1972年初版 1982年16刷 谷村まち子/編著
山下一徳/カバー図案 田村耕介/カバー絵・口絵・挿絵
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
娘が消えたのが5歳で、見つかったのが9歳?として
背丈も顔もけっこう変わると思うけれども
母親は子どもをすぐに見分けられるものだろうか?
貧しく、厳しい生活にもまれて、雰囲気も変わるだろうし
【内容抜粋メモ】
登場人物
ケンダル夫人
マーガレット
ボビー NYの裏町で暮らす少年
マックギン夫人 ボビーの母
マートン夫人 マックギン夫人の母
パッティー
スペンサー先生 若い医師
●母とむすめ
NYの中央ステーションに北の地方から来た汽車が着く
ケンダル夫人と一人娘のマーガレットが婦人待合室に入ると
知り合いのダレルに偶然会う
ケンダル夫人:
ちょっとそこまで買い物に行きたいので
大通りを横切るのは危ないから、マーガレットを見ていてほしい
軍人の娘らしく、おとなしく待っててね
父はマーガレットが赤ん坊の時に亡くなったが
小さいマーガレットが泣くと
「軍人の娘は強いから泣かないものだよ」と言ってきかせていた
ケンダル夫人は買い物を終えて、急いで道を横切ろうとして
馬車に轢かれてしまい救急車で運ばれていく
貧しい少年がハンドバッグを拾って盗んでいってしまう
●迷子の少女
ダレルは友だちが来たので、マーガレットに待合室で待つよう言って行ってしまう(それはあんまりだ・・・
何時間待っても母は来ない
心配して声をかけてくれる人があっても「ママを待っているの」と言うと行ってしまう
●そばかすの少年
母を探して歩いて、待合室の場所も分からなくなり
とうとう泣き出したマーガレットに声をかけたのはボビーという少年
さっき轢かれた女性の子どもだと分かり、もう死んだと思って同情し
待合室に母への手紙を置いて、家に連れて帰る
●屋根裏部屋
ボビーの家は貧しいが、事情を話すと、マックギン夫人は同情してパンとミルクを出す
自宅の住所を聞いても分からず、家に大きな石のライオンがあると答えるマーガレット
寝る前にお祈りをする姿を見て、18歳の時、農場の雇い人のマックギンと駆け落ちしたことを思い出し
なんて親不孝だったんだろう、と泣くマックギン夫人
マックギンは毎日酔って帰り、マーガレットの事情を聞くと着ているものを売ってしまう
マックギン:
この子の立派な服や靴は食費としてもらおうじゃないか
世の中はそんなに甘いもんじゃないってことが、もうじき分かるだろうよ
夫人は亡くなった娘のお古を着せてあげる
マックギンはサリバンという男にマーガレットを預けて働かせる
●ボタンつけの仕事
サリバンは近所の屋根裏部屋に住み、妻は病気で寝たきり
7人の子どもたちにボタンつけの仕事をさせている
マーガレットは指をケガして何度も失敗しながら、だんだん慣れてくる
●けがをした母
ケンダル夫人は1か月も意識不明で、気づいた時はマーガレットを置いてきたことに絶望し
NY市の警察に探してもらうが、ダレルに聞いても分からないまま
退院するとすぐ自分でも探し、待合室の係の女性が覚えていて手紙が置いてあったと渡す
NYの孤児院、託児所など残らず探しても見つからなず
いったん落ち着いて考えるために自宅に帰る
●若いお医者さん
2年後、ハウトンスビルに来た若い医師スペンサーは
「大きなお屋敷」と呼ばれる家に来る
見の周りの世話をするバレット夫婦のほかは誰も客を呼ばず
ずっと病気で心配して医師を呼んだ
ケンダル夫人は薄暗い部屋に寝て、死んだように暮らしている
数日後、用事でNYに行くと、待合室にケンダル夫人が座っていて驚いて声をかける
スペンサー:
人間はだれも自分一人で生きているのではありません
良いにつけ、悪いにつけ、お互いにどこかでつながりあっていると思うのです
ケンダル夫人:
子どもが死んでもお墓へ行って泣くことができますが
私には泣くお墓さえないのです
このイスはマーガレットのお墓なのです
1週間後、スペンサーはケンダル夫人を訪ね
丘の上に住むマートン夫人について話す
