■『茶色の朝』Matin Brun
フランク・パヴロフ/物語 ヴィンセント・ギャロ/絵 藤本一勇/訳 高橋哲哉/メッセージ 大月書店
フランス人にとって「茶色」はナチスを連想させる色だそうな。
極右政党が政権をとろうとしていた1980年頃、パヴロフは印税を放棄して、たった1ユーロで本書を出版し、
人々に「極右にノンを!」という運動を起こさせ、ベストセラー作家の仲間入りをしたとのこと。
話はとてもシンプル。茶色いペットが都市生活に最も適しているからという理由から、
茶色以外の犬猫を処分する法律が作られ、主人公は愛猫を、友人シャルリーは黒ラブを安楽死させた。
「茶色新報」以外の新聞も廃刊となり、廃刊系列の書籍が図書館から強制撤去された。
ちょっとした疑問を抱きつつも、慣れてしまえば、これも悪くないと思い、
2人はそれぞれ茶色い犬猫を飼い始めるが、ある日、友人宅に自警団が入り、
「以前、茶色じゃないペットを飼っていた人も取り締まる」と言い出し、逮捕された。
そして、その事件の翌朝、「俺」の玄関ドアを叩く音が聞こえる。。
本編より長く、哲学者・高橋哲哉さんのあとがきでより深く本書の言わんとすることの意味を解説している。
p.40
「流れ」に逆らわなければ、「悪いこと」をせずに「規則を守って」さえいれば、自分は「安全」だし、「安心」だ。「妙な感じ」があるからといって、「すっきりしないこと」が残るからといって、あえて流れに「抵抗」して「ごたごた」に巻き込まれるより、「おとなしくしている」ほうが得策だ。自分には「仕事」があるし、「毎日やらなきゃならないこまごまとしたこと」も多いのだから、「面倒なこと」にかかわりあっているヒマはない・・・」
また、ファシズムや全体主義に驚きや疑問、違和感を感じながらも、「やり過ごしてしまう」ことで
権力者のやり方を容認して、協力していることにつながっている。
「思考停止をやめること」、勇気をもって発言し、行動することが大事だと結論している。
同様に「現状は分かったけど、じゃ、どうすればいいのか?」と聞くことにも疑問を投げかけている。
p.41
「具体的にどうすればいいかは、あくまで自分自身が考え、決定すべきことがらです。
それさえも他者から指示してもらおうというのは、そこに、国やお上の方針に従うことをよしとするのと同型の
メンタリティがあるのではないか、と感じられてならないのです」
映画監督でもあるヴィンセント・ギャロのラフな絵がユニーク。
外国人排斥(ゼノフォビア)=外国人嫌い。未知の人・物に対する嫌悪、恐怖。
フランク・パヴロフ/物語 ヴィンセント・ギャロ/絵 藤本一勇/訳 高橋哲哉/メッセージ 大月書店
フランス人にとって「茶色」はナチスを連想させる色だそうな。
極右政党が政権をとろうとしていた1980年頃、パヴロフは印税を放棄して、たった1ユーロで本書を出版し、
人々に「極右にノンを!」という運動を起こさせ、ベストセラー作家の仲間入りをしたとのこと。
話はとてもシンプル。茶色いペットが都市生活に最も適しているからという理由から、
茶色以外の犬猫を処分する法律が作られ、主人公は愛猫を、友人シャルリーは黒ラブを安楽死させた。
「茶色新報」以外の新聞も廃刊となり、廃刊系列の書籍が図書館から強制撤去された。
ちょっとした疑問を抱きつつも、慣れてしまえば、これも悪くないと思い、
2人はそれぞれ茶色い犬猫を飼い始めるが、ある日、友人宅に自警団が入り、
「以前、茶色じゃないペットを飼っていた人も取り締まる」と言い出し、逮捕された。
そして、その事件の翌朝、「俺」の玄関ドアを叩く音が聞こえる。。
本編より長く、哲学者・高橋哲哉さんのあとがきでより深く本書の言わんとすることの意味を解説している。
p.40
「流れ」に逆らわなければ、「悪いこと」をせずに「規則を守って」さえいれば、自分は「安全」だし、「安心」だ。「妙な感じ」があるからといって、「すっきりしないこと」が残るからといって、あえて流れに「抵抗」して「ごたごた」に巻き込まれるより、「おとなしくしている」ほうが得策だ。自分には「仕事」があるし、「毎日やらなきゃならないこまごまとしたこと」も多いのだから、「面倒なこと」にかかわりあっているヒマはない・・・」
また、ファシズムや全体主義に驚きや疑問、違和感を感じながらも、「やり過ごしてしまう」ことで
権力者のやり方を容認して、協力していることにつながっている。
「思考停止をやめること」、勇気をもって発言し、行動することが大事だと結論している。
同様に「現状は分かったけど、じゃ、どうすればいいのか?」と聞くことにも疑問を投げかけている。
p.41
「具体的にどうすればいいかは、あくまで自分自身が考え、決定すべきことがらです。
それさえも他者から指示してもらおうというのは、そこに、国やお上の方針に従うことをよしとするのと同型の
メンタリティがあるのではないか、と感じられてならないのです」
映画監督でもあるヴィンセント・ギャロのラフな絵がユニーク。
外国人排斥(ゼノフォビア)=外国人嫌い。未知の人・物に対する嫌悪、恐怖。