今回静岡県で、認定こども園の一つが、通園バス内に3歳の女児を放置したことに気づかず、熱中症で死亡させてしまった事件があった。
この女児は徐々にバス内の気温が上昇する中、持参した水筒の水を飲んだり服を脱いだりしたものの、力尽きて亡くなった。置き去りにされた孤独感、極度の暑さにどれほどの恐怖感を抱いたことだろうか。想像するだけで悲しく恐ろしい。
実は私も1度、アメリカ西海岸地方へ旅行した時、大型バスに1人だけ閉じ込められた事があった。
2010年6月の事だったから、まだそれほど気温は高くはなかったが、その日は午前中に「グランドキャニオン」観光の最後として、警告の下を流れる「コロラド川」の近くまで降りて行ってまた上に戻るという観光だった。帰りは山登りと同じだったので、私はすっかり疲れ果て、バスに戻ってから、最後部の空席に行き、横になっていたら眠ってしまったのだった。
どれだけ時間が経っていたのかは分からないが、目が覚めた時にはバス内に誰もいなかった。バスは広い原っぱの中央に停められていたので、唯一開いた助手席の小さなガラス窓からいくら大声で叫んでも、付近には人影は無かった。大型バスの内側からドアのロックを外す見当が付かず、仕方なく諦めた。誰とも連絡が取れず、閉じ込められてしまった時の気持ちは、焦りと世界中から自分だけが切り離せられた様な強い孤独感と恐怖心に襲われた。
仕方なく暫く一人でいると、その旅行に同行した友人と運転手、添乗員が来てくれて、ドアを開けてくれた。皆は少し離れた場所の観光ホテルでランチを取っていたのだという。
私が行った時、食べ終わった人達がバスに戻ってくるのとすれ違った。
私は急いで食べようとしたが、喉が渇いていて、少量しか食べられず、味も分からなかった。
聞くと友人は、私が先に下りたのだろうと思ってそのまま会場に行ったが、そこにもいなかったので、トイレに行ったのかも知れない、その内来るだろうと、余り気にしなかったらしい。
食事が終わりかけても来ないので、初めておかしいと思い、添乗員に友人の姿が見えないと告げたらしい。バス駐車場からホテルまでは距離があり、開けた場所の先に私の姿を確認しなかった事が気にならなかったらしい彼女の意識は、同行者としての私ならあり得ないことだと思った。
時間にして30分程だったと思うが、今回の女児の死亡事故を知り、100回以上外国旅行をした私に起きた苦況体験の1つを思い出した。