メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少女名作シリーズ14 母のつばさ K・D・ウィギン 偕成社

2024-05-12 12:32:46 | 
1980年初版・重版 山本藤枝/編著
山下一徳/カバー図案 西村保史郎/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


夢中になって一気に読めて、何度も涙し、笑顔になる一冊

以前読んだ『黒い目のレベッカ』のウィギンの作品はどれも品があって、温かいため
ほかの作品も探して読んでみたい

母親の深い慈愛のもとで、純粋に成長する子どもたち
小さな村の人々との交流
地に足つけて生活するってこういうことなんだろうなあ

最後に大金が転がり込むことがなくっても、充分幸せな家庭像だ



【内容抜粋メモ】

登場人物
ケリー家
父 海軍大佐

ナンシー 長女
ギルバート 長男
キャスリーン
ピーター 4歳
料理番のエレン、小間使いのジョアンナ

ジュリア 父の弟の娘 13歳
父アラン 病気で臥せっている

アン おば
アディー 海軍大将 父の親友
ポファム

ハミルトン 外交官 黄色い家の持ち主
ハーモン 黄色い家を管理している

ヘンリー・ロード 哲学博士
オリーブ 長女 絵の才能をもつ
シリル 弟



●父の病
海軍大佐の父が病になり、看病のため、母は4人の子どもを置いて長い旅行に出る
2、3週間の予定が1か月に延びて、子どもたちはいい子でいることに疲れてくる







アンおばさんが父の死のしらせを持ってきて
母が帰ってきた時に泣いて出迎えたらさらに苦しめるだけだと諫める
(そんなこと言っても、幼い子どもたちの悲しみを抑えることはできないよ

母に同行したアディーおじさんは父の親友で
子どもたちが小さい時から親しくしている









ケリー家の収入は、月30ドルの恩給だけになる
節約のために小間使いのジョアンナに暇をやる


●いとこのジュリア
父の弟のアランおじさんは病気で、一緒に仕事をしていたマンソンさんの手紙で
山に転地して静養することになったから、一人娘のジュリアを預かってほしいとのこと

ナンシー:ジュリアって見栄ぼうで、気取り屋で、うぬぼれの強い子よね
パーム・ビーチにいるグラディスというお金持ちの友だちをいつも引き合いに出すのがクセ

それでも5歳で母を亡くし、どこにも行くあてのないことに同情して預かることにする


●黄色い屋根の家
ナンシーはいいアイデアを思いついて母に相談する

5年前、父が元気な頃、メイン州の小さな村ビューラにある家がとても気に入って
お金持ちならすぐに買いたいと言い、家族も大好きになり
ナンシーは記念にバラの苗を植えたことを思い出し、そこで暮らそうと提案

まだ空き家なら貸してもらうようギルバートを使いを出す







父の知人のフィーラー大佐は孫のように迎え入れ
空き家の主人で外交官のハミルトンさんはヨーロッパにいるから
家を管理しているハーモン氏と交渉して、年60ドルという安さで借りることができる


●引っ越し
引っ越した当日、みんながニガテなアンおばさんがジュリアを連れてやって来る
アンおばさんは、村や家が不便で下品だと散々悪口を言って出て行く







ジュリアもビューラはつまらない田舎の村で、ケリー家の貧しさを指摘し
家族にとけこまず、家事も手伝わない







母:うちのような大家内では、“相手を生かして、自分も生きる”ってことを心がけなければならないの

アンおばさんが井戸から台所に水を引くようにと300ドル送ってくれる
気づかないところまで心配してくれて、本根はいい人だと分かる

おばの言う通り、1年で追い出されないよう、5年契約を結ぶことも家族で相談する

ジュリア:
こんな所、仮りの住まいでしょ
社交界に出る時は、ニューヨークやワシントンなどの都会でないと

ナンシー:
ビューラは私たちの村だわ
大人の仲間入りするのも、ビューラの社交界でたくさんよ

ギルバート:
ビューラ中学みたいなくだらない所を卒業しても
なんの肩書にもならない

母:
ここの暮らしを仮りの住まいと考えてほしくない
大切なのは自分の力で船をこぐことなのよ
誰かが動かしてくれると思っては大間違い
私たちはここをできるだけ美しい楽しい家庭にしなければいけないの









