筑前琵琶&語り
江嵜企画代表・Ken
上原まりさんの筑前琵琶を鑑賞すす機会があり、会場の大阪市中央
区にある山本能楽堂で、友達と現地待ち合わせで楽しみにして出か
けた。
上原まりさんは神戸出身で親しみも感じていた。機会があれば、
聞いてみたいと思っていたが、ご本人の演奏を生で聞くのは、今回
はじめてだった。「祇園精舎」にはじまり、「祇王」「奈良炎上」
「入道死去」「壇ノ浦」を、お馴染のくだりを、能舞台かぶりつき
で、上原まりさんの語りを交えながら、この日のイベント第2部での
演奏を堪能した。
第1部は、「トークとミニ講演」で、上原まりさんと朧谷寿、同志
社女子大名誉教授との対談と朧教授による「平清盛と平家物語」の
講演を楽しんだ。上原まりさんは、宝塚歌劇「ベルサイユのバラ」
でマリ―アントワネットを演じたことでも知られるが、筑前琵琶
旭会総師範、二世柴田旭道の一人娘さんであるから、本来、琵琶
奏者として生まれて来られた。宝塚は寄り道をされたということ
が、この日の対談で初めて納得した。
平清盛が好きなんです。さぞかしいけ面の好男子だったに違いな
い。だからもてたのではないか、と清盛ファンの上原さんは、
話された。平家物語はおそらく平清盛を快く思わない作者が書き
残したのであろうと、朧教授のコメントも面白かった。
「一の谷」、「屋島」そして「壇ノ浦」で平家は命綱を断たれる。
しかし、味方だった水軍に寝返りを受けていなければ、平家は
滅びていなかったのではないか、それが残念でならない、と語る
姿が印象的だった。
第1部での会場の様子をスケッチした。上原まりさんの演奏を
文庫本「平家物語」を手許に置いて聞いておられた紳士の姿も
あった。山本能楽堂を訪れるのもはじめてだった。椅子席も
舞台サイドに設けられていたが、そもそもの能舞台は、桟敷に
座って客は能をたのしんだのではないか。上原まりさんも
マイクを通さす演奏を聞いていただけてわたしも嬉しい、
と話された。
大河ドラマ「平清盛」は、兵庫県知事が場面が汚いとクレー
ムを付けた。朧先生の解説によれば、事実に基づいて制作されて
いないそうだ。肝心要の神戸の人間が「清盛」に燃えていない
ところが一番気になる。
神戸には清盛ゆかりの場所が、神戸地下鉄、大倉山駅下車、
六甲の山裾、当時の大和田の泊を見降ろす場所に、今も
多く残っている。まず、神戸在住の人間が平清盛ゆかりの
場所を尋ねることから始めることが先かもしれない。
何事も「隗よりはじめよ」と、言うではないか。
「事を起こすには、自分自身から着手せよの意」と
広辞苑にあった。(了)