メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

灰色の服のおじさん フェルナンド・アロンソ/著 小学館

2023-04-13 21:38:38 | 
2017年 初版 轟志津香/訳

フェルナンド・アロンソ
1941年 スペイン生

ウリセス・ウェンセル/絵
1945年 スペイン生 スペインを代表するイラストレーター



滝野川西図書館で見つけた1冊

「スペイン児童文学の古典」と言われているそう



【内容抜粋メモ】

灰色の服のおじさん
灰色のスーツ、灰色の帽子、、、
おじさんの毎日は同じことの繰り返し
昨日とこれっぽっちも変わらない

でも、心の中は虹の色
オペラ歌手になる夢がある

ある日、会社で思わず歌うと
上司のカンペキさんにひどく叱られる

何年も布をアゴにしばりつけたまま
ひどい虫歯になったふりをした







このまま悲しく終わらせたくないので
オーケストラの指揮者と出会い
大人気の歌手になり
灰色の服を全部燃やした

おしまい?



スズの船
器用なお父さんが作ったスズの船
息子がお風呂に浮かべたら沈んでしまう

木の船になりたかったな
ぼくはなんの役にも立たないんだ

と思っていたら、穴があいたその船を
「世界一きれいな難破船!」と言って水槽の中に入れる
水と魚にかこまれて幸せになる








石の木
すべてが石でできている石の国
心も石だが、思いやりにあふれている

ところが、子どもたちに元気がない
公園に木が欲しいと言う

勇気ある人が各地から持ってきた木は
植えるとすぐに枯れてしまったが

海中のサンゴの木を植えると
みんな自信をもち、笑顔になる






※エリスリナという植物がモデルだそう



古時計
おじいちゃんが亡くなり、使われなくなった古時計はしまわれた

壊れたものを修理するのが好きな少年ラモンが見つけて直す
数字がないため、探しに行く






数字たちは文字盤の退屈な生活がイヤになり
1は漁師の銛、2はお祭りの射的のアヒル、、、などになって
自分で選んだ暮らしに満足している







ラモンは絵具で数字を書いて
時計は楽し気に時を刻みはじめる



ボトルシップ
自分のボトルが世界のすべてと信じていた船はとても幸せだった

持ち主はたくさんのボトルシップを集めて飾ると
船は自分の間違いに気づく
紙の波、コルクの家もつくりものだと分かる

船たちはガラスを割り、本物の世界に漕ぎ出す







船たちは分かっていた
ひとりひとりがだれなのか
ここにあるすべてで、たったひとつの世界をつくっていることを

ひとつひとつの役割を知った時から
新しい、本物の自由な人生を歩みはじめる




塔の番人
自分たちでつくりあげた町をとても誇りに思う住人たちは
町の真ん中に高い塔を建てた

ある朝、塔のてっぺんの戸が開き
見知らぬ男が町を見下ろすと
とても偉く見えて、魔力を持っていると噂され
管理代を支払うようになる







男は自分を塔のご主人さまと呼ばせる




住人はガマンならず、塔を壊して、さびれていき
塔の男は町から消えた

塔を建て直したが、こんどは1階建て
みんなに等しく太陽の光がさしこむ



かかしと踊り子
小麦畑に立つかかしは鳥が好きで
追い払う仕事がイヤだった

踊り子にダンスを教わると
イヤなことがあっても、日が暮れたら踊ればいいと思うようになる








農場主のタダシイさんはそれが気に食わず踊りを禁止する

「どうして、ぼくの時間に好きなことをしちゃいけないの?」

タダシイさんはかかしを叩いて、とうとうコートだけになる
強風が吹いて空高く舞い上がる

タダシイさんの畑は鳥たちにすっかり食べられてしまう



紙の小鳥
6歳の男の子タトは、誕生日にパパに小鳥を折ってと頼む

「すごく上手だけど、とても悲しそう」







物知りおじさんにいろんな部品をつけてもらうがまだ悲しそう

パパはたくさんの紙の小鳥を折ると
嬉しそうに部屋中を飛びまわる










訳者あとがき
この本が誕生したころ、スペインは国内で戦争をしていた

「スペイン内戦」はスペインの人々の心に大きな傷を残した
ピカソは『ゲルニカ』を描き、ヘミングウェイは『誰がために鐘は鳴る』を書いた

内戦に勝利したフランシスコ・フランコ将軍は
独裁政治をはじめて、死ぬ1975年まで続いた

この時代を生きた子どもたちにとって
灰色のおじさんの物語は、未来に希望を持ったかもしれない


アロンソ:
私は作家として、人々が言いたくても言えないことを書かなければならないと思っている
でも、自分の考えを押し付けるのではなく
読者に自由に味わってほしい




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