去る3月31日に亡くなった松橋桂子さん(大著「柳 兼子伝」著者・作曲家)の遺品(遺族からわたしが頂いた大量の資料)から、たいへんに貴重なテープが見つかりました。奇跡のような録音です。
柳兼子さんが亡くなる1年前、門弟のプロ歌手・相川マチさんへのレッスンの模様で、1時間近くにわたるものです。デシタル化してCDにしました。音質は明瞭です。
以下は、添付した解説文です。
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このレッスン模様は、松橋桂子さんの遺品から発見したテープ(60分)をCD化したものです。1983年1月20日、柳兼子さんが90歳8カ月の時のもので、極めて貴重です。
レッスンを受けているのは、声楽家の相川マチさんです。彼女は、1970年に兼子さんの講演と歌に驚愕・感動してレッスンを希望しますが、すでにプロの歌手であった相川さんは簡単には弟子入りを許されず、週のレッスン日に二カ月間通い続けてようやく許可されました。兼子さんのレッスンは、誰でも同じでゼロからの出発、呼吸と間、発声練習から、とのことです。
レッスンは、平井康三郎の3曲(「平城山」、「甲斐の狭」、「九十九里浜」)と、松橋桂子さんの「山羊」です。それに「金魚や」(杉山長谷夫作曲)の歌い方とそれに付随する話。
松橋桂子さんと相川マチさんは共に1934年生まれの友人(「縁」は兼子さん)で、このテープのレッスン時は48歳でした。
場所は、兼子さんの自宅・町田市 真光寺町 1356-7。
ピアノ伴奏は、木下美智子さん。
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インデックス6番は、冒頭の柳兼子さんの手本からはじまり、しばしば、相川さんと共に歌いますが、それは、兼子さんの音楽イデー(意味の把握)と境地を開示したものです。わたしは、感動で鳥肌が立ちました。
松橋桂子さんが録音したプライベートテープは、期せずして日本声楽史の一頂点を記録したものとなりました。
なお、この録音は、前半は左チャンネルしか音声が入らないことが多いので、右チャンネルにも同じ音声を入れモノラルにしました。音質自体はとてもクリアーで、大型の優れたオーディオ装置で聴くと、まるでその場に臨んでいるかのようです。
洋楽の声楽ではなく、日本の歌の歌い方(「声楽の日本の歌」)がよく分かります。ぜひ繰り返し聴いてみてください。
武田康弘