上巻終りのほうに三つの(三人の)射殺事件が出てくる。凶器はマグナム45。45口径の拳銃を使う女の殺人者を好んだのはミッキー・スピレーンだった。大口径45口径の反動の大きい銃は女には扱いにくい。その常識(銃になじんだアメリカの読者には常識だろう)を逆手にとったわけだ。
スピレーンは前のほうで、女にしては手の大きな、とか握手をするとその圧力に驚いた、などの伏線を張っている(いわゆるフェアプレーの原則ね)。
サランデルは150センチ、40キロの女と言う設定だ。この身体に対して掌が以上に発達していると言う記述は、これまで(ドラゴンタトゥーの女を含めて)出てこない。
一体にラーソンは明らかにおかしく、伏線でつじつまを合わせておくべきところも平気で無視して話をすすめるところがほかにもある。それでも並みの読者には抵抗感なく読ませる筆力もあるのは事実ではあるが。
しかもこの部分は警察官と言う専門家も登場させているのだから、この問題に警察がなんの分析をしていないのは非常識である。
この小説の三人の射殺事件は叙述から見ると極めて正確な射撃である(室内の至近距離からの発砲であるにしても)。あきらかにサランデルには出来ない設定だ。
でまだ上巻しか読んでいないが、犯人はサランデルではない、となるのだろうが、それまでの間にこういう射撃はサランデルには不可能であるということは即座に明確になる筈なのに口をつぐんで話を引っ張るラーソンはこすからいと言われてもしょうがない。