穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

後期ハイデガーの解説

2023-07-04 06:16:34 | ハイデッガー

さて昨日話した轟秀夫の本だが序論を読み終わった。要するに「存在と時間」以後の著作が全七章のうち五章をなしている。たしかにこの後期ハイデガーの解説書はあまり見かけない。二、三の論文は読んだ記憶があるが、あまり印象に残っていない。改めて通読解説を読んでみるのも、なにか得るところがあるだろう。

これはこれまで読んだ著作の印象だが、「存在」の扱い方(伝統的な西洋形而上学)が存在を超越者として見ていると断じているようだ。「存在」と「現存在」をアートマンとブラフマンと融通無碍にとらえる仏教思想が念頭にあるのかもしれない。

戦後の悲惨な経済で日本からの裕福な留学生の家庭教師などで糊口を凌いでいた当時のドイツの哲学者がそれらの日本人留学生に熱心に東洋、日本の宗教思想を聴いていたという話が残っている。ヒントにはなっているだろう。

日本政府が日本の大学にハイデガーを招聘したという話も紹介されている。三木清が話を持って行ったらしい。年俸一万円の破格だったという。当時のレートでは悲惨で天文学的なインフレに喘いでいただドイツの学者には魅力だったろう、カール・レーヴィットだったかは招きに応じて東北大学に赴任している。