メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

アレサ・フランクリンを聴きながら

2005-09-20 11:16:46 | lyrics
アレサ・フランクリンを聴きながら
これからどうしようかと考えている

時雨そぼふる
六月の午下がり

喜悲をシャウトする肉声に酔いながら
なにをするにも
とっかかりが見つからない

道を探そうにも
誰ひとり理解(わか)ってくれない
またスタート地点に逆戻り

濡れた通りを歩いてゆく
いまどきのカップル

ここから抜け出す
スタイルも見つからない


19歳の頃
私は何を目指していたろう
思い出せない

「好きな人はいるの?」

「いつ結婚するの?」

ほかにあるはず
誠実に全身を捧げる何かが
でもそれはなんだろう

10年もの隷属へのささやかなるご褒美
スウィート・テン・ダイアモンドなんていらない

毎日確実に増える
シワをのばすことしか考えない
女にならないためには
あまりになにもかも
中途半端すぎる

この告白を真剣に聞いてくれるひとはいるかしら?

聞き慣れた愚痴
誰も本当のことには
耳を貸したがらない


12歳の頃
なろうと思いさえすれば
どんなこともできると思っていた

できるなら
小さな公園にたつ
1本のポプラになりたい


電線をこえて
赤い屋根の峰をこえて
天空のかなたへ向かって伸びる
そのてっぺんにそよぐ
一枚の大きな葉になれたら

なにもわたしを傷つけることなんか
できやしない

強い風も 雨も 稲妻も
これほどひどく深く
打ちのめしたりはしないだろう

照りつける太陽の絶対力が欲しい
鼻たかだかに下を見下ろす

でも今はお手上げ

輝きが後ろ姿で去っていく
左手を軽く上げて

1/10秒の過去も
決して帰ってはこない






過去作

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予感

2005-09-19 11:21:08 | lyrics
予感

冷たい朝
一番鳥
見えない姿 響く声

冷たい朝
淡い蒼色 朝の色

錆びた香りは 雨の予感
人待ち顔の紫陽花の色

冷たい朝
涙眼の白い月
ついもらい泣きする 湿ったお山


寂しいクルマ 見送るつもりが
驚くのを見て ひそみ笑い
乗り出して見るの やめたげようか


鳥よ
ちょっとだけ その素敵な羽を貸しておくれ

みんなの目の覚めるころには
息をきらした ひいやり肌のまま
ひっそりと窓におりるから


冷たい朝
一度きりの おはよう





1987.4.17 国語の授業にて

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タンポポの

2005-09-18 23:55:55 | lyrics
タンポポの

綿帽子飛ばすいとおしさ

いくら飛んでも種はなし

君の役目は終わったの

最後の旅を愉しむの






1987.4.20作
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雨のにおいが好きだ

2005-09-17 23:55:55 | lyrics
雨のにおいが好きだ
サビ臭いと言う人もいるけれど
私はその雨のにおいが好きだ


このひと言にして、あらゆることが物語られる春


だが、春の夜はハッキリせず 空気も薄い

刺激を求めて窓から乗り出すが
落ちたら危ないからすぐ座り込んだ

前の家の一階の電灯がまだ煌々とついている
なにをしているだろうと余計な思いが浮かんで消える


家は密集している
そして屋根は汚れて
すっかり湿っている

「人は自分が分からないまま死んでいく」


景色全体を圧迫して
霧が垂れ込めていて
山の外形さえつかめない
巨大なそれは餅のようにしっとりとして居る


その下の湖には ライ魚が棲んでいるだろうか
食用ガエルが棲んでいるだろうか
その食用ガエルを 食べる人間がいるだろうか


今夜は翔べない
ああ翔べないのだ
こんな重ったるい空の下では

こんな荒んだ呪われた町では
真横からゆるゆると這って来る風の中では

これでは決して二度と翼は上げられない





1986年~1988年.4.21

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ユートピア

2005-09-16 23:55:55 | lyrics
私の住んでいるユートピアでは、
みんなが表現者。
好きな時に、自由に歌ったり、踊ったり、絵を描いたり
それらはすべて無償
ここには貨幣というシステムがないんだ。



私の住んでいるユートピアでは、
病がない。
科学も医療も十分に発達して、
痛くも痒くもない治療法もあるけれど
そもそも病のもとになる調和の歪みがないんだ



私の住んでいるユートピアでは、
子どもたちは毎日楽しく遊びながらいろんなことを学んでいる。
なぜなら、自分が一番好きなことを、もっと知りたいと思うから
テストも、受験も、時間割もない、授業料もいらないんだ



私の住んでいるユートピアでは、
貨幣の流通がない。
みんな自分の好みと資質に合った仕事を無償で楽しくやっている
みんなで作って、みんなで分ければ
みんなに等しくゆきわたることを知っているんだ。



私の住んでいるユートピアでは、
災害がない。
科学ですべての仕組みが明らかにされて
気象のコントロールが可能になり、
砂漠もなく、どこでも自然の収穫ができるから
飢餓もないんだ



