メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

心の中のベストフィルム~『シャイニング』

2008-10-13 23:40:02 | 映画
『シャイニング』~The Shining(1980)イギリス
原作:スティーヴン・キング 監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、スキャットマン・クローザース、バリー・ネルソン ほか

The Shining (1980) Trailer

忘れた頃にやってくる「心の中のベストフィルム」コーナー。
『ローズ・レッド』『キャリー』とスティーヴン・キング映画が続いたところで、急にまた観たくなったのが今作。
いやぁ、何度観ても飽きないどころか、何度観ても恐怖の戦慄が走る。
ホテルの廊下に大量の血の洪水が溢れ出すシーン、双子の少女のシーンなどなど
一度観たら一生忘れない映像のインパクトと色遣いの美しさ。
誰が、どこから、何度観ても納得のカンペキな逸品。

story
生計をたてるための教師を辞めて小説を書くために、コロラドの山中にあるホテルの冬の間の管理人を引き受けたジャック。
歴史の古いオーバールックホテルは、10月で閉鎖し5月に再開する。その間は深い雪に閉ざされる。
前任の管理人グレイディーは孤独のあまり発狂し、妻と2人の娘を殺して、自分も銃で自殺していた。
だだっ広いホテルを自由に使っていいと言われたジャックと妻ウェンディ、一人息子のダニー。
平穏に過ぎていくかに見えたが、特別な力を持つダニーは様々な恐怖体験をする。
そして、仕事に行き詰まったジャックは次第に正気を失ってゆく。。

ジャック・ニコルソンはノーメイクでもそのままで充分コワイ。出てきた瞬間からコワイ(失礼だ
シェリー・デュヴァルのどこか素人っぽいぎこちない演技もかえってリアリティがあってイイし、
ダニー君も『オーメン』の子役に負けず劣らず素晴らしい演技。

欲を言えば、これは閉塞した冬山のホテルで頭がおかしくなった父親の恐怖映画ってだけじゃなくて、
その奥にはいろんな背景があって、根底には親子の深い愛情が貫いていることまで描ききれなかったことだ。
スティーヴン・キングはこのキューブリック作品が不満で、後に長時間ドラマ化している。

DVDには特典としてメイキングが入っていた。名シーンの種明かしとゆうよりは、
まさに撮っている現場のピリピリと緊迫した様子を克明に記録した感じ。
シェリーは監督に怒られ、急かされ、ついにナーバスブレイクダウンしてしまっているが、
それも極限の演技を引き出すための監督の作戦だってことを本人も分かっているとコメントしてる。
毎日変わってゆくスクリプト、自由な発想による撮影方法、過酷な撮影環境の中でも
求められた演技を瞬間、瞬間で出してゆく俳優の姿にプロ意識の高さが見えた。

でも、やっぱり原作は映画の数十倍も感動するから読むことをすすめたい。
『シャイニング』 スティーヴン・キング/著 深町真理子/訳
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『チップス先生さようなら』

2008-10-13 15:17:04 | 映画
『チップス先生さようなら』~Goodbye Mr.Chips(1969)アメリカ
原作:ジェームズ・ヒルトン 監督:ハーバート・ロス 音楽:ジョン・ウィリアムス
出演:ピーター・オトゥール、ペトゥラ・クラーク、マイケル・レッドグレーヴ、ジョージ・ベイカー、マイケル・ブライアント ほか

近所のレンタル屋の1週間100円VHSシリーズ。こんな名作があるなら、まだまだ掘り出す価値ありv
週末にどんだけ泣かされるんだってくらい、また泣いた逸品。
考えるに、ヒトって生来「お話」が好きなんだなって思う。
誰かが話す話にしても、本やたとえ一篇の文章でも、こうした映画にしても、
「いい話」が持つココロを掴む魅力には抗えないってことだ。どんなヒトでも。

story
イングランド南部の田園の町ブルックフィールドにあるパブリック・スクール教師チピングは
真面目がとりえの堅物で生徒からは「愚鈍」とあだ名をつけられていたが、
本人はそれを知っている上で「私がどれだけ生徒たちを愛し、理解しているか分かってもらえたら・・・」と悩んでいた。
休暇で訪れたポンペイで、友人の恋人で舞台女優のキャサリンと偶然出会い、
傷心旅行の彼女はチピングの正直で誠実な性格に感激し、神殿でアポロに願をかける。
日常に戻ってからもパーティに誘って、前の恋人が押しかけてきた際、
チピングが追い返してくれたことで「この人に間違いない」と信じて告白して結婚。
周りから「釣り合わない」と言われても、学期始めに夫婦で挨拶し、学校中の注目の的となる。
学校への高額寄付で権力を持つサタウィック卿は、「女優と結婚するなんて学校の名に傷がつく」と
なにかと2人を追い出そうとするが、彼も以前、女優と付き合っていたことを知られそうになって理事会にかけることを中止する。
キャサリンは生徒からも好かれ、第一次大戦が始まってからは慰問でいろんな施設に出かけ歌を披露。
校長が引退する際、次期校長はチピングにほぼ決まっていたが、高齢を理由に阻止される。
これを機に教師を引退する覚悟を伝えるも、戦時中は教師も不足してしまうからと切望され残る決心をする。
その後、新校長が栄転となって、ようやくチピングに校長の話がやってきたが。。

