ハメットは今でも日本では人気らしい。少なくとも評論家というか業界人の間では。日本では「マルタの鷹」は傑作あるいは”探偵小説”の教科書となっている。アメリカではThin Manが人気第一らしい。これは連続ラジオ小説のcomedyらしい。
前にも書いたが、チャンドラーと違い探偵社の使い走りから始めたハメットは書きながら文章を勉強したので、彼の小説を読むとへたくそな小説からだんだんものになっていく過程がわかる。マルタの鷹で一応の水準に達しているようだが、どうも未だしだ。
アメリカでの一番の人気作は例の痩せた男も晩年の作だ。もっとも彼は若くして引退したから、文章もまともになっているのだろう。私は読んだことがないが。
ところでハメット自身は自作をどう見ていたか。よく知られていたように彼自身は「ガラスの鍵」が気に入っていたようだ。最近本の整理をしていたらVintage Crime版が出てきたので、再読している。マルタの鷹にくらべて地味な作品であるが、文章の質という点では、おそらくハメットの中では一番いいようだ。
監禁された部屋を火事にして逃げだしたところを読んでいる。それで思い出したが、チャンドラーの小説のどこかで同じような場面を扱っていたんじゃなかったっけ?