私の住んでいるユートピアでは、
国境がない。
それぞれ小さく分かれた文化の違いがあるだけ
コミュニケーションには、不便な言葉ではなく、
テレパシーを使っているんだ。



私の住んでいるユートピアでは、
ゴミがない。
すべてのモノは命を奪わない素材でできているし
長く大切に使って、使い終わったら
自然に還って循環するんだ



私の住んでいるユートピアでは、
政治がない。
姿形、考え方はみんな違っているけど
いちばん平等で最良な方法を選ぶ知恵を出し合って決めるんだ。


私の住んでいるユートピアでは、
命を奪った食べ物がない。
必要な栄養素とエネルギーを含む実を1つ食べれば満腹満足
弱肉強食なんて誰も聞いたことがないんだ



私の住んでいるユートピアでは、
みんながいつも静かに笑っている。
ひとりでいても孤独じゃないし
満たされているから怖れもない
向こうから来た見知らぬひとにも
道に生い茂った草にも
笑いかけることに理由はいらないんだ



君は
「なにを夢みたいなことをゆってバカだな」と嘲笑い
「ちゃんと現実を見ろよ」と忠告するだろう

でも、ほんとうのところ
君の言うその「現実」と
わたしの住んでいるユートピアと
どっちに住みたいって思う?





2015.1.18作
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胸を貸してね

2005-09-15 23:55:55 | lyrics
胸を貸してね

淡い編みこみセーターを着たあなたの

私はあなたを抱きしめたい

私は親友を抱きしめたい

私は母を抱きしめたい

私は父を抱きしめたい

私は兄を抱きしめたい

私はおばさんを抱きしめたい

私はおじさんを抱きしめたい

私はおじいちゃんを抱きしめたい

私はおばあちゃんを抱きしめたい


いつでも私に優しかったもの
私は今あなたと抱き合いたい


過ぎたことは涙にして流してしまおう
思い出が鮮明なぶん
涙は熱いけれど
ティッシュでぬぐってしまおう
ついでに鼻もブンってかんで
懐かしいものを全部流してしまおう


それから今は
ただ手すりに寄りかかって
静かに荒れる
海を見ている

まだまだ
もうちょっと
生きていけそう

つらいことはすべて
春の季節のせいにして





1990.3.29

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愛しています

2005-09-14 23:55:54 | lyrics
愛しています 土を
愛しています 雨を

家よりも
車よりも
文明よりも
社会よりも

自分すら同化し 吸収してくれるあなた

どんなに人が小さく小さくあなたがたを傷つけてきたことでしょう
どのくらい変異があって
あらゆるものが笑い、哀しみ、寂しがったことでしょう

それらを あなたはすべて包んで許してくれた

恐ろしく長い記憶の上に
またもっと長い時代が積まれて
同じことの繰り返しになろうとも

どんなに争いが起こって
文化が生まれて
生まれたものが いつかきっと果てることがあっても
黙々とあなたはそこにあり 息づいている

愛しています 大気を
愛しています 海を

生物を生み、育て、
それらにしばしば仇を返されたとしても
黙々とあなたは考えつづける
生きることと死ぬことを

あなたは、こんな私でさえ受け入れて
愛し、許してくれた
ありがとう



1987.4.26作
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わらおう

2005-09-13 23:55:55 | lyrics
わらおう
笑うことが私たちの唯一の特権だから

わらおう
笑うことを大人たちに教えてあげよう

飢える者たちに与えてあげよう

ただ
ほんの小さな笑いを

私から
世界中の笑えない人たちへ



1991.5.14

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未知なる私へ

2005-09-12 23:55:55 | lyrics
届かぬ声
届かぬ心と知るなれど
されど受けとれ
未知なる私よ

いつの時代に
誰だろが
想う心に時流はなし

いまこそ輝きやれば
自然、未来も輝けぞと

希望を抱え
幸を求めよ

未知なる私へ




1996.6.7作
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ともだち

2005-09-11 23:55:55 | lyrics
もし 雨が降っているなら
昨日云えなかったことを 君に
今ちょうどこの時云えたかもしれない

そらを翔べなかったことや
ひとを憎んだことや
黒いヒールを買った日のことを

もし 陽を皮膚で感じた日のことを
君が覚えていてくれるなら
わたしは明日も生きてゆけそう


夕方帰りたくないと願った日のことも
それから
ベッドの中で足をからませあったことも
君さえ忘れないでいてくれたなら


もし窓を開けたら
今日蹴った石が明日は
もっと遠くまで運ばれているのかもしれないね

子どもがもう泣かなくなっても
手をからませあって
真っ赤になって遊んだ日を
君が覚えていてくれるならば・・・


もし 雨が降っているなら
昨日云えなかったことを 今度は
云えるかもしれない
ハッキリしたことは誰にも分からないから
ハッキリしているのは日付や曜日や数字だけ

今日しておかなければならなかったことや
明日するつもりのことも
昨日されるべきでなかったことさえ
すべて忘れて
わたしは
毎日忘れていきたい




過去作

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