1967年初版 1978年 第11刷 木島平治郎 寺島龍一/挿絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
タイトルの軽さから、これまで読んだような
少年が帆船に乗って冒険する物語だと思っていたら
大海原をボートで漂流する深刻な話だった
これほどの目に遭っても、陸で酒を飲んで、ひと暴れする頃にはすっかり飽きて
また海上生活に戻る水夫たちの気持ちは本当に分からないなあ
後半は、なぜニワトリ号を乗り捨てて
水夫らが忽然と消えたのかというミステリーになり
最後は、息を飲むようなレースで読者を引き込む
船の仕組みや名前を把握していれば、さらに深く楽しめる
どんなに大きく、複雑に見えても、乗り物のすべてを理解し
あらゆるケースが頭に詰まっている船長って凄い
海の上では船長を頂点として、きっかりピラミッド型に
身分や役目が決まっているのも興味深い
【内容抜粋メモ】
登場人物
ブラックゴーントレット号
船長 ダンチスバーン 27歳
二等航海士 シリル(クルーザー)・トルズベリー 22歳
航海士 フェアファッド
二等水夫 バウア、クラタバック、ロドマートン、ストラトン、ネイルズワス、タールトン、ケンブル、エジワス
三等水夫 ジェコブスン、エファンズ
料理人 ペロット、マクナブ
見習 チェジロウ、コーツ
ニワトリ号 船長 マイザドン
ナツナ号 船長 エルクストーン
●チャイナ・クリッパー
19世紀中ごろは、帆船の全盛時代
たくさんの帆をかけた快走帆船を“クリッパー”と呼ぶ
イギリス人は中国の茶が大好きで、毎年、茶の季節になると
少しでも早くロンドンに運ぶために競走した
これを“チャイナ・クリッパー”といい
いくら急いでも3か月はかかる
ブラックゴーントレット号も、中国の福州を出た
二等航海士 クルーザー・トルズベリーは絵を描くのが好きで
船長試験にパスしたら、パリの美術学校に入って絵描きになるのが夢
(船長免許だけ取ることに、なにか利点があるのかなあ?
強敵と思われたナツナ号はミン江でなぜか突然止まってしまい
カー・オクブラン号、ミン・アンド・ウィン号、ニワトリ号と争っていたが
貿易風がぱったり止んで、ブラックゴーントレット号も止まってしまう
●無風(カーム)
年若い船長 ダンチスバーンは、競走に勝ちたくて焦り
スコールと無風の間、ほとんど寝ていなかったために周囲に当たり散らしていた
ダンチスバーンは汽船に強い反感を持っていることを話す
ダンチスバーン:
君は石炭船の二等航海士だったんだろう
新しいやり方では、人間は機械の奴隷にならなければならない
それでは、美しさも、人間らしさもない
霧が濃くなり、暴風雨がやって来る
船乗りは寝ていても、船や天候などに気がいっている
●衝突
がちゃん、と大きな音がして起きて、大きな汽船に衝突され
致命的な傷を受けたと分かる
クルーザー:本船は20分ともちません
船長は愛する船とともに沈む覚悟で動かないため
“何かしてほしかったら、自分でしろ”という金言に従いボートを出す準備をさせる
食べ物と飲み水、道具を積み、海へ油を流して波をしずめる
計算すると109リットルの水があることを確かめる
クロノメーター、海図、日誌、六分儀も持って、沈む船から大急ぎで離れる
美しいブラックゴーントレット号は頭から垂直に沈んでいった
●フェイヤル島へ
朝が来て、周りを探すが船長が乗っているはずのもう一隻のボートが見つからない
海に落ちた主席水夫長フランプトンを引き上げるがもう亡くなっていて、水葬する
大型ボートに積んだものはムダになり、頼みの飲み水も3人の水夫がどさくさ紛れに
盗みをしていて45リットル分帳消しになった
ボートに残ったのは12人
いちばん近いフェイヤル島まで1130km
勢いのいい風に乗れば20日間で着く計算
食料と水を数えて、1人1日1枚の半分のパンと干しぶどう3粒ほどしかない
同じ状況を経験したケンブルは、水のことでケンカして殺人が起きた話をして
体に海水をかけるとノドの渇きがおさまること
海水を飲めば死ぬことを注意喚起する
5mほどのボートに体を伸ばすスペースはなく、寝る番が来ても眠れずにイライラが募る
●調査
ぶつかってきた汽船には外国人が乗っていて、衝突後も停まらずに去った
大型ボートは準備ができていたが、船長の命令を待っていた
ストラトン:船長は総員を自分といっしょに沈めたかったんです
クルーザー:
船長はほとんど眠っていなかった
港に着いて、海難審判に出されたら、船長は過労のため必要な命令が出せなかったと言うつもりだ
結果、20人の大切な命が失われた
コーツ:かならず時間は経つ 忌々しいが、時間というやつは経たずにはいないんだ
