★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

40代、海へ

2017-05-14 23:08:24 | 思想


わたくしは、信州木曽で育っており、まさか「瀬戸内海べりの一寒」(壺井栄)、いや一寒街にたどり着くとは思っていなかった。いまでも海辺に行くと恐怖で後ずさりするのであるが、それは必ずしもわたくしが山とは違う海を得体の知れないモノとして認識してしまうからではないと思う。なぜなら、山育ちのわたくしをしていわしむれば、山は山なりに恐怖の対象だからである。ただ、なんとなく海を見て育ったやからとわたくしは違う気がしていたので、屡々、論文とか授業とかでそのことを気にかける発言をしている。

で、前から気になっていたのが川勝氏のこの本である。この人は、政治家でもありときどきあれな発言が伝えられているので偏見があって、山室信一の本のとなりで長らく眠りについていたのだが、今日少し読んでみた。非常に壮大な試みで、それ自体が海洋的な感じがする。わたくしは、そもそも日本を島国だと思っているのは海辺のやつらだけではないかと思うのだ。山は物のバラエティの密度に於いて恐ろしく濃く広く感じるので……。自分が孤独である感じがあまりしないのが山人の特徴であろう(そうでもない気がしてきたが……)対して、家に帰りたがるのは、安部公房の「砂の女」の主人公みたいな砂に憑かれてしまった人か、自分の土地を買ったり田んぼを持った連中なのではあるまいか。

そういえば、わたくしは海も苦手だが、空も苦手で、飛行機というものは100%墜落するものだと信じている。


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