●秘密の手紙
母は家の契約延長についてハミルトンさんに手紙を書いてほしいとハーモンさんに頼む
ナンシーは母に内緒で、ハミルトン氏に長い手紙を書く

この家との出会い、たまらなく好きなこと
一家の写真と、バラを世話している自分の写真も添える
ナンシー:着色写真ですから、よくおわかりになるでしょう







玄関広間に貼ろうと思っている壁紙の一部も添える


●口あらそい
村のポファムさんに大工仕事を任せると、とても話し好きで家族は笑いに包まれる

ポファム:
どっちみち、わしらにとっちゃ、あの世へ行くまでに
この世はひとつしかねえんだから、渋い顔して過ごすより
笑って暮らすほうがよかろうと思うんでさ
命をもらったからには、それで、自分のできるだけのことをするわけなんで









●さびしい子たち
ポファムさんの話で、村はずれに建つ灰色の家に住む子どもと博士を知る
動物学の教師をしていた哲学博士ヘンリー・ロード氏は妻を亡くして4年

ポファム:
奥さんを構いつけず、震えあがらせて死なせてしまった
自分の勉強だけが大切で、子どもたちを家に閉じこめている

オリーブは絵を描くのが好きで、主に動物を描いている
弟のシリルがもう少し大きくなったら、遠い所で一緒に住もうと誓う







ナンシーはスイレンの池でオリーブと出会い、友だちになってほしいと頼むと
オリーブも酷い父のことを打ち明ける






父の誕生日に、家族でごちそうと贈り物を用意して
部屋をノックすると、書き物をしている時は邪魔するなと追い返す

どうしてあんな人が父親なのかと母に泣いて訴えると
母は長い間患っていた心臓の病気が悪化して
その後亡くなったのを自分のせいにしている

ナンシー:
私の母は心の中にいくつも部屋を持っていて
そこでいくつもの傷ついた心を温めてあげられる人なの
あなたたちのこともけして捨ててはおかないわ

オリーブとシリスは黄色い家に出入りするうちに少しずつ元気を取り戻す
ロード氏はケリー夫人を村で見かけて、ああいう立派な婦人の家庭なら大丈夫だと考える


●とけゆく氷
キャスリーンはジュリアとケンカした勢いで
アランおじがうちの大金を使い果たしたせいで貧しいのだと責めてしまう

キャスリーン:ごめんなさい 許してもらうためなら、体のどこかを切って血を出してもいいわ
ジュリア:私は父もいないし、この家のお客さまですもの

母:
あなたは特別待遇のお客さまではなくて、家族のひとりです
うちの子どもたちには、永久にお父さんがいないのですよ
正直に言って、私はあなたを守るために、いつもうちの子どもたちを厳しくしています
もう13歳になったのだから、誰からも可愛がられるためにはどうしたらいいかぐらい考えないといけません
今のとろこ、誰もあなたを好きだという人はいません

キャスリーンが必死に握手を求めると、ジュリアはその手にキスをする
ジュリアは今までの私がどんなに悪かったかと気づき、和解する








●素晴らしいニュース
ハミルトン氏からナンシー宛てに手紙が来る

手紙:
子どもの頃に数年、黄色い家で暮らし、母が病死して
空き家のまま30年も経つため、ずっと住んでくれても構わない

母の肖像画を寝室に飾って、好きだったヒナギクとキンポウゲの花を
母の誕生日に供えてくれることが家賃の代わり

中国にいる息子のトムだけが家に愛着があり
見知らぬ人に貸すのを嫌がっていたため、ナンシーの写真を同封して送った
優しいトムは感激したに違いない


●絵のおくりもの
秋の実りを神に感謝するお祭りの日、ケリー家は知人を招いた

オリーブは、ナンシーの肖像画をプレゼントすると
それだけの絵の才能があれば、ボストンの専門家に見てもらい
先生に習ったほうがいいとすすめる

母は絵を持って、ロード氏を訪ねる
いつもなら門前払いするところが、なぜかケリー夫人だけは怒れないロード氏







母:
女は子どもを見れば、その子に何が一番必要か分かります
オリーブは素晴らしい絵の天才を持っている

ロード氏:若い女が芸術だ、仕事だといきりたつのを私は好みません

母:
オリーブの才能はたぶんあなたから授かったと考えます
動物ばかり描くのは、あなたが何年も動物の研究に打ち込んでいるから
どうぞ私の目を信用して、願いをお聞き届けください と涙ながらに頼む








