花好き・旅好き80代北国女性の日記(ブログ開設18年目)

趣味はガーデニングと家庭菜園、外国旅行だが、新型コロナ禍と膝の不調、円安が重なり、今は外国行きは見合わせている。

専業主婦の年金問題について考える

2011年03月11日 | 暮らしと経済・経済生活

専業主婦の年金問題で国会が紛糾している。私も色々と考える所がある。
現行制度では、サラリーマンと結婚している年収130万円未満の「税法上の専業主婦」だけが、1円も保険料を支払わなくとも、老後、ただで国民年金から基礎年金として毎月6.6万円を受け取る権利がある「第3号被保険者」なのだ。
ただし夫が失業や退職するなどして、共済組合年金、厚生年金を脱退した場合、その権利が失われる。

権利を失った妻が国民年金保険に新たに加入して、保険料を毎月1.5万円払えば、将来は第1号保険者になって毎月6.6万円の基礎年金受給権が死ぬまで得られるのだが、手続きが遅れた場合、2年間に遡って保険料を支払えば、2年前から国民年金保険の保険者になったと見なされた。

所が国が調べた所、新たに国民年金保険への手続きを怠っている主婦が沢山いる事が分かった。
国は専業主婦の低年金や無年金を防ごうと、2年分だけ保険料を納めれば、それ以前も納めたと見なす救済策を昨年12月15日に厚労省課長通知で出したのだが、きちんと切り替え手続きをして保険料を納めて来た専業主婦が損をすることになったのだから、公平さが失われると問題になった。

また、もう一つは、国民年金の原資から甚大な負担をする事になる救済策が、厚労大臣も知らぬ間に課長通知で済まされた事も大きな問題になっているのだ。
第3号被保険者を認める現行の国民年金が不公平な制度だと問題になってから日本年金機構が昨年1月に調べて見たら、第3号被保険者の配偶者がサラリーマンでない人が何と103万人もいた。
そのうち何ら手続きをせずに記録が誤ったまま、すでに厚生年金や共済年金の主婦年金を受け取っている人(過払いされている人)が13万人もいるそうなのだ。(3月11日朝日新聞) その人達に過払い分の返納をさせるかどうかも、今問題になっている。



かって国の景気が良く、企業の厚生年金や公務員の共済年金が潤沢だった時代に、それらの組合員の妻のうち、専業主婦の面倒も見ようと1986年(昭和61年)4月に始まった制度が第3号被保険者制度であり、こうして年収130万円以下の収入の主婦が優遇される制度ができたのである。しかしこの制度は、現在の国民年金財政を考えると、当然、将来に大きな負担をかけることにもなるのだ。

この優遇制度によってサラリーマンの主婦は、働いても給与が130万円以上になると夫の被扶養から外され、健康保険にも個人として加入しなければならなくなるからと、自ら働き方を枠づけして来た。これは結果的に専業主婦が労働市場に出る場合の足かせに成った。それを大きく見ると、憲法で定める国民の労働の義務、納税の義務を負わず、企業戦士たる夫たちの内助の功の役割だけを妻に期待し、結婚後の女性の社会進出を妨げた。(日本の女性の年齢階層別労働力率を見ると、30~44歳で下がるM字型で、欧米諸国と異なっている)
そればかりか、社会的経済的な自立を目指して働く女性の男女の雇用の均等を妨げ、保育所の整備などの社会的な支援策を軽視させて来たことにもつながった。
また労働市場から見ると、極めて安上りのパート労働者が大量に提供される事で、男女の雇用労働者全体の賃金水準を低く保ち、企業側の利潤を高める役割を果たして来たのではないだろうか。(2009年配偶者がいる働く女性の60%が非正規雇用者である。また働く女性の平均賃金は男性の67.8%に留まっていて、欧米先進国よりかなり低い)

では、専業主婦の基礎年金の財源は、どう負担されているのだろうか。
サラリーマンの中には、夫が妻の保険料も払っていると勘違いしている人が多いらしいが、実は保険料を支払っている働く独身男性と働く女性、そして国庫が負担しているのだ。
フルタイム等で働き、男性の雇用労働者と同等か、被扶養者がいないということでそれ以上の納税をし、健康保険税も年金保険料もきっちり払っていて、さらに家事、育児、介護などの主婦としての役割を果たしている共働き女性には、1円の支援も無いのは片手落ちと言うべきではないだろうか。

国勢調査によると、働く夫と専業主婦と未婚の子供で構成される「核家族」は、日本全体の世帯の30%になったという。サラリーマンの専業主婦だけを優遇する年金制度は、根本から見直す時期に来ているのではないだろうか。
これからの家族は、基本的に共働きをして家計を支え、夫婦で協力して子供を育てる家族になって行くに違いない。そうした家族を支える社会を実現し、年金も将来的には1人1年金として、加入期間が20年にならなければ払い損になって年金が貰えないと言うのではなく、加入して払った期間に応じた給付を実現させたらどうだろうか。
近年激増している非正規雇用で働かざるを得ない多くの人々が、将来、生活保護世帯とならないための対策こそ、早急に考えて欲しいものだと思うのである。