1980年初版・重版 山室静/編著 山下一徳/カバー図案 斎藤寿夫/カバー絵・口絵・挿絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
邦題がジプシーとなっているから、そっちに引っ張られてしまったが
最後まで少女が何者で、どこから来たのかは分からないフシギな話だった
最初におばあさんが話す妖精が伏線になってそうな気もする
別れ際に「大きな母さんは死んだ」というのも、なにを指すのか?
最後にとても短い短編が入っていて
子どもを甘やかして育てると、とんでもないことになるみたいな教訓話
育て方もあるけど、持って生まれた性質や運命もあると思うけど
【内容抜粋メモ】
■ジプシーの少女
登場人物
父母、祖母
エンマ 長女
クレメンティア 次女
ジギスムント 長男
●丘のおやしき
オーストリアの高原地方に一軒の立派なお屋敷があり
主人夫婦、おばあさん、2人の少女が暮らしている
春から秋までいて、冬になると、妻の故郷のウィーンに行き
芝居や音楽会に行ったりして、また春に戻る
姉妹は祖母とともに「ハシバミ山」でハシバミを採るのをとても楽しみにしている
祖母はいつもいろんなお話をしてくれる
祖母:
カーレスベルクのお屋敷にある時、小人が来て、ヤギの番をする代わりに
岩に白いパンをのせてくれと言う
カーレスベルクの人は喜んで、お礼に赤い上着をつくって岩にのせておくと
小人は小躍りして喜び、それ以降姿を見せなくなった
ハシバミはくるみ割り人形で殻を割って食べる
(バレエで有名だけど、実際そういう道具があるんだな/驚
その後、ジギスムントという男の子が生まれ、4人で山に登る
●山の少女
どこからともなく少女が現れ、声をかけると逃げてしまう
そのうち、おばあさんの話をいっしょに聞くようになり
子どもたちは少女が好きになる
●すさまじいあらし
いつものように木の根に座って、おばあさんが話をしていると急に雲行きが怪しくなる
山の少女はたきぎの束で簡易の小屋をつくると同時に大きな雹が降ってくる
おばあさんと子どもたちは小屋の中で大嵐を過ごしてずぶ濡れになる
嵐が去ると、森の木々はすっかり幹だけになっている
小川は水かさが増して渡れずにいると、山の少女が浅い場所を教えてくれ
小さいジギスムントを抱いて渡る
ようやく屋敷に戻ると、父が下男とともに捜索隊を出すところだった
母も泣いて無事を喜び、山の少女にお礼を言おうと思うとまた逃げてしまう
庭も温室もめちゃめちゃに壊れたため、父は下男とともに修繕し
山の土地を少し買って小屋を建てる
その間、牧師や猟師らに山の少女について聞くが誰も知らない
父が山に入る時は少女は出てこない
おばあさんと子どもたちで行くと、また山の少女が来て
温室まで来るようになるが、そこで逃げ帰ってしまう
冬が来て、名残惜しみながら、家族はウィーンへ発つ
春がきて、屋敷に戻り、ハシバミ山に行き、山の少女と再会を喜び合う
家の中でいっしょに遊ぶようになり、山に建てた小屋でも遊ぶ
母親は少女と同じ髪型と服装をしてお菓子を配り
少女に服をつくってあげる
子どもたちといっしょに家庭教師のもとで学ぶようになる
●火事
父が旅に出ている時、納屋から火事が出て、馬小屋、車置き場が火の海になる
母は金庫を子どもたちに持たせて、庭のはずれに避難しているよう言い
馬、牛、犬を出したり、母屋の屋根にうつった火を払う指示をする
ジギスムントがいないことに気づき、祖母は家を出る際
泥棒が入るといけないと思ってカギをかけたという
カギが見つからず、はしごをかけて入ろうとした男は熱気で倒れてしまう
その時、山の少女が現れ、ジギスムントを抱いて、はしごをつたって助ける
召使いの部屋も焼けたが、母屋は助かり
家族は命の恩人の少女に何度もお礼を言う
父が火事騒ぎを見つけて急いで帰ってきて、家を修繕する
家族は例年より早くウィーンに行き、山の少女のために美しい布をプレゼントする
少女は夜も泊まっていくようになり、親がなにも言ってこないため
そのまま引き取ろうと相談する父母
少女はウィーンには行かず、冬はおばあさんと屋敷に残った
●消えた少女
子どもたちは成長し、近くの町や村から友だちが訪ねるようになると
山の少女は病気のようになり、悲しそうに山を見つめるようになる
母:
私たちはあなたを心から愛しています
それともあなたには、ほかに父母があるの?
