Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

図書8月号 2

2020年08月04日 20時14分53秒 | 読書

・こぼれるということ          藤原辰史
「赤坂(憲雄)さんはある村であるおばあちゃんに出会って、訪ねて行ったら「愚痴ばっかり一時間」しゃべられ辟易したあと、別のところで聞き書きをしているうちに、この愚痴がこの村の「社会構造」をあらわしていることに気づくということろです。反省しました。一時間五十分を無駄と感じるようになってきているではないか。」
「資料を読むことも、結局は死者が語りこぼしたものも、語りきれなかったものを、もろとも聞き拾うことであり、だからこそ、読み手の人生もかかっている。そのような態度で史料にむかわないと、AIの書く歴史学に持っていかれるのではないか、いや、歴史学はだんだんと情報処理に変化しつつあるのではないか、と思うのです。」

・奇想の花               橋本麻里
「たった一種の青いアサガオから膨大に枝分かれし、文字どおり千変万化を遂げて咲いた花の、単純に美しいと称えることも出来ない、グロテスクでさえある、その姿。それはたとえば、伊藤若冲や曽我蕭白、狩野山雪といった絵師たちにも向けられた言葉ではなかったか。明末清初の中国に興った「正」ではない、「奇」なるものを志向する文人の精神や、世俗を超越する者こそ聖人に達するという、陽明学左派の「狂」を尊ぶ思想は、十八世紀京都に流れ込み、既存の美を打ち破ろうとする絵師たちの骨格をつくった。‥江戸の人々の心性に触れ、「奇」へ、「狂」へと向かう濁流の波頭に咲き誇るのは、捩れ、膨らみ、引き裂かれ、襞を重ねた異形の花だ。」

・善と悪の不条理            長谷川櫂
 たっぷりと皮肉を込めて50年後の世界からこの世を眺めている作者は、
「この国には「全国民にマスクを二枚ずつ配る」というブラックユーモアに税金を使う首相も、感染症対策を自分の選挙運動と混同する都知事もいなかったのである。」



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