★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

Knowing のうさちゃん

2011-10-10 02:55:40 | 映画


柄谷行人の『世界史の構造』をのろのろ読んでいたら発熱してきたので、映画『Knowing(ノウイング)』を観る。

『Xファイル』では、一応宇宙人が悪者であり、最後はどうやら彼らによって人類滅亡が計られるらしいが、そこでも人類がゴキブリのように生き残る可能性は高い。『Xファイル』は基本的に刑事物なので、主役を殺すわけにはいかず、人類滅亡まで行かなかった。映画『スーパーノヴァ』あたりだと、太陽のフレアのでかい奴が来ると人類は焼け死ぬらしいということになっていたが、主役のビバヒルのディラン役の俳優を殺すわけにはいかず、彼に計算ミスをさせて人類を救った。最後は壮大な爆発、という法則を貫ききれなかったこの二つの物語は、いずれも「最後がイカン」と言われたのだった。

より効果的に人類を殲滅させるにはどうするか……、で、この二つの物語のパタンを合わせる。つまり、災厄の原因を太陽の爆発にして、宇宙人を善い人にし人類救済役に据える。で、聖書を持ってきて、災厄を最後の審判と捉え、未来のアダムとかイブとかだけを救う話にする。その際、一番がんばった親とか年寄りとかを殺して涙を誘い、かわいい子どもを救って観客に許して貰う。『ディープインパクト』や『2012』のやり方である。

もう、こういう神話みたいな話ばっかりになってくるのはこの前の世紀末の時よりも、現在の世紀末臭は物凄いと言わざるを得ない。よほど我々は日常が厭になっているらしい。

とりあえずこの映画は、息子を一生懸命守ろうとしたMITの独身教授(←妻を事故でなくしたらしい)のニコラスケイジが、宇宙人によって選抜されておらず(←やっぱりね)、その息子と、訳ありの女の子(お婆さんが宇宙人の声を聞けたのだ)がアダムとイブであるという結末になっていた。MITの独身教授かわいそうである。勉強して妻も失ってというかわいそ過ぎる人が死んで、まだなにもわかっていないガキが生き残るとは……。ちなみに、アダムとイブとともに宇宙船に救済されていったのがうさちゃん。

つまり、うさちゃん>ニコラス・ケイジ。宇宙人は低学力が好きなのか?たしかに西洋の神話などでは、再生の春の象徴であり復活祭にも登場するうさちゃんなのであるが、だからなんなのだ?