金美齢さん:時局講演会
江嵜企画代表・Ken
先日自宅マンションの郵便受けに台湾出身で、昨年、日本国籍をとった動機を書いた「私はなぜ日本国民になったのか」を出版された評論家、金美齢氏の講演会案内のチラシが入っていた。主催者はなんと自民党神戸市会議員団である。代1,000円で氏の話を聞けると言うことで、家族とともに午後2時からの講演会にかけつけた。金美齢さんのネームバリュ―もさることながら、神戸で特に退潮目立つ自民党市議会も活を入れたのであろう、開始30分前に既にほぼ満席、大変な盛り上がりようであった。会場の様子をスケッチした。
講演は神戸ビーフは素晴らしいという話から始まった。次に氏が宿泊したホテルオークラで一人食事する老婦人(83)との出会いを紹介し、長逗留していると話す婦人を取材して、神戸ならではの光景だったと神戸を持ち上げた。しかし、それは一瞬で、次々と飛び出す辛口のコメントは、持論である民主党アマチュア政党論に始まり、いかに自民党がだらしないかに至るまで発展した。歯に衣着せぬ語りは爽快ささえ感じた。氏がなぜ日本国籍を取得するに至ったかについては、先の著書に詳しい。
日本人は当り前のようにパスポートを取得できる。その有難さを日本人は分かっていない。日本のパスポートがあれば入国を許される。それは日本と言う国が信用されているからだ。そのことを日本人自身が気づいていない。それが日本人の甘さでもあると容赦なく指摘された。氏は学生時代から50年にわたり台湾民主化運動に心血を注いだ。そのために31年間も母国台湾に入れなかったつらい経験の持ち主である。
日本のメディアはいい加減だと指摘した。15年前の震災の時、ある高校生が「私たちはなにも悪いことをしていないのに被災した」と答えた。それをさも立派な発言と捉え、恨みがましそうに伝えた。根底に今の世の中は不条理だと捉えている。天災は避けられない。それが人生と言うものです。危機管理が出来ていない。艱難辛苦が足りない。震災で何を学び体得したかを政治家もマスコミも教えない。なにごともなく、すーっと育った。大人物が育ちますか?災害や不幸なこと、その中から何を学ぶか、そのことを真剣に考える人が沢山日本から出てほしいと話した。
先の参院選で民主党は大敗した。力が劣っているからだ。自民党の議員も自分自身の当落だけを考えている。自民党全体、日本と言う国全体のことを考えた人がいたか。こんな体たらくは許されない。自民党の中にもさすがに懲りて真剣に将来のことを考えているひとが出て来ている。今回、神戸から講演依頼が来た。神戸市に13人の自民党議員がいる。それが一致団結して金美齢にぜひ来てほしいとなった。こんなことは神戸でも始めてと聞いた。
菅首相は「地球市民」と言い「日本国民」と言わない。国というものをどう考えているのか?国なくして個人が安全に生活できない。自分は31年間台湾に入国できなかった。どれだけ苦労したか。日本はそんな人間に特別滞在を認めてくれた。だから日本のために自民党を応援しているのですと話した。
日本は美しい国です。日本は素晴らしい文化と伝統を持っています。東京にやって来た中国人が日本はモノトーンといった。中国人には日本人の美意識は絶対に分からない。中国人はサバイバルの歴史。自分が生き残るためにはなんでもあり。日本人と美意識が全く違う。中国を同文同士というが全く違う。そういうことを前提にして中国人とつき合わないといけない。日本は海に囲まれてるからというだけで安全でない。領土を守ることが国民の生活を守ることです。それが国が国際社会で認められる基本です。
中国では「上に政策、下に対策あり」という。中国人はいままで国にどれだけ裏切られてきたか。中国人はその時々に必要なマスクをつけている。日本人はそれがわからない。日本は世界で一番暮らしやすい。だから日本人は甘い。相手を疑うことを知らない。中国は権力闘争の歴史である。自分が生き延びるためにどうするかを考えている。中国人の悲しいところです。中国は隣国です。隣国だからつき合わないと生きて行けない。中国人とはどういう人間かわきまえて、しっかりとした国家観をもって交渉して欲しい。
テレビ朝日の番組で「自民党は長期政権で腐敗している。必ず脱落すると言ってきた。責任感ない人や悪事を働いた人は切り捨てよ」と番組で話した(カットされた)。もし日本が共産党政権になっていたら国は潰れていた。国にとって大事なことは大きな方向を決めることです。自分は食いしん坊でおしゃれだし、細かいことにとらわれる人間です。しかし、大きな方向ではしっかり仕事をしてきた。社会党は前途を間違えている。一番大切なことが決められない。民主党はだいじなことを隠している。
民主党がいいとなると深く考えないで、日本人は、だーっと民主党に流れた。有権者一人一人が、なにが国にとって大切かをつぎの世代に引きついで欲しい。日本は世界で尊敬される国であり続けて欲しい。保守の時代です。保守は古いという意味ではありませんと言って1時間強の講演を終えられた。
氏は1934年生まれというから76歳である。とてもその歳にみえないはつらつとした語りが印象的だった。余りライトを当てられるとしわが見えると言いながら、実はお肌に自信がおありなのだろう。真顔で、美容家で10歳下の佐伯チズさんによく似ていると言われるんですよと講演の始めに話しておられた。もし30歳若かったら総理大臣になりたいとも言われた。日本に昨年帰化されたとは言え台湾の方である。日本人が失いつつある日本人の誇りを日本人以上に持ち続けておられる人だと実感した。(了)