水夫はボタンを舐めて渇きをガマンする
いざ、頼みの水を飲むと塩水だと分かり愕然とする
みんなの証言を集めて、アボットが体を洗うために使ったと思われる
雨水を合わせて28リットルしかない
水を入れる命令を受けたのに、ブランデーなどを盗んでいた
ならず者のストラトン、エファンズ、ジェコブスン、バウアは恨まれる
ボートの周りには、これから死人が出るのを待つようにサメが泳ぐ
クルーザーはみんなを元気づけるためにテノールで歌う
♪わたしらは巡り会った 人ごみの中だった
そしてあなたが この苦しみのもとだった おっかさん
●船の灯が見えた
「汽船の灯が見えた」と報告が入るが、よく見ると星の光だと分かる
次に見えたのは本物のクリッパーだったが、照明灯をつけても全部湿っている
みんなで助けてと叫ぶが、船は無常に去っていく
海では寝るか働くしかない
マクナブは衝突事故の際、頭を打った痛みを密かに堪えているし
年少のチェジロウは寒さで震えている
医療の心得を持つネイルズワスがマクナブは鎖骨を折っていると診断し
2人に余計に干しぶどうなどを分け与えたために反対者が出る
クルーザー:
成功の1つの大きな原因は、船長が船に適し、船を知っていることだ
みんなでなくともたいていの者をこの難関から切り抜けさせてみせるぞ
3度目に帆が見えたが、クルーザーは戻ってまで追わず、風に乗って進むほうを選ぶ
クルーザー:
現実的っていうのは、むき出しの命よりほかに何もなくて
運命か死に向かって立ち上がる時だよ
また汽船が通り過ぎていく
クルーザー:おまえは岩のようにしっかりとしていなければいけない
●ニワトリ号
クリッパーを見つけて、船員が見えないことに議論する
石炭から火事が出て逃げたのだとか、水が漏れたとか、ひどい伝染病が流行ったとか
それで運よくやって来た船に乗り換えたなどと話す
クルーザーはロドマートンといっしょにニワトリ号に乗り込んで調べる
船底に1mほど水が入っているが、なにかがひっかかって水漏れが止まったのかもしれないと予測
船室には誰一人残っておらず、慌てて船を捨てたことが分かる
貯蔵室には十分な食料、水もある
昇降口からおりてみると、誰かがわざと水が入るように細工した箇所を見つける
2人でふさいで、ボートから水夫らを呼ぶ
●テムズ川へ
クルーザー:
この船を救って国まで持っていけば
1人の分け前は200ポンドになるかもしれない
エファンズらはフェイヤル島へ行く案を推す
タールトン:
郵便船は難破船の者は乗せない
わしゃ難破したことがあるが、アメリカの捕鯨船でまた3年航海することになるぜ
ほかの者はクルーザーの案に乗り、ニワトリ号でテムズ川へ向かう決心をして
乗組員が残していった衣服などを平等に分ける
●マイザドン船長
船底の水を排水すると、ほかに漏れている所はない
なぜ船を置いていったか謎を解くため、船室(ケビン)を調べると
マイザドン船長は、毎日、あらゆる薬剤を飲んでいた売薬狂いだと分かる
クルーザー:船長ってものは、よく変に見えるな 生活が寂しすぎるからなんだ
その他にも、怪しい宗教にハマっていたことが分かる
『ハバカック』(旧約聖書の中のハバクク書に出て来る紀元前のヘブライの予言者の1人)の本が出てきて
セイルマスター、大工、一等航海士のトッドも熱心な信者にひきいれ
宗教のために妻フラターナとも別れた
ネイルズワス:
奴の体はガビンズにまいっちゃって、魂はマッドにまいっていた
とくにこのシナ航路のような航海では、船長は気の休まる間はなし、仲間はなし寂しいですからな
クリッパーの船長の半分は少し気が変になってます
●イギリスの海岸線
天気が悪く、クルーザーは測定器と推測だけで走る
クルーザー:わしはぜひ一着をとるつもりだよ
船は風の精のように走り、青空が出ると、2マイル先にカー・オクブラン号
後ろに“血みどろのビル”船長のフーキェン号が走っている
クルーザーはロンドン&ドーバー引き船会社宛てと
ロンドンで若手弁護士をしている兄宛てに電報を打つ
カー・オクブラン号を抜いて一等に立つが、フーキェン号が追い抜く
ビルはクルーザーをマイザドン船長と思い「予言者ハバカックに愛を捧げる」と叫び
いつものようにブランデーの瓶をピストルで撃つ
そこに突風が吹いて、フーキェン号は失速
水先人がボートで来て「お船が本年最初のチャイナ・クリッパーです」と告げる
●テムズ川
ロンドン&ドーバーの引き船にひかれてテムズ川に入る
群衆が歓呼の声を上げて迎える
ドックの門が閉まったところで、ニワトリ号の優勝が決まる
新聞記者、船主、賭けをした人たちなどが押し寄せる
港長:シナ茶輸送競走優勝船ニワトリ号のためにばんざい三唱!