娘が18歳の時、農場の雇い人と一緒に家出して以来、連絡がない
マートン夫人は病気で寝たきりで、自分の苦しみ、悲しみを分かってくれるのは
ケンダル夫人しかいないと言って会いたがっていることを伝える
ケンダル夫人はマートン夫人を訪ねて、生まれて初めて貧しい惨めな生活を見て驚く
それから寂しい老夫人の世話をして、マックギン夫人を探す
2か月後、マックギン夫人から手紙が届く
夫が亡くなり、自分も病気で、田舎の家と母が恋しくてならない
3年前、道で泣いていた青い目の少女をボビーが連れて帰り
寝る前のお祈りを聞いてから、幼い頃を思い出して・・・
それはマーガレットだと叫び、スペンサーとともにNYへ行く
屋根裏部屋のマックギン夫人を訪ねると
マーガレットは1週間で逃げだしてしまったと聞いてショックのあまり気を失う
●つらい袋はり
酔っぱらって暴れるマックギンに震えあがって逃げたまま道が分からなくなったマーガレットは
サリバンに出会い「うちの子になるだろう?」と言われて家に連れていかれた
それ以来、給料も払われず、マックギンに見つからないよう家から出してもらえない
食事は肉きれと、ひからびたパンだけで、マックギンより貧しい
マーガレットはほかの子どもと食べ物をめぐってつかみ合いのケンカをするようになる
サリバンはマーガレットの身内か警察がいつか探しに来るのではないかと怯え
いとこのトム・サウニーにマーガレットを譲ってしまう
サウニーの家の子どもたちは何千枚という袋をはっている
マーガレット(この地下室は、サリバンの仕事場よりもっと悪いわ
3度目にようやく脱出に成功し、老人の落とし物を拾って、銀貨を1枚もらう
マーガレット:
サウニーの地下室では、この半分にも足りないお金を稼ぐのに
千枚の袋を貼らなくてはならなかったのに
世の中ってなんて面白いんでしょう
焼きたてのパンを5つ買って、味わって食べる
波止場の荷物の間で眠っていると、10歳くらいの少女パッティーから声をかけられる
●家のない少女たち
足の悪いアラベラとクララベラという双子の3人きょうだいに
ぶどうパンを分けてあげると、裏町の仲間に入れてあげると言われる
4人の母は亡く、父は家出してしまったため
ビルの地下室の一角に住み、食べるために
物乞いやかっぱらい、近所のお手伝いをして
稼いだお金をスズのコップに入れ、なんでも平等に分けている姉妹
同じ地下室にはフェーレン夫人と4人の子どもが造花をつくって細々と暮らしている
マーガレットはマギーと呼ばれて、造花づくりを教えてもらうが
12ダース作ってもほんのわずかのお金にしかならない
●裏町の女王
パッティーは銀貨を拾って見せたため
マギー(いくら働いても、ほんの少ししかお金にならない
パッティーみたいに人の落としたお金を拾えばラクに儲かるんだわ
マギーは町でパンやリンゴを盗んだり、お金持ちからせびったりして
愉快な冒険の遊びのような気持ちになる
8歳になったマギーは、金髪の巻き毛を短く切られ
上品なふるまいも忘れ、生意気で乱暴な「裏町の女王」と呼ばれるようになる
マックギン夫人とボビーは無事に故郷のハウトンスビルの自宅に帰り
マートン夫人の病気も快方に向かう
ケンダル夫人はまたNYへ行き、裏通りを隅々まで探し回り
地下室でフェーレン夫人にも尋ねる
フェーレン夫人:パッティーのきょうだいと金髪の女の子は親類じゃない
ケンダル夫人:その子ははにかみ屋で、やさしい子でしょうか
フェーレン夫人:「裏町の女王」といったら、この辺で怖れられていますよ
ケンダル夫人はガッカリして、子どもたちに渡してほしいと5枚の銀貨を置いていく
●すばらしいニュース
ケイト:
私、マウント・ローンという所へ行ってきたの
木や草がいっぱいあって、3度3度ゴハンがいっぱい食べられるの
夜は真っ白いシーツのかかったベッドで眠れていい気持ち
銀貨3枚あれば10日間もいられるのよ
マギー:
パッティーきょうだいと4人で12枚はムリだけど
10日を4人で分ければいい
4人は節約を始める
フェーレン夫人は5枚の銀貨から家賃を引いて、1枚だけマギーに渡す
マギー:その奥さんは、私に何かしてもらいたいんでしょう?
