「まず大切なことは一度にどかっと整理しようとしないことですね。もっとも、これはその人の性格によりますがね。蔵書の半分を一度に気前よく思い切って処分できる人は別ですよ」と脇に座った第九のほうに目をくれた。
「わたしにはそんな思い切ったことは出来ないな」
「それなら私の例が参考になるかもしれない。とにかく一度に大量に処分しないことですよ。一度に一冊とか二冊捨てるんです。まず持っている本の種分けをします。人によって持っている本が違うからその人なりの分け方をすればいいわけだが、私の場合はね、まず、文庫本から整理しますね。例えば文庫本の小説から始めますね。たとえば、一般小説とエンタメに分ける。さらにそれでもまだ沢山あればそれをそれぞれ日本の小説と外国の小説に別ける。あるいは同じ作者の本がたくさんあれば、それを一固めにするとかね」
「細分化する目安はあるんですか」
「特にありませんね。分類がそうですね、段ボールに収まるくらいになればそれ以上は別けない」というとコーヒーカップを口に運んだ。
「そうすると」と思案気に第九が聞いた。「段ボールの大きさにも影響されますね」
「いいところをついている。その通り。大きすぎると分類の意味がない。第一重くて整理移動が難しくなる。小さすぎてもいけない。中くらいの大きさがいいな。私の経験で言うと文庫本の山が四つ入って、そう高さが三十センチくらいかな」
「そうすると段ボールが沢山要りますね。第一家には段ボールはないから。なにか商品を取り寄せた時でも包装を解くと捨ててしまいますからね」
「私は新しいのを買っていますね。安いものだし」
「ダンボールなんて売っているんですか」
「大きな文房具店では売っているところがありますよ。それからロフトとかハンズにもあると思うな」
「それで」と第九は不思議そうな顔をした。立花の話では本を捨てる話が出てこない。分類保存は整理したり、思いついて古い本を引っ張り出すときには役に立つかもしれないが。
立花は続けた。「いよいよ処分する方法ですがね。こういう風に分類しておいて、なにか新し本を買いますね。そうすると、例えばエンタメ小説だとすると、同じ種類の本が入った段ボールを見て捨てる本を選ぶわけです。ここがミソなんですが、一冊買ったら一冊だけ選択する。二冊買ったときには二冊処分する本を選ぶんです。こうすると蔵書は増えないでしょう」
「しかし、その時にもどれを捨てるか迷いませんか」
「迷いますね。それについても一つの目安があります。まず将来まず再び読まないだろうと思うものは捨てる。あるいは私は本を読んだ時の日付を書き込んでいるのだが、それが古いものを選ぶ。さらに文庫本のなかには版を重ねて常時店頭にあるいわば定番ものというのがある。これは捨てても読みたくなればすぐに手に入る。こうしたものは捨ててよい」
「なるほど、合理的ですね。私もすぐに始めてみます」
「そうそう中には間違えて二度買ってしまう本がある」
「そういうこともありますね」とCCが応じた。「そういうものは、整理してしまえばいいわけだ」