フェアファッド:われらの船長のためにばんざい三唱!
エジワスが歌いはじめる
♪
おりろ、おい、船をおりろと 船長の声がしたようだった
みんなもう 下船の時だと 船長の声がしたようだった
船を救った礼金が4万ポンド、優勝に対して100ポンド
最初の茶を持ってきたことに対して600ポンドなどなど贈られる
イギリス女王ビクトリアは、クルーザーを招いて冒険談をさせた
クルーザーは後に結婚し、エファンズ、ストラトン以外は全員参列した
その後の調査で、ブラックゴーントレット号に衝突したのは
マレオチス号と分かり、訴訟後、損害賠償、補償金がおりた
マイザドン船長はポンプを壊して、乗組員に船を捨てるよう
予言者ハバカックに命じられたことを明かし
2年監禁後、船の雑貨の販売人となった
■解説 帆船の生活について
帆船には機械がないからほとんど音を出さずに走る
船長や士官は船尾楼にいて、呼び笛をふいて水夫が動く
昔は冷蔵庫もないから塩漬けのものを食べた
生ものを食べないせいで壊血病にかかった
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
タイトルの軽さから、これまで読んだような
少年が帆船に乗って冒険する物語だと思っていたら
大海原をボートで漂流する深刻な話だった
これほどの目に遭っても、陸で酒を飲んで、ひと暴れする頃にはすっかり飽きて
また海上生活に戻る水夫たちの気持ちは本当に分からないなあ
後半は、なぜニワトリ号を乗り捨てて
水夫らが忽然と消えたのかというミステリーになり
最後は、息を飲むようなレースで読者を引き込む
船の仕組みや名前を把握していれば、さらに深く楽しめる
どんなに大きく、複雑に見えても、乗り物のすべてを理解し
あらゆるケースが頭に詰まっている船長って凄い
海の上では船長を頂点として、きっかりピラミッド型に
身分や役目が決まっているのも興味深い
【内容抜粋メモ】
登場人物
ブラックゴーントレット号
船長 ダンチスバーン 27歳
二等航海士 シリル(クルーザー)・トルズベリー 22歳
航海士 フェアファッド
二等水夫 バウア、クラタバック、ロドマートン、ストラトン、ネイルズワス、タールトン、ケンブル、エジワス
三等水夫 ジェコブスン、エファンズ
料理人 ペロット、マクナブ
見習 チェジロウ、コーツ
ニワトリ号 船長 マイザドン
ナツナ号 船長 エルクストーン
●チャイナ・クリッパー
19世紀中ごろは、帆船の全盛時代
たくさんの帆をかけた快走帆船を“クリッパー”と呼ぶ
イギリス人は中国の茶が大好きで、毎年、茶の季節になると
少しでも早くロンドンに運ぶために競走した
これを“チャイナ・クリッパー”といい
いくら急いでも3か月はかかる
ブラックゴーントレット号も、中国の福州を出た
二等航海士 クルーザー・トルズベリーは絵を描くのが好きで
船長試験にパスしたら、パリの美術学校に入って絵描きになるのが夢
(船長免許だけ取ることに、なにか利点があるのかなあ?
