穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

130:精神に食わせるものが無くなった

2020-08-28 07:01:22 | 破片

精神に食わせるものが無くなって、第九は焦った。ギトギトに脂ぎった四十路を超えた女性ファイナンシアル・プランナーの腹の上で主夫を務めて世過ぎをしている彼は精神が空洞化しないように時々精神にガソリンを食わせて精神のバランスをとっているのであるが、コロナ騒ぎでガソリンスタンドが全部閉鎖してしまった。精神は真空を嫌う。アリストテレスが言っていたかな。いや、自然は真空を嫌うか、どっちでも同じことだ。この分じゃ早発性痴ほう症になる。自動ジョイスティックに成り下がる。漠然とした焦りを彼は感じた。夏の終わりのセミのようにカラカラになってしまう。

 久しぶりにスタッグ・カフェ「ダウンタウン」に行くと下駄顔がびっくりしたような顔をして彼の顔を見た。

「すこし痩せましたな。夏痩せですか」