。体温は血圧同様に人間の健康状態を見る大切な指標である。金融不安で患者も家族も大騒ぎしている。手放しの楽観は当然出来ない。しかし、ライボー金利〈体温〉を見る限り、病状は明らかに改善している。
最近二ユーズウイーク日本版を読むようになった。最新号〈10月29日号〉にローレンス・レッシング・スタンフォード大法科大学院教授が「現在起こっている金融危機の原因は、金融工学に『群れの行動=群集心理』という視点が欠落していたからだ」と書いている。
相場の世界にはスタンピード(stampede)いう動物の典型的な行動パターンを説明することばが昔からある。家畜などが群れをなして川を渡るときによく見られる現象を指していう。人間も所詮は動物であるから「群れの行動=群集心理」は今更指摘されるまでもない話である。特に相場の世界では水鳥の行動を観察しているといろいろ教えられることが多い。
NY株式市場で、10月22日、原油相場急落からエクソンなど資源株の大幅安が引き金で全面安の展開となった。NYダウは採用の30銘柄全てが値を下げ、前日比514ドル、5.7%安の8,519ドルで取引を終了した。投資家の恐怖感が下げを加速した結果である。
動物が一端恐怖の坩堝(るつぼ)にはまると止まるところを知らない。病気でも同じで恐怖心にとらわれると治る病気も治らなくなる。相場も同じである。病気の中でも特に精神科の病気は治り難いといわれる。現在の金融不安は正に心の病気であるから治りが遅く厄介だ。
先日あるところに小文を書いた。来年のことを言えば鬼が笑うというが、「2009年を、みなさん、どんな年にされますか」というタイトルで、終わりの3行に「2009年はどうなるかでない。政治も経済も誰も自分をかまってくれない。2009年は人任せにできない。自分の問題としてどう取り組むかで決まりである」と書いた。
自国通貨日本円が買われている。原油相場が値下がりした。元気を出して頑張りたい。(了)