近年、「熟年離婚」をする人が増えているという。
国が専業主婦だった「第3号被保険者」の女性の離婚後の生活を守るために、離婚する場合の「年金分割」を2001年4月1日から法律で決めた事も、結果的に「熟年離婚」を後押しする事に繋がっていると思う。
しかし、「年金分割」は、あくまでも「厚生年金分」だけだし、女性の「家庭生活貢献度」を見極め、最高額は1/2だから、婚姻期間の長短などで「貢献度」が低ければ分割分は限りなく少なくなる。
そうすると、「平均寿命が男性より長い女性」が、離婚後一人で老後生活を維持するのは経済的に厳しくなり、生活保護などの社会保障を受けなければならなくなる人も多くなる。実際に高齢一人暮らし女性世帯の「貧困率」は、同世代の一人暮らし男性世帯よりかなり高い。
「年金分割」をした熟年離婚男性の方も、「年金分割」によって経済生活は極めて厳しくなり、所得が低い高齢者世帯2つが誕生することになる。
また、老後の生活にとって、「住宅費(家賃)」は、毎月の経済生活にとって大きい負担となるし、そもそも高齢者は「賃貸住宅」を借りるのが難しい現実もある。
さらに、思いがけず病気になって「医療費」が嵩んだり、要介護状態になって「介護費用」が発生すると、もっと負担は激増する。
以前、60代の知り合い女性から「離婚したい。」という気持ちを聞かされた時、彼女に自活する経済力があれば反対はしないが、無いのだとしたら考え直す事を勧めた。
その理由として「一般的に男性の平均寿命は女性よりも短いから、もう少し我慢すれば、その内、3/4の「遺族年金」を貰えるかも知れないし、1/2の「遺産相続権」もある」と教えた。
これらの事から考えると、何時の時代でも女性は、結婚によって生涯の経済的な安定が保証される訳では無いのだから、やはり女性自身も生涯に渡り「自立できる経済力」を持つことが大切で、「経済的自立」は「精神的・生活的安定と自由」を保証してくれる生きる上の基本的な第一の条件だと言える。
だから「パート収入の103万円の壁」などで自分の労働者としての「稼ぐ力」を抑えてしまわず、「所得税」や「医療保険税」を支払っても130万円以上の収入を得る働き方を目指す方が、長い目で考えたら「不確定要素」が大きい家庭や社会で暮らす女性にとっては良いと言える。
勿論、結婚しても子供が生れても仕事を持つ女性であり続けるには、自身の仕事に対する前向きで真摯な強い意志と努力、そして健康が必要だ。
また、結婚する際は、相手の男性の「女性観、家庭生活観」を見極める事が、何よりも大切なのは当然だと思う。
間違っても大正~昭和時代に一般的だった「男性は外で働き、女性は家の中で家事・育児・介護を担うのが良い」という古典的な「男女分業型家族観」を持つ男性とは、結婚しないに越したことはないのだ。
また、男性にとっても生涯働き続ける意思を持った女性と家庭生活を共にするためには、自らも延々と続く日常生活に向き合い、妻との共同生活を維持し実践する厳しい覚悟と、妻にとことん寄り添う愛情が必要なのは言うまでも無い。
こう考えると、これからの「結婚相手に望む理想像」は、外見や性格、趣味だけでは無く、男女とも大きく変わって行くに違いないと思うし、変わらなければならないと思う。
幸いに「超少子化社会」を迎えて、国は今年「こども家庭庁」を新設し、「子育て支援策」や「女性の就労支援策」を打ちだしつつあり、「育児休業制度」も前進して、今は3歳未満児の保育所も無かった町で個人に頼りながら子育てをして働いた私の時代とは大きく違って、女性が働き続ける社会環境が前進して来ていると思う。
(つづく)