強敵と思われたナツナ号はミン江でなぜか突然止まってしまい
カー・オクブラン号、ミン・アンド・ウィン号、ニワトリ号と争っていたが
貿易風がぱったり止んで、ブラックゴーントレット号も止まってしまう
●無風(カーム)
年若い船長 ダンチスバーンは、競走に勝ちたくて焦り
スコールと無風の間、ほとんど寝ていなかったために周囲に当たり散らしていた
ダンチスバーンは汽船に強い反感を持っていることを話す
ダンチスバーン:
君は石炭船の二等航海士だったんだろう
新しいやり方では、人間は機械の奴隷にならなければならない
それでは、美しさも、人間らしさもない
霧が濃くなり、暴風雨がやって来る
船乗りは寝ていても、船や天候などに気がいっている
●衝突
がちゃん、と大きな音がして起きて、大きな汽船に衝突され
致命的な傷を受けたと分かる
クルーザー:本船は20分ともちません
船長は愛する船とともに沈む覚悟で動かないため
“何かしてほしかったら、自分でしろ”という金言に従いボートを出す準備をさせる
食べ物と飲み水、道具を積み、海へ油を流して波をしずめる
計算すると109リットルの水があることを確かめる
クロノメーター、海図、日誌、六分儀も持って、沈む船から大急ぎで離れる
美しいブラックゴーントレット号は頭から垂直に沈んでいった
●フェイヤル島へ
朝が来て、周りを探すが船長が乗っているはずのもう一隻のボートが見つからない
海に落ちた主席水夫長フランプトンを引き上げるがもう亡くなっていて、水葬する
大型ボートに積んだものはムダになり、頼みの飲み水も3人の水夫がどさくさ紛れに
盗みをしていて45リットル分帳消しになった
ボートに残ったのは12人
いちばん近いフェイヤル島まで1130km
勢いのいい風に乗れば20日間で着く計算
食料と水を数えて、1人1日1枚の半分のパンと干しぶどう3粒ほどしかない
同じ状況を経験したケンブルは、水のことでケンカして殺人が起きた話をして
体に海水をかけるとノドの渇きがおさまること
海水を飲めば死ぬことを注意喚起する
5mほどのボートに体を伸ばすスペースはなく、寝る番が来ても眠れずにイライラが募る
●調査
ぶつかってきた汽船には外国人が乗っていて、衝突後も停まらずに去った
大型ボートは準備ができていたが、船長の命令を待っていた
ストラトン:船長は総員を自分といっしょに沈めたかったんです
クルーザー:
船長はほとんど眠っていなかった
港に着いて、海難審判に出されたら、船長は過労のため必要な命令が出せなかったと言うつもりだ
結果、20人の大切な命が失われた
コーツ:かならず時間は経つ 忌々しいが、時間というやつは経たずにはいないんだ
水夫はボタンを舐めて渇きをガマンする
いざ、頼みの水を飲むと塩水だと分かり愕然とする
みんなの証言を集めて、アボットが体を洗うために使ったと思われる
雨水を合わせて28リットルしかない
水を入れる命令を受けたのに、ブランデーなどを盗んでいた
ならず者のストラトン、エファンズ、ジェコブスン、バウアは恨まれる
ボートの周りには、これから死人が出るのを待つようにサメが泳ぐ
クルーザーはみんなを元気づけるためにテノールで歌う
♪わたしらは巡り会った 人ごみの中だった
そしてあなたが この苦しみのもとだった おっかさん
●船の灯が見えた
「汽船の灯が見えた」と報告が入るが、よく見ると星の光だと分かる
次に見えたのは本物のクリッパーだったが、照明灯をつけても全部湿っている
みんなで助けてと叫ぶが、船は無常に去っていく
海では寝るか働くしかない
マクナブは衝突事故の際、頭を打った痛みを密かに堪えているし
年少のチェジロウは寒さで震えている
医療の心得を持つネイルズワスがマクナブは鎖骨を折っていると診断し
2人に余計に干しぶどうなどを分け与えたために反対者が出る
クルーザー:
成功の1つの大きな原因は、船長が船に適し、船を知っていることだ
みんなでなくともたいていの者をこの難関から切り抜けさせてみせるぞ
3度目に帆が見えたが、クルーザーは戻ってまで追わず、風に乗って進むほうを選ぶ
クルーザー:
現実的っていうのは、むき出しの命よりほかに何もなくて
運命か死に向かって立ち上がる時だよ
