探偵小説を書こうと思ったことがあってね。古い言い方かな、推理小説とかミステリというのだろうが。なにしろ銃を撃ったことがない、いや、あったかな。記憶がはっきりしなくてね。記憶が片っ端から蒸発するわけ。だからメモを書くようになったわけだ。ブログにアップするのも同じ理由。
そんでね、(つまり探偵小説を書くものの常識として)銃のことを書いてあるものを注意して読んでいたことがある。
女が持つファッショナブルな拳銃は22口径か25口径という相場らしい。一名売春婦の拳銃と言われる。要するに婦人の携帯する拳銃だ。その上と言うと32口径だが、これは立派に業務用になる(つまり警察官も携行する)実用品だ。すこし非力ではあるが。
普通は洋の東西を問わず38口径というのが相場らしい。適当な威力もあるし、携行しやすく扱いやすい。45口径と言うのはその道の人間にとってもかなりはみだしたものらしい。だからリザベット・サランデルには扱えない。
もう探偵小説を書いて儲けようという気もなくなったから、全部教えるが、22口径はか弱い女性用であると同時にプロの殺し屋が愛用する定番らしい。
一発で適切に仕留めるには威力の小さい銃ほど達成感があるらしい。もっともプロの22口径拳銃は火薬の多い薬莢を使い、銃身も長いものらしい。
プロの意識をくすぐると同時に小さいことのメリットもある。まず音が小さい。豆鉄砲のような音しか出ない。だから犯行が気づかれにくい。マンションのドアの外には音がもれない。
分解して携行するのに、隠しやすく、見つかりにくい。殺し屋向きだろう。
大砲をぶっ放したような音のする45口径などプロの美意識に反するわけだ。
それとプロはオートマチックを使用しない。薬莢が飛び散るからだ。大藪晴彦と言う作家がいたが、これがいつもオートマチックなんだね。それでやたらに弾をばらまく。そんでもって、仕事が終わると地面に這いつくばって落ちた薬莢を拾いまくる。暗闇の土手の雑草の中でもモク拾いみたいにやる。
これが大藪氏にはイキに見えるらしくて、彼の小説にはかならず薬莢拾いの場面が長々と出る。銃に関して美意識なんてあるものかどうか知らないが、大藪晴彦はとんでもない田舎ペイと言える。
以上おわり。これだけタダで教えちゃうとミステリー作家としては食っていけなくなるな。