●光はまねく
その夜、黄色い家には大勢が集まり、詩を朗読したり、歌ったりしてにぎやか
子どもを22時に迎えに来るよう言われたロード氏は窓から見て
2人の子がいつものように怯えていないどころか、生き生きしているのに驚く








●2度目の春
グラディス家でジュリアを引き取ると言ってくるが、ジュリアはこの家に置いてくれと頼む
母:あなたはもうずっと前から私の可愛いひなどりですとも







アンおばさんが急に来て、3人の娘たちと母に新しいドレスをプレゼントする

母に自分の近くで住まないかと誘うが断わられ
1人で退屈しのぎに外国旅行へ行くと言って去る







夏休みになると、子どもたちはそれぞれ家の生活費のために動きだす
ナンシーは小説を書いて出版社に送り、ギルバートは郵便配達
キャスリーンとジュリアは納屋で夏季学校を開く

オリーブの17歳の誕生日に、亡き母の遺産を毎月50ドルずつもらえることになり
ボストンで絵の勉強がしたいと父に頼む

ロード氏は南アメリカへ行って、探検隊に加わるよう誘われているから
ケリー家でシリルを預かってもらおうと思う








●7月4日の客
ナンシーらはハミルトン氏との約束を守って、ヒナギクとキンポウゲを肖像に供える

ハミルトン氏はワシントンに転勤することになり、ケリー家を訪ねて
晩御飯を楽しく一緒に過ごす

息子のトムも中国から帰国するから、また一家で暮らせると話すが
ケリー家は家を取られるのではないかと不安になる








●パーティーの日
母はナンシーの17歳の誕生日にビューラ村で社交界デビューさせるために招待状を送る
ポファムさんは納屋をすっかりキレイに改装してくれる

アディーおじさんがはるばる中国から来て
ケリー家が父の死を乗り越えて幸せに暮らしているのを見て涙する

ダンスがはじまると、ロード氏も加わり、ナンシーと踊る









ロード氏:シリルを預かることで、もう一度意見を伺いたい

母:
2人がもう少し大きくなるまでお待ちなさい
でないと、父親なしですますことを覚えてしまいます
それより悪いのは、あなた自身、子どもなしでいられるようになることです

ロード氏:では南アメリカ行きは断りましょう



●最後のバラ
トムが都会風の夜会服を着て現れる
ナンシーが家を取られるのではないかと心配していると知って
そんなことにはならないと約束する

ナンシーはバラの最後の1輪をさしだす







その夜、ベッドでナンシーはトムのことを思い出す

トム:
僕はこのバラにとても憧れていたんです
このバラは植えた少女にそっくりだ

ナンシー:これを大人の気持ちっていうのかしら

その後、アンおばさんが外国旅行の途中で突然、心臓麻痺で亡くなり
毎月5000ドルの収入をケリー家の子どもとジュリアにやり
遺産をぜんぶ母親にやるという書き置きが残してあった



あとがき

ケート・ダグラス・ウィギン
1856年 フィラデルフィア生まれ
法律家の父はケートが3歳の時に亡くなり、母が再婚し、そこで育った

22歳でサンフランシスコにアメリカ西部で最初の私立幼稚園をつくり
妹ノラ・スミスと協力して、保母養成所も運営

25歳で結婚 幼稚園の経営を助けるために自費出版
結婚9年目で夫が死去
67歳で亡くなるまで数多くの作品を書いた

本作の原題は『ケリーかあさんのひなどりたち』

その他
『サニーブルック農場のレベッカ』
『バード家のクリスマス・キャロル』

まれにみるユーモラスな筆致で、さまざまな人物を登場させ
子どもたちが不幸な環境を明るく幸せに変えるありさまをひたむきに書いた

コメント

サウス・オブ・ザ・サークル:過去と現在、愛する人への想いと記憶@ゲーム実況 トイレットペーパーさん

2024-05-12 11:12:33 | ゲーム
[完結]South of the Circle / サウス・オブ・ザ・サークル:過去と現在、愛する人への想いと記憶@トイレットペーパーさん
“冷戦の政治的紛争に巻き込まれたケンブリッジ大学の2人の教員
ピーターとクララのラブストーリーを描くナラティブなアドベンチャーゲーム”

