半分の15話まで目をとおした。昔話というと貴種流離譚と土地開発神話などをすぐに思い浮かべる。土地開発神話に類するものでいえば第6話の「ひよこと白へび」と第14話の「茂庭のおろち退治」が印象に残った。
土地開発神話は私の印象では征服譚や地霊退治ともかかわるので、第14話のように血なまぐさいものも多い。第6話のようにその「武力」を隠して「悲劇」のように仕立てる話もある。しかしこの場合、祟る神から豊穣を約束する神への転換など、かなり無理をした筋の展開、人物・動物・神の性格設定が行われる。これが面白いところでもある。
貴種流離譚は悲恋の結末、相手を貴種になぞらえて納得させるという話の展開が多いが、第13話の「大杉と娘の恋」は相手は貴種ではなく精霊である。自然への畏怖と同時に自然との対峙や開墾という営為への畏れがこの場合は色濃く反映している。貴種流離譚よりも原初的な形態なのかもしれない。精霊の宿った大杉で城を建てた殿様や奉納した村落の構成員は仏像の奉納で救われる。だが、恋を失った女性は恐山への送致という共同体からの放逐をもって終わる。道ならぬ恋への羨望と罰という教訓じみた話をどのように柔らかく包み込んで伝えるのか、というところが窺えるようだ。
ただしこの話は展開も結末もいろいろバリエーションがあると推察される。