東京調布の企業内研修所で2年間同じ釜の飯を食った仲間との交流が半世紀
経た今も続いている。
専用掲示板に久光さんの新作句集が紹介されていた。
同期最年長だった久光さんは人格識見ともに優れた人で、私からは「雲の上
の人」だったことから、研修所時代に個人的に会話したことは殆ど無かった。
たまたま、数年前に犬山市で開催された同期会の翌朝、名古屋駅に向かう
電車の中で一緒だったので「突撃取材」を試みたことがあった。
その時のことは既に当ブログで紹介済だが、中学時代にアチーブメントテス
トで山口県トップの成績ながら、家庭の事情で高校には進学しなかった。
しかし、息子達は皆東大を卒業し、長男は著名な一流企業の部長職に就き、
孫も東大を卒業し同じく東大卒の女性と結婚している。
「特段、勉強しろとは言わなかったが、晩学の父親の背中から学んだようだ」
とのことだった。
(真湯温泉の帰途、雨に濡れた新緑を撮った)
「久光良一氏の新作句集について」桜井英雄 (2023.5.22)
久光さんが近頃、句集「泣かせ節」を上梓されましたのでご案内します。
久光さんがこれまでに上梓された句集(発行社㈱文學の森)は、走り雨
(2013)、残り火(2015)、熱い血(2017)、男という孤島(2020)の
4書で、今回新たに句集「泣かせ節」が上梓されました。
この句集は、令和2年~令和4年の3年間に創作された句集です。ちなみ
に、「泣かせ節」とは、創作された句集の一つ、“なんとなく口ずさむブルース
という泣かせ節”から採られました。この3年間に創作された句集は、「妻を失
って一人になった男が、妻の死を乗り越えて生きてきた記録(あとがきより)」です。
“ありがとうありがとうと死に顔撫でてやる”(自選十句中)
“杖の音が聴きたい お帰りと言ってやりたい”
令和2年に奥様を亡くし、失意の中で句にこめられた奥様への深い情愛が
涙を誘います。
(句集より抜粋)あとがき
令和二年三月に妻が急逝しました。その時に作りかけていた第四句集は令和
元年までの句をまとめたものでしたので、妻の死に関する句は載せておりませ
ん。したがってこの句集は、妻を失って一人になった男が、妻の死を乗り越え
て生きて来た三年に及ぶ過程の記録ということになってしまいました。
人生いつ何がおこるかわからないということ、そして何があっても生きてい
る限りは、しなければならないことをしながら、前に進んでゆくしかないとい
うことがわかった三年間でした。
年齢も八十八歳、曾孫のいる歳となり、もう生きいきとした句を作ることも
できなくなりましたが、なんとか年輪を感じさせる句が作れるよう、精進した
いと思っています。
自由律俳句は詩の極限です。私はその極限をきわめるためにも、生きている
限り詩情を持ち続けることをモットーにして、これからも探求を続けてゆく
つもりです。令和五年三月 久光 良一
参考:句集の発行所 ㈱文學の森 tel.03-5292-9188 定価2860円