こういう温かみのある絵は好み
冷戦の複雑なセリフは半分も分からなかったけど


【内容抜粋メモ】(ネタバレ注意

1964年 南極
セスナが墜落して、パイロットのフロイドは足を骨折
主人公ピーターは助けを求めて、極寒の中を歩きだす







記憶:
列車の中で女性教師クララと出会い、お互いの講義を聞く
過去の記憶と交互に展開していく












ようやく基地に着いたのに、誰もいない
無線でフロイドに連絡すると、基地は攻撃を受けた可能性があるから
すぐに出て、クルマで他の助けを呼びに行ってくれと言われる








記憶:
上司に論文の完成をせっつかれる
ピーターの将来が決まる大事なターニングポイント
雲について?の論文なのに、次第に冷戦の複雑な事情が絡んでくる

クララの友人モリーが原爆反対?のデモをしている
2人もぜひ加わるよう熱く語る









友人2人もピーターが論文で昇進できるはずだとせっつく






クララに論文が行き詰っていることを相談すると協力すると約束
実家のエディンバラは天候のデータをとるにも最適

兄は18歳の時にオートバイ事故で亡くなっていて
コテージには兄の思い出が詰まっていることも話す








ソ連の基地に着くが、ここもからっぽ






記憶:
父母がピーターのことで大ゲンカしているのが寝室まで聞こえる
父はピーターに「男らしくなれ」と強制する
(なるほど、こういう背景も伏線か








父:
お前はあの子を甘やかしすぎるんだ それが問題なんだよ!
俺も学んだ 父に教えられてな
そして今は俺が父親として教えてやる番なんだ



クララはコテージで兄のことを思い出す
父は兄の教育に熱心だったのに、兄が急死すると、その情熱を自分に向けた
兄の事故死はある意味、自分に有利だったと考えていることに良心の呵責を感じている








ピーターはセスナまで戻ると言うが、フロイドは止める
フロイド:お前がやらないと、俺たちは死ぬんだよ!


記憶:
モリーは大学構内で拘束された
ソ連共産党とつながりがあると噂されている

ピーターとクララは放射能がどこから漏れているか調査する
2人はどんどん親密になる








基地にも放射能のマークがあるのを見つける






記憶:
父はボートの漕ぎ方を教えるが、もたつくピーターにいら立つ
父:いつかお前が自分の力で何かができるということを証明しなきゃならない時が来る








クララは映画で男性がヒーローで、女性は料理番くらいな扱いなことに憤慨する

クララ:
女は女権運動の時代から馬の下に身を投げ出すようにして主張を訴えてきた
そのための戦いを始めてくれる男が必要なのよ

モリーの友人であるクララも危うい立場となり
上司はピーターに論文はクララとの共作でなく
助手として名前も省略するよう忠告する











ようやく見つけた船は出てしまった後





クルマを見つけても行くあてもなく絶望していると
フロイドがフレアガンを撃ちあげているのが見えて、助けに向かう

セスナに近づくと酔ったフロイドが銃で撃ち
クルマのエンジンに当たって動かなくなる







やっと無線が通じて、座標を教えると、放射能漏れが発生していて
セスナもその警告範囲内にあると言うが、とにかく救助に向かうと約束する

フロイド:俺はフレアガンなんて撃っていないぞ

銃を持って、近づくと、スノーモービルの燃料が切れて助けを求めるロシア人がいる
ピーターは疲労困憊して倒れ、ロシア人はピーターをセスナまで運ぶ









ロシア人:
助けなど来ない! 俺たちは移動しなきゃならん!
俺はエンジニアだ エンジンなら修理できるかもしれない
ここに核爆弾を投下するカウントダウンをしているんだ

ロシア人が調べると、燃料タンクに穴が開いていて絶望する3人
ロシア人:秘密にはもうウンザリだ ただ家に帰りたいだけなんだよ








ピーターはさっき行ったイギリス基地に燃料があったと思い出し
最後の力を振り絞って取りに行く


記憶:
急にクララとケンカしたシーン
クララ:あなたが何を考えてるのか分からなくなっちゃった








燃料を入れて、セスナが飛び立つ
あまり釈然としないエンディングだったな



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