思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

無視、虐め、暴力、抑圧、あらゆる人間的不幸の根源には、「性」への歪んだ見方と抑圧があります。夏目祭子さんを推薦。

2017-07-27 | 学芸

 なぜ、これほどまでに性=身体的な愛が歪められ、貶められてしまったのか。

 以下は、もう20年近く前(1998年10月15日)のわたしの文章(『私のエクリチュール』26ページ)です。

 性を罪悪視するような歪んだ思想は、おぞましい異常な性をつくり出す原因です。人間にとって「性」-もちろん、性とは、単なる射精行為(男性側)をさすのではなく、視線の共有や握手、赤ちゃんを抱っこしたり、ほおずりしたり・・・・という身体的愛のすべてだがーは、何よりも必要とされるものです。人間が、個人としても社会人としても健全に生きていくための第一条件は、性のよろこび・充実です。子供にとっては、話を聞いてもらったり、描いたものを見てもらうことを含むスキンシップが、大人にとっては、さらに性愛を含む触れ合いが求められます。

 こうした広義の性の充足があると、個人は、集団に依存しないで精神的に自立することが可能になります。独裁的な人物や封建制の強い社会が、例外なく、性を罪悪視し、抑圧することの理由がここにあります。たとえ女性であっても、自分の思うとおりに他者を、とりわけ子どもを操作操縦しようとする人は、「ネクロフィリア」(固定したもの死んだものしか愛せず、規則主義で固く、生き生きとした自由な存在への嫌悪感をもつ危険な精神疾患)なのです。彼女たちの不幸な心は、自分の性的欲望を素直に認めようとしない自己欺瞞がもたらすものでしょう。

  広義の性のよろこび=充足をもてないようにすれば、個人は不安的になり、頼れそうな人物・強く大きな集団・権威的なるものに隷属して生きることになります。ある特定の傾向に人間を閉じ込めるためには、まず第一に性を(身体的な愛)を抑圧する必要があります。性を罪悪視し、いやらしいものとする想念やイデオロギーは、そこから生じるのです。人間の自然性・本性の否定は、暴力やサド・マゾのような異常異様な性を生みだしてしまいます。

  こうした人間存在の原事実を明晰に自覚することが、よき優れた生のための出発点です、美しさや悦びに溢れた豊かな性(広義の性)のイマジネーションをもてない固くこわばった心が、規則づくめで機械的な管理社会=生きるよろこびの少ない灰色の世界を再生産しているのです。(武田康弘)


 なお、この後10年ほどしてから、夏目祭子さんの性に関する著作が出ましたが、極めて優れた論考で、若い人のみならず年配者にもお勧めです。彼女の本は、「世界史」や更には「経済学」にも影響を及ぼす優れた考察=本質論で、必読本です。読まれると、目から鱗、となるでしょう。

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善とは何か。フィロソフィーの善と宗教の善は、まるで異なります。

2017-07-27 | 学芸

ソクラテスのいう善美のイデアの追求の「善」=「よい」は、
宗教でいう善とはまるで異なります。

では、フィロソフィーの「よい」とはなにか、
それは、『白樺教育館』の玄関に掲げてありますが、以下です。

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 最高のイデア(理念)とされる【よい】の意味について。


女性と対話するソクラテス
(レリーフ制作は紀元前2世紀)

 恋知(哲学)でいう【よい】とは、かたまじめな善(ぜん)のことではありません。

生き生きとしていること・輝いていること・しなやかなこと・瑞々(みずみず)しいこと・溌剌(はつらつ)としてること・高揚感のあること・囚われのないこと・愉快なこと・・・ を言います。

 「まじめ」ということも、学校や官の世界でいう「真面目」、厳禁の精神・既成秩序に盲従する「真面目」ではありません。ソクラテスとプラトンのいうまじめとは、恋愛におけるまじめ=真剣と同じです。興味のある方は、世界文学最高の古典の一つと言われる『饗宴』(プラトンによるソクラテスの対話編)をお読みください。アカデメイアの主祭神は、エロースの神です。善美をめがける動力源は、エロースの力とされます。宗教との根本的違いです。

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必然の神・アナンケを打ち破ったのが恋愛の神・エロースであったというギリシャ神話は、とても示唆に富むエピソードです。
規律・掟を絶対とする「厳禁の精神」のアナンケの支配下では神々の争いが絶えませんでしたが、
性愛を司るエロース神が、厳禁のアナンケを打ち破ったことで、調和=平和が訪れたのです。

 

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