あるなら会わせてちょうだい
少女:ストーレ・ムーレ(大きな母の意味)は死にました
母:
それなら、いつまでも私たちの所にいらっしゃい
私たちの持っているものを、みんなあなたに分けてあげますよ
少女は激しく泣いて、砂の斜面をのぼり、それきり戻らなかった
長い年月が経ち、祖母は亡くなり、父も亡くなり
娘たちは遠くへお嫁に行ってしまったが、ジギスムントは屋敷に残り
ハシバミ山に登ると、山の少女を思い出して幸福に恵まれるよう祈る
■ふたりのおばあさん
登場人物
ルドミラ 息子25歳 孫オットー
クレッセンティア 娘 20歳 孫クララ
●仲直り
オーストリアの高原地方に2人の未亡人が住んでいた
1人はルドミラ、もう1人はクレッセンティア
2人とも40代で、金持ちで、1人ずつ子どもがいて
それぞれ自分の子のほうが素晴らしいと言い争っていたが
子どもたちは愛し合っていた
親は反対したが、なんとか説得して結婚し
1年後に男の子、2年後には女の子が生まれた
ところが、男の子が2歳の時、若い夫婦は熱病であっけなく死んでしまう
2人の未亡人は、どちらも子どもを引き取ると言い争ったため
神父と近所の人々が、互いに1人ずつ引き取るよう説得する
●兄と妹
ルドミラは男子オットーを引き取り、身の回りの世話をこまめに焼いて育てる
クレッセンティアは女子クララを引き取り、泣いてもそのままにして
自分でできることはやらせるように育てる
ルドミラはクレッセンティアのやり方を見て、厳しすぎると批判するが
クレッセンティア:子どもを甘やかすとだらしなくなります
その後、オットーはとても甘ったれのわがままになり
ルドミラに注意されると、謝って「これからは一生懸命にやります」と空約束をする
クララは先生の言うことを守り、勉強もできて
クレッセンティアはなにも心配がなかった
その後、職業学校に入り、裁縫などを身につける
オットーはやたら無駄遣いをして、ルドミラがお小遣いをやらないと叱ると殴りつける
大工や鍛冶屋などの弟子になっても続かず、酒を飲んで遊び回るようになる
オットーが18歳になる頃、ルドミラはお金を使い果たし
屋敷を売って貧しい生活を強いられる
オットーは山で女性の財布を盗んで逃げて逮捕される
ルドミラは服まで売って、弁償し、毎日の食べ物にも困るようになり
クレッセンティアは同情して、いろいろなものをあげる
オットーが出所すると、クレッセンティアはお金を渡し
遠い国で新たな生活を始めるといいとすすめるが
オットーはその金でピストルを買って自死してしまう(驚
ルドミラは悲しみで病気で亡くなる
クレッセンティアとクララは、オットーの罪ほろぼしに心がけてひっそりと暮らす
悲しみが薄れた頃、立派な家柄の紳士がクララにプロポーズして
結婚し、たくさんの子どもを産み
クレッセンティアをお手本にして育てた
クレッセンティアはクララと夫、その子どもたちに囲まれて
幸せに暮らしてほほ笑みながら亡くなった
■解説
アダルベルト・シュティフター(1805~1868)
オーストリアとチェコスロバキアの国境のボヘミア山地で生まれた
両親はドイツ人
学校の先生をしたり、絵を描いたり、小説を書いた
自然へのこまやかな観察と愛情があふれている
本作の原題は『雲母』
山の少女には名前がついていない
どこから来て、どこへ去ったのかも説明されていない
やさしく書き直した本なので、原作とは趣が違った点がある
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
邦題がジプシーとなっているから、そっちに引っ張られてしまったが
最後まで少女が何者で、どこから来たのかは分からないフシギな話だった
最初におばあさんが話す妖精が伏線になってそうな気もする
別れ際に「大きな母さんは死んだ」というのも、なにを指すのか?