また汽船が通り過ぎていく
クルーザー:おまえは岩のようにしっかりとしていなければいけない
●ニワトリ号
クリッパーを見つけて、船員が見えないことに議論する
石炭から火事が出て逃げたのだとか、水が漏れたとか、ひどい伝染病が流行ったとか
それで運よくやって来た船に乗り換えたなどと話す
クルーザーはロドマートンといっしょにニワトリ号に乗り込んで調べる
船底に1mほど水が入っているが、なにかがひっかかって水漏れが止まったのかもしれないと予測
船室には誰一人残っておらず、慌てて船を捨てたことが分かる
貯蔵室には十分な食料、水もある
昇降口からおりてみると、誰かがわざと水が入るように細工した箇所を見つける
2人でふさいで、ボートから水夫らを呼ぶ
●テムズ川へ
クルーザー:
この船を救って国まで持っていけば
1人の分け前は200ポンドになるかもしれない
エファンズらはフェイヤル島へ行く案を推す
タールトン:
郵便船は難破船の者は乗せない
わしゃ難破したことがあるが、アメリカの捕鯨船でまた3年航海することになるぜ
ほかの者はクルーザーの案に乗り、ニワトリ号でテムズ川へ向かう決心をして
乗組員が残していった衣服などを平等に分ける
●マイザドン船長
船底の水を排水すると、ほかに漏れている所はない
なぜ船を置いていったか謎を解くため、船室(ケビン)を調べると
マイザドン船長は、毎日、あらゆる薬剤を飲んでいた売薬狂いだと分かる
クルーザー:船長ってものは、よく変に見えるな 生活が寂しすぎるからなんだ
その他にも、怪しい宗教にハマっていたことが分かる
『ハバカック』(旧約聖書の中のハバクク書に出て来る紀元前のヘブライの予言者の1人)の本が出てきて
セイルマスター、大工、一等航海士のトッドも熱心な信者にひきいれ
宗教のために妻フラターナとも別れた
ネイルズワス:
奴の体はガビンズにまいっちゃって、魂はマッドにまいっていた
とくにこのシナ航路のような航海では、船長は気の休まる間はなし、仲間はなし寂しいですからな
クリッパーの船長の半分は少し気が変になってます
●イギリスの海岸線
天気が悪く、クルーザーは測定器と推測だけで走る
クルーザー:わしはぜひ一着をとるつもりだよ
船は風の精のように走り、青空が出ると、2マイル先にカー・オクブラン号
後ろに“血みどろのビル”船長のフーキェン号が走っている
クルーザーはロンドン&ドーバー引き船会社宛てと
ロンドンで若手弁護士をしている兄宛てに電報を打つ
カー・オクブラン号を抜いて一等に立つが、フーキェン号が追い抜く
ビルはクルーザーをマイザドン船長と思い「予言者ハバカックに愛を捧げる」と叫び
いつものようにブランデーの瓶をピストルで撃つ
そこに突風が吹いて、フーキェン号は失速
水先人がボートで来て「お船が本年最初のチャイナ・クリッパーです」と告げる
●テムズ川
ロンドン&ドーバーの引き船にひかれてテムズ川に入る
群衆が歓呼の声を上げて迎える
ドックの門が閉まったところで、ニワトリ号の優勝が決まる
新聞記者、船主、賭けをした人たちなどが押し寄せる
港長:シナ茶輸送競走優勝船ニワトリ号のためにばんざい三唱!
フェアファッド:われらの船長のためにばんざい三唱!
エジワスが歌いはじめる
♪
おりろ、おい、船をおりろと 船長の声がしたようだった
みんなもう 下船の時だと 船長の声がしたようだった
船を救った礼金が4万ポンド、優勝に対して100ポンド
最初の茶を持ってきたことに対して600ポンドなどなど贈られる
イギリス女王ビクトリアは、クルーザーを招いて冒険談をさせた
クルーザーは後に結婚し、エファンズ、ストラトン以外は全員参列した
その後の調査で、ブラックゴーントレット号に衝突したのは
マレオチス号と分かり、訴訟後、損害賠償、補償金がおりた
マイザドン船長はポンプを壊して、乗組員に船を捨てるよう
予言者ハバカックに命じられたことを明かし
2年監禁後、船の雑貨の販売人となった
■解説 帆船の生活について
帆船には機械がないからほとんど音を出さずに走る
船長や士官は船尾楼にいて、呼び笛をふいて水夫が動く
昔は冷蔵庫もないから塩漬けのものを食べた
生ものを食べないせいで壊血病にかかった