穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

鐘が殺した

2015-08-08 14:06:56 | 本格ミステリー

ナイン・テイラーズのラストがいい。大きな音、特定の周波数の音が物を破壊し、人間を殺すことは古くから知られている。詳しく書くと一部からネタバレと声が飛びそうだから止めておくが。 

そう、貴族探偵は推理した訳だ。自分の体験に基づいて。すなわち水路工事(全編で叙述されていた)が完成したが、そのために古い水門が新しい水の流れで破壊されるのを工事関係者は考慮していなかった。

水門が破壊され、河が決壊して周囲の村は水の底に沈む。洪水の急を知らせるために教会の鐘が乱打される。現代で言えば防災無線だな。その最中にウィムジー(探偵)は密閉された塔の内部に入り、高音を発して塔をゆすり、轟音を発し続ける塔内で死に直面する。

ここから大晦日の鐘の演奏中にここに閉じ込められた男(ディーコン)は死亡したと推測するのである。この趣向も面白いがここに至るまでの数十ページの描写が巧みである。探偵小説とか謎解きということに関係なく、それ自体で迫力がありすばらしい。

途中だれる描写がある(それもかなり)のでAは無理だがBプラスに格付けされるだろう。

 

 



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