フェーレン夫人:あんたが青い目をしているからあげるって言ってたわ
やっとのことで銀貨3枚をためて
マギーは市の伝道者にマウント・ローンへ行きたいと言って渡すと
伝道者:
私たちは子どもたちからはけしてお金をとりません
親切な方たちが出してくれるんですよ
知らない人たちが10日も遊ぶお金を出すなんて怪しいと思うマギー
この頃にはすっかり大人を信用しなくなっていた
●子どもの天国
マウント・ローンへ行く前に聖書館で体格検査をすると聞いて
本当は騙して、ひどい仕事をやらされるのではないかと疑うマギー
汽車に乗ると、遠い昔、乗った記憶があるように思える
マウント・ローンでは食堂で素晴らしいご馳走をお腹いっぱい食べて
白いベッドに寝ていると、若い女の先生が来て
明日も同じようにゴハンが食べられるのに
ポケットにパンとビスケットを入れているマギーをフシギに思う
額におやすみのキスをされると、疑いも逆らう心も消える
寝る前はみんなでお祈りをする
●あたらしいマギー
マギーがすっかり変わったことに驚く先生たち
態度や言葉遣いが上品なため、両親は身分のいい人なのではと推測する
楽しかった10日間が終わり、ぼろぼろの服は青と白の縞模様のワンピースに代わる
マギーは貯めた銀貨3枚は伝道者に渡して
マウント・ローンにほかの子も行けるようにしようと提案
茶色の紙に包んで、送り主の名もなしにドアノブにくくりつける
●みちびく心
ケンダル夫人はまた病気が重くなり、スペンサーはNYの中央ステーションを通りかかると
元気な子どもたちを見て、マウント・ローンの話を聞き
3枚の銀貨のこともケンダル夫人に話す
ケンダル夫人:マーガレットもどこかの裏町でその日の食べ物にも困っているかもしれない
ケンダル夫人は大金を伝道者に送り、マーガレットの5歳の時の写真をベッドに飾って欲しいと頼む
●母のプレゼント
マウント・ローンの先生:
あなたがたは、ひとすじの太陽の光になって、周りを明るくすることができるのですよ
という言葉を思い出し、マギーはみんなで讃美歌を歌おうと提案
♪神は大いなるかな 神は善なるかな
まもなく近所の子どもを集めてコーラス隊をつくり
夕方、讃美歌を歌いながらお祈りをすると
忙しい母親たちも手を止めて聞き入るようになる
子どもたちは物乞いや盗みを止めたため、さらに貧しくなる
マギー:正直にしていると、食べられなくなるのかしら
市の伝道者は少女の行いに気づき、地下室の少女たちに
食料品や、冬支度などたくさんのプレゼントが贈られ
学校にも通うようになる
●見えない糸
スペンサーはケンダル夫人に代わってマーガレットを探すようになり
改めてマックギン夫人から聞くと、サリバンのもとでツライ仕事をしていたことを知り
サリバンを訪ねて、お金を渡して、ようやくトムのもとにやられたと知るが
トム家族はもういない
マーガレットが2回目にマウント・ローンへ行った最後の朝
ふと見ると、少女の写真に「マーガレット・ケンダルを記念して」と書いてある
小さい頃からずっと持っていたハンカチに同じ名前が刺繍してあり
自分の名前だと先生に話すと、スペンサー宛てに手紙が書かれ
スペンサーは地下室でマーガレットと再会する
●めぐりあい
スペンサーはマーガレットに一流の店で服を買って着せて、汽車に乗る
マーガレット:
お母さんがとてもお金持ちなら、フェーレンさんの子どもたちも
マウント・ローンに行けるし、みんなをウチに呼んでご馳走してあげられる
万一のために、マックギン夫人とボビーに会わせると、もう記憶にない
スペンサーはケンダル夫人を訪ね、身内のない少女を預かってほしいと頼む
ケンダル夫人:あの子の部屋は誰にも入れずにそのままにしている
さらに詳しく話すと、できることはなんでもすると約束する
マーガレットを連れて来ると、すぐにわが子と分かり抱きしめる
スペンサー:
私は人間の体の病気についてはよく知っていたつもりだったが
心のことはまるきり知らなかった
マーガレットさんを探すお手伝いをして、だいぶ分かるようになった
母の愛がどれだけ尊く、深いか感じた
これからはもっと立派な医者になれると信じています
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解説
エレナ・ポーター
1868年 ニューハンプシャー州生まれ 1920年死去
『少女バレアナ』
『スウ姉さん』
ケンダル夫人ははじめ、世間を知らない平凡な上流婦人で
わが子だけに盲目的な母親に過ぎなかったが
愛情を広げ、恵まれない貧しい子どもたちに目を向けるようになる
個人の幸福から社会全体の幸福に発展していることが分かる