前作『王様と私』につづいて奇しくもまたミュージカル映画。それもMGM
どちらも始まる前と中間地点に長いoverture(序曲)、entr'acte(幕あい音楽)が入ってる。
劇場公開の際、演劇鑑賞みたくみんなが席につく間と、トイレ休憩のためのものだろうか?w

イギリスの寄宿制のパブリック・スクールはみんな幼い頃から親から離されて、
集団生活や規律、紳士道を学ぶために年代の違う子どもたちが寝食共にするみたいだけど、
夏休みは3ヶ月ほど実家に帰って過ごして、学校に戻る際には本当に牢獄に戻る気持ちだろう。
選択肢のない子どもに強いるにはどうなの?

ポンペイ
まったく生活環境の違う2人の男女を引き合わせたのはロマンティックなポンペイ遺跡。
史劇とか観ていると、もし歴史にもっと通じていたら、前後の関係やらも含めて
もっと深い想い入れを抱けるだろうにと、いつも自分の知識不足を残念に思う。

ジョン・ウィリアムズ・グレイティスト・ヒッツ1969-1999

ペトゥラ・クラークのこの曲が好きで、いつかブログで紹介しようと思っていたから、
妻役が彼女と分かってビックリ。偶然の必然てほんと面白い。

Downtown/Petula Clark

そして、とにかくピーター・オトゥールは素晴らしい名優だ。

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『王様と私』

2008-10-13 09:39:34 | 映画
『王様と私』~The King and I(1956)
監督:ウォルター・ラング 原作:マーガレット・ランドン
出演:ユル・ブリンナー、デボラ・カー、リタ・モレノ ほか

ユル・ブリンナーシリーズ。今作でブリンナーがアカデミー主演男優賞を受賞したほか、
衣装デザイン賞、美術賞、ミュージカル映画音楽賞、録音賞の5部門で獲得したとある。
ジョディ・フォスターとチョウ・ユンファが演じたリメイク版『アンナと王様』と比べると、
あまり覚えてないけど、だいぶストーリーも違うような。。?

THE KING AND I Trailer

story
アンナは夫亡き後、シャム国王の王子・王女・妻たちの家庭教師として息子を連れてバンコクを訪れる。
絶対の存在である国王は、アンナを召使い扱いし、宮殿の外に家を建てるという契約も守らないが、
100人近い国王の子どもたちの可愛さに負けて、アンナは宮殿内で働きはじめる。
ことあるごとに文化・習慣・考え方の違いで衝突するも、国王の時に正直で、真摯に国を治めようとする努力に惹かれるアンナ。
王が野蛮人だからとゆう理由だけで侵略を企てる西洋諸国に対して、彼らを晩餐に招いて
手厚くもてなすことで、シャム国の文化、知識を知ってもらってはどうかと提案。
ファッションから食事のスタイル、挨拶にいたるまで西洋風にして混乱するも大成功。
その夜、国王はアンナからダンスを教わり、踊るうちに心を通わせるが、
妻のひとりが恋人と脱走を図ったことで、彼女を罰するか否かで再び意見は衝突。
国王は今までのやり方との狭間に悩み、病の床に伏せてしまう。。


西洋人から見た東洋人の勘違いな誇張っぷりが当時のハリウッド映画らしい/苦笑
アンナから教えてもらった「エトセトラ!エトセトラ!エトセトラ!」をやたらと連呼して、
人に指差してものを言ったり、ビルマから連れてこられた若いカップルの密会にしても
なぜか全部、英語の会話だったり、ツッコミはじめたらキリがないけど、それはご愛嬌

会食の後の余興がまた素晴らしい。
「アンクル・トムの小屋」を自国風にアレンジした演劇で、シンプルな動きの中に高い芸術性がある。

Shall we dance?
最初、子どものように手をつないで踊る方法を教えたアンナに対して、「さっきはそうじゃなかった。こうだ」と腰に手を回して、2人でものすごい勢いで回転して踊りだす場面は、2人の間に芽生えた愛情のような高揚感が出ててドキドキするシーン。
鋭い矢のように突き刺すブリンナーの眼ヂカラが凄い!!!鍛え上げられた締まった肉体も美しい。
このシャム王役が定着してその後ずっとスキンにしてたってウィキに書いてあった。

「ブリンナーは片方の肺を切断した後でこの映画の撮影に臨み、酸素吸入器を使いながらハードなダンス・シーンを演じた。苦労の甲斐あって、ブリンナーが演じたぶっきらぼうでパワフルな王様役は高い評価を得て、初ノミネートでいきなりアカデミー主演男優賞を獲得。ブリンナーはこの役が生涯の当たり役となり、72年のテレビ版でも王様を演じ、舞台では初演から85年まで合計4625回も王様を演じた。」
とのこと。

デボラ・カーは、歌手ではないから今作の歌声は吹き替えだったって知ってびっくり。
『サウンド・オブ・ミュージック』の時のジュリー・アンドリュースのように品行方正な家庭教師の役で、キレイなイギリス英語が気持ちいい。
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