本日の帰宅途中で見た東の空の雲の暗さには驚いた。午前中の明るい陽射しと青空に気分が晴れやかになったばかりであったので、いっそう暗さが不気味に思えた。
★放課後の暗さ台風来つつあり 森田 峠
台風が間もなく襲来しそうな夕刻だろうか、私はこの句で、学校の外から電灯の消えた校舎を振返った記憶を呼び覚まされた。小学生には広い校庭と校舎、奥行があり不気味さを感じたのだろうか。「学校に出る幽霊」におびえた小学校低学年を思い出す人もいるかもしれない。それはそれで羨ましい。
だが私は違う。小学校最後の2年間は、校舎を振り返るたびに、校舎が明日は消えてなくなってほしいと念じつつ帰宅した。特に梅雨の末期の大雨のときや雷が鳴るとき、台風シーズンのときは、教師や同級生の顔を思い出しながら、すべてのこの世の人間関係が消えてなくなってほしいと、子どもながらに真剣な思いで校舎を振り返ったものである。その時の校舎の暗さは今でもよく覚えている。
いまでいう登校拒否にならなかったのが、不思議と云えば不思議である。そんな嫌な60年近く前の記憶が、蘇ってくる。今はその記憶を受けとめることはできる。受けとめることはできても、吐き気はおさまらない。
一方的に教師や同級生に非があるわけではないだろう。転校生の私がこの地の人間関係になじめなかったことが原因ではあるだろうが、しかし11~12歳の子にはそんなことは理解できなかった。
卒業後6年経ち、大学生のころ帰省してたまたま当時住んでいた家の傍で、会いたくもない同級生と目が合ってしまった。その商店を継ぐのであろう。私が目を逸らす前に「今度同窓会やるよ」と白々しく言われ、「お断り」と大きな声で宣言して二度とその店の前は通らないことにした。