穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

マーロウの依頼人たち

2019-04-20 08:31:25 | 妊娠五か月

 マーロウものに登場する依頼人たちを振り返って見よう。その前にリトル・シスターの別訳「かわいい女」清水俊二訳を読んでみようと思ったが書店にはない。早川文庫の表紙の折り返しに清水訳の本のリストがあるが、かわいい女は載っていない。プレイバックまであるのにね。そうすると創元社文庫だったのかな。しかしこちらのほう現在短編集しか出ていない。稲葉役の大いなる眠りももう一度読んでみたいと思うのだが、古本しかないようだ。

  さてマーロウの依頼人たちであるが、記憶で書くので抜けているところがあるかもしれない。間違いはないと思うのだが。まず偏屈者の大金持ちたちがいる。大いなる眠りの将軍や高い窓に出てくるノドの乾いた馬のようにワインをがぶ飲みするばあさんである。

  依頼人がいない作品もある。もっとも後半や途中で依頼人が現れるのであるが。この系列にはロンググッドバイがある。さらば愛しいひと、もそうだ。この系列の冒頭部分は巻き込まれ型とでもいうものだ。ロンググッドバイではご存知のようにテリー・レノックスの厄介に巻き込まれる。さらば愛しいひとでは大鹿マロイの立ち回りに巻き込まれる。

  大金持ちではない依頼人がいる。一応威張っているが雇われ経営者と思われる男が出てくる湖中の女。村上春樹氏ごひいきの田舎のカマトト娘オファメイがいる。彼女は皺くちゃのお札二十ドルをかき集めてマーロウを雇おうとする。

  そうかと思うと、電話でいきなり尾行を要求する客もいる(プレイバック)。これなんかポール・オースターの幽霊たちとかガラスの街で模倣されているようだ。

  之によって此れを観るに、大いなる眠りとロンググッドバイは依頼人に関しては似ていない。もっとも長いお別れの後半の登場人物で介護やDV監視を要求されるウェイドは金回りのいい流行作家だから、金持ちの依頼人に入るかもしれない。