最後にとても短い短編が入っていて
子どもを甘やかして育てると、とんでもないことになるみたいな教訓話
育て方もあるけど、持って生まれた性質や運命もあると思うけど
【内容抜粋メモ】
■ジプシーの少女
登場人物
父母、祖母
エンマ 長女
クレメンティア 次女
ジギスムント 長男
●丘のおやしき
オーストリアの高原地方に一軒の立派なお屋敷があり
主人夫婦、おばあさん、2人の少女が暮らしている
春から秋までいて、冬になると、妻の故郷のウィーンに行き
芝居や音楽会に行ったりして、また春に戻る
姉妹は祖母とともに「ハシバミ山」でハシバミを採るのをとても楽しみにしている
祖母はいつもいろんなお話をしてくれる
祖母:
カーレスベルクのお屋敷にある時、小人が来て、ヤギの番をする代わりに
岩に白いパンをのせてくれと言う
カーレスベルクの人は喜んで、お礼に赤い上着をつくって岩にのせておくと
小人は小躍りして喜び、それ以降姿を見せなくなった
ハシバミはくるみ割り人形で殻を割って食べる
(バレエで有名だけど、実際そういう道具があるんだな/驚
その後、ジギスムントという男の子が生まれ、4人で山に登る
●山の少女
どこからともなく少女が現れ、声をかけると逃げてしまう
そのうち、おばあさんの話をいっしょに聞くようになり
子どもたちは少女が好きになる
●すさまじいあらし
いつものように木の根に座って、おばあさんが話をしていると急に雲行きが怪しくなる
山の少女はたきぎの束で簡易の小屋をつくると同時に大きな雹が降ってくる
おばあさんと子どもたちは小屋の中で大嵐を過ごしてずぶ濡れになる
嵐が去ると、森の木々はすっかり幹だけになっている
小川は水かさが増して渡れずにいると、山の少女が浅い場所を教えてくれ
小さいジギスムントを抱いて渡る
ようやく屋敷に戻ると、父が下男とともに捜索隊を出すところだった
母も泣いて無事を喜び、山の少女にお礼を言おうと思うとまた逃げてしまう
庭も温室もめちゃめちゃに壊れたため、父は下男とともに修繕し
山の土地を少し買って小屋を建てる
その間、牧師や猟師らに山の少女について聞くが誰も知らない
父が山に入る時は少女は出てこない
おばあさんと子どもたちで行くと、また山の少女が来て
温室まで来るようになるが、そこで逃げ帰ってしまう
冬が来て、名残惜しみながら、家族はウィーンへ発つ
春がきて、屋敷に戻り、ハシバミ山に行き、山の少女と再会を喜び合う
家の中でいっしょに遊ぶようになり、山に建てた小屋でも遊ぶ
母親は少女と同じ髪型と服装をしてお菓子を配り
少女に服をつくってあげる
子どもたちといっしょに家庭教師のもとで学ぶようになる
●火事
父が旅に出ている時、納屋から火事が出て、馬小屋、車置き場が火の海になる
母は金庫を子どもたちに持たせて、庭のはずれに避難しているよう言い
馬、牛、犬を出したり、母屋の屋根にうつった火を払う指示をする
ジギスムントがいないことに気づき、祖母は家を出る際
泥棒が入るといけないと思ってカギをかけたという
カギが見つからず、はしごをかけて入ろうとした男は熱気で倒れてしまう
その時、山の少女が現れ、ジギスムントを抱いて、はしごをつたって助ける
召使いの部屋も焼けたが、母屋は助かり
家族は命の恩人の少女に何度もお礼を言う
父が火事騒ぎを見つけて急いで帰ってきて、家を修繕する
家族は例年より早くウィーンに行き、山の少女のために美しい布をプレゼントする
少女は夜も泊まっていくようになり、親がなにも言ってこないため
そのまま引き取ろうと相談する父母
少女はウィーンには行かず、冬はおばあさんと屋敷に残った
●消えた少女
子どもたちは成長し、近くの町や村から友だちが訪ねるようになると
山の少女は病気のようになり、悲しそうに山を見つめるようになる
母:
私たちはあなたを心から愛しています
それともあなたには、ほかに父母があるの?
あるなら会わせてちょうだい
少女:ストーレ・ムーレ(大きな母の意味)は死にました
母:
それなら、いつまでも私たちの所にいらっしゃい
私たちの持っているものを、みんなあなたに分けてあげますよ
少女は激しく泣いて、砂の斜面をのぼり、それきり戻らなかった
長い年月が経ち、祖母は亡くなり、父も亡くなり
娘たちは遠くへお嫁に行ってしまったが、ジギスムントは屋敷に残り
ハシバミ山に登ると、山の少女を思い出して幸福に恵まれるよう祈る
■ふたりのおばあさん
登場人物
ルドミラ 息子25歳 孫オットー
クレッセンティア 娘 20歳 孫クララ
●仲直り
オーストリアの高原地方に2人の未亡人が住んでいた
1人はルドミラ、もう1人はクレッセンティア
2人とも40代で、金持ちで、1人ずつ子どもがいて
それぞれ自分の子のほうが素晴らしいと言い争っていたが
子どもたちは愛し合っていた
親は反対したが、なんとか説得して結婚し
1年後に男の子、2年後には女の子が生まれた
ところが、男の子が2歳の時、若い夫婦は熱病であっけなく死んでしまう
2人の未亡人は、どちらも子どもを引き取ると言い争ったため
神父と近所の人々が、互いに1人ずつ引き取るよう説得する
●兄と妹
ルドミラは男子オットーを引き取り、身の回りの世話をこまめに焼いて育てる
クレッセンティアは女子クララを引き取り、泣いてもそのままにして
自分でできることはやらせるように育てる
ルドミラはクレッセンティアのやり方を見て、厳しすぎると批判するが
クレッセンティア:子どもを甘やかすとだらしなくなります
その後、オットーはとても甘ったれのわがままになり
ルドミラに注意されると、謝って「これからは一生懸命にやります」と空約束をする
クララは先生の言うことを守り、勉強もできて
クレッセンティアはなにも心配がなかった
その後、職業学校に入り、裁縫などを身につける
オットーはやたら無駄遣いをして、ルドミラがお小遣いをやらないと叱ると殴りつける
大工や鍛冶屋などの弟子になっても続かず、酒を飲んで遊び回るようになる
オットーが18歳になる頃、ルドミラはお金を使い果たし
屋敷を売って貧しい生活を強いられる
オットーは山で女性の財布を盗んで逃げて逮捕される
ルドミラは服まで売って、弁償し、毎日の食べ物にも困るようになり
クレッセンティアは同情して、いろいろなものをあげる
オットーが出所すると、クレッセンティアはお金を渡し
遠い国で新たな生活を始めるといいとすすめるが
オットーはその金でピストルを買って自死してしまう(驚
ルドミラは悲しみで病気で亡くなる
クレッセンティアとクララは、オットーの罪ほろぼしに心がけてひっそりと暮らす
悲しみが薄れた頃、立派な家柄の紳士がクララにプロポーズして
結婚し、たくさんの子どもを産み
クレッセンティアをお手本にして育てた
クレッセンティアはクララと夫、その子どもたちに囲まれて
幸せに暮らしてほほ笑みながら亡くなった
■解説
アダルベルト・シュティフター(1805~1868)
オーストリアとチェコスロバキアの国境のボヘミア山地で生まれた
両親はドイツ人
学校の先生をしたり、絵を描いたり、小説を書いた
自然へのこまやかな観察と愛情があふれている
本作の原題は『雲母』
山の少女には名前がついていない
どこから来て、どこへ去ったのかも説明されていない
やさしく書き直した本なので、原